第30話:学校で

 長いようで短い休みが終わり、月曜日がやってきた。

 一緒にマンション出て歩き始める。


「今日は体育がなくて助かった」

「そんなに動くのが嫌いですか?」

「こんなにも天気がいいんだ。授業を全部昼寝にさせてほしいよ」

「私はお部屋でダラダラしていたいです」

「相変わらずだな」

「できることなら一生ダラダラとしていたいです」


 世那は家だとダラダラしていることが多いが、最近は料理を手伝ったり家事もだが少しずつだがやるようになっていた。

 その理由が気になり聞いてみると、思ったより簡単に返ってきた。


「だって、奏多さんばかりに任せられないですよ。一緒に暮らしているのに、全部任せては申し訳がないです。なので、苦手でも少しずつですができるようになろうと」

「それは良いことだ。でも料理は当分無理そうだけどな」


 危ない時が何度もあったのを思い出し思わず笑ってしまう。

 笑う奏多を見て世那が不満そうに頬を膨らませる。


「もう。笑わないでください。絶対に奏多さんに私の手料理を食べてもらいますから!」

「そりゃあ楽しみだ」

「お弁当なら私にだって作れます」

「言うじゃないか。なら明日にでも作ってもらおうかな?」

「望むところです」


 世那は作る気満々であった。

 奏多は心配になるも任せることにした。

 学校も近くなり、途中で世那と別れた。歩いていると、声が掛けられた。


「よっ、奏多」


 バンッと背中を叩かれ振り返ると俊斗と璃奈がいた。

 朝から仲良く通学しているのは誰もが知っており驚くことではない。


「俊斗に高倉さん、おはよう」

「おはよう~!」


 すると俊斗が肩を組んで周りには聞こえない声量で言ってくる。


「天ヶ瀬さんと同棲しているんだって? 璃奈から聞いたぞ」


 奏多は俊斗の隣を歩く璃奈を睨みつける。

 その視線は「他の人は言ってないだろうな?」という意味が込められており、璃奈はうんうんと頷く。


「俊くん以外に言ってないよ。約束じゃん」

「ならいいけど。俊斗」

「なんだ?」

「誰にも言うんじゃないぞ。男子を敵に回したくない」

「ははっ、まあ、一緒に暮らしているってバレたらみんな嫉妬に狂うだろうな」


 ひとしきり笑った俊斗は続ける。


「にしても驚いた。璃奈からどうして一緒に暮らすことになったのか聞いたけど、何があるかわからないもんだな」

「まったくだ」


 奏多はやれやれと肩を竦めた。その後、三人で雑談をしていると学校に着いた。

 教室に入ると世那がおり、女子達と仲良く話していた。


「世那ちゃんおはよう~!」

「璃奈さんおはようございます」


 すると先ほどまで話していた女子が、璃奈と世那が名前呼びになっていることを不思議に思い尋ねた。


「二人はいつからそんなに仲良く?」

「それなら昨日公園で会ってね。迷子の妹を助けてくれたんだよ~」


 そこから何があったのかを話す璃奈に、奏多はひやひやした気持ちでいた。うっかり名前をポロッと出されないかと心配だったが杞憂に終わった。

 璃奈の話を聞いた女子達は世那の行動に賞賛する。


「流石、世那さん! 迷子の子を助けるなんて」

「いえ。当然のことをしただけで、お礼をされるようなことでは」

「そんなことないよ。あの時二人・・のお陰で妹も無事だったんだから」

「「二人……?」」


 そこで璃奈は「しまった!」とでも言いたげな表情で口を両手で塞いだ。

 話を聞いていた俊斗は「あちゃ~」という表情し、奏多は「こいつ、やらしやがった!」といった表情になる。

 世那も平然を装っているが内心で慌てていた。


『ど、どうしましょう! 奏多さんと一緒に居たことがバレてしまいます!』


 するとその会話に俊斗が割って入った。


「ああ、璃奈の妹と三人で遊んでいたんだが、目を離した隙に居なくなって。ちょうどそこに天ヶ瀬さんがいて事情を話したら協力してくれたんだ。いやぁ、昨日は本当に助かったよ。ありがとう」


 奏多は思わず目を見開いた。すると俊斗は一瞬だが奏多を見て親指を立てた。

 世那と璃奈はハッとして俊斗に話を合わせる。


「そうなんだよ。二人が探すの手伝ってくれて、本当にありがとう!」

「いえ。たまたまですよ。ですが妹さんが無事に見つかって良かったです」


 何とか誤魔化すことができ、四人は安心した。奏多は視線で「言った側から何やらかしてやがる!」と訴える。

 お昼になり、璃奈は九十度に頭を下げていた。


「ごめん!」

「いいや、俊斗のお陰で誤魔化せたからいいけど。ほんとナイスカバーだった」

「任せとけ」

「お前が事情を知っていて本当に助かった。高倉、気を付けろよ?」

「は、はぃ……」


 シュンと落ち込むも、俊斗に頭を撫でられてからイチャイチャしだしたので奏多はお昼を早々に済ませて教室に戻るのだった。



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