概要
「私ね、冬が来たら死のうと思うの」
9月の終わり、夏の残暑が消える頃。学校の屋上に1人佇む笠松葵さんは、僕にそう告げた。
「死ぬって、それは……っ」
泡を食う僕のことなんか、笠松さんは気にしない。
彼女はただ告げる。自分に巣くう虚しさの辛さにもう耐えきれないから死ぬのだと。伽藍洞な声で、彼女はそう訴えた。
だから、僕は意を決してこう提案する。
「だったらさ、その虚しさを無くせるものを探しに行こうよ」
その提案が、どれほど無意味であるのかを知っているというのに。
吹いた風は心を吹き抜けていく。冷たさだけを残して。
これは虚しさを抱えた者が寄り添い合うまでの物語。
秋風の寒々しさを慰める温もりを得るような、そんな物語。
「死ぬって、それは……っ」
泡を食う僕のことなんか、笠松さんは気にしない。
彼女はただ告げる。自分に巣くう虚しさの辛さにもう耐えきれないから死ぬのだと。伽藍洞な声で、彼女はそう訴えた。
だから、僕は意を決してこう提案する。
「だったらさ、その虚しさを無くせるものを探しに行こうよ」
その提案が、どれほど無意味であるのかを知っているというのに。
吹いた風は心を吹き抜けていく。冷たさだけを残して。
これは虚しさを抱えた者が寄り添い合うまでの物語。
秋風の寒々しさを慰める温もりを得るような、そんな物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★ Very Good!!夏の残り香はどこか哀しくて
企画から参りました。
寂しげな香りが漂うタイトルに惹かれ、現時点で公開のプロローグを読ませていただきました。
サブタイトルから知らされるのは、主人公(?)が近く命を手放す覚悟をしているという事です(本文から病気などではないと想像しています)。
理由はまだわからないけれど、秋の気配の哀愁と秋風を冷たいと感じる切なさ、その風が転がす夏の名残り。かつて命の重みを持っていたものは軽く乾いて、そこには何とも言えない虚しさが残ります。
美しい表現とともに文章が綴られていて、語り手の気持ちが読み手の心にすっと入ってきます。
この先に待ち受ける展開が大変気になります。
今後への期待を込めて、敢えてお星様…続きを読む