第35話 戦いの前

お腹がすいたわ、なんかない?

とリスボアが作ったスワンサンドを

ムシャムシャと食べる。


ダンも俺も何か食うかな。というと

何かの入れ物のふたを開ける。


そして、閉じる。

再度開ける。・・・閉じる。

中には団子が10個入っていた。


何かが脳裏をよぎったダンであった。

リスボアがジィィィっと見ている。


その視線に気が付きダンは言う。

「リスボア、確認する。これは本当に

 全部お前が作った団子だよな?」と。


「いいか、真剣に言う。人はな、

 簡単に死ぬ。」


ある人は言う、ほんの出来心だったと。

ある人は言う、そんなつもりじゃなかったと。


遊びのつもりでも、本心じゃなくても

「死ぬ」という結果しか残らないんだ。


いくら言葉を飾ろうが、それはただ単に

自分自身への言い訳だ。そんなものは

死んだ人や死んだ人を知る人たちには

関係ないんだ。


リスボアは涙ぐむ。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」と。


「わかったらいい、これは俺が預かる。

 この丸い謎の兵器は俺が何とかする」


因みに全部が最終兵器なのか?とダンは聞く。


「いや、10個のうちの1個だ」とリスボア。


ダンは厳重に幅広テープで封をする。

そして「開けるな危険」と書く。

この世に出てはいけないものが

入っているのだ。あたりまえだ。


いいか?リスボア。

これをそのあたりに捨てたとする。

食うに困った人が食べるかもしれない。

子供が見つけて口にするかもしれない。


もう封印するしかないんだ。


土に埋めても精霊が見つけるかもしれない。

これを見て宣戦布告されたと

思うかもしれない。


そうなったら精霊と全面戦争だ。

海に捨てても一緒だ。


これは人間が手にするものではない。

未来に託すしかない。

未来の人類を信じるしかない。


その為に今は封印するしかないんだ。

そしてダンは言う。


「手に負えない」と。



「よかったわね、ソミュール。特別戦は

 バフォメットの杖使っていいって」

と美香が言うと同時に


「おーい。優勝おめでとう!」

とテージョとチェスキー。


杖取りに来たよー。とチェスキー。

「なんだよ、折角貸したのに。

 魔法をバンバン撃って

 なかったじゃないか」とチェスキー。


それが変なんだよこの杖。と私。


「どれどれ?」と言うと

チェスキーは杖を見る。


こ、これは!と驚くチェスキー。

どうした?と言いながらテージョ。


「これはピノなんかじゃない。ただの、

 そうただのその辺の木材で

 作られた杖だ。」とチェスキー。


な、なんだと!?と驚くテージョ。

チェスキーは思う。

おかしいと思ったんだ。と。


只の情報屋がこんな激レアを持っている事

そして誰も見たことない伝説の杖

見たことないのに何故これがソレと

わかったのか。

本当は金貨5000枚なのに

今だけ特別で破格の金貨30枚だった事


ぶっころす!というと

チェスキーとテージョは

部屋を出て行った。


ほどなくこの街の教会の鐘に

糸でぐるぐる巻きにされ

括りつけられている名もなき

情報屋が見つかった。


「というかなぜ俺が精霊使いって

 なってるんだ?」とバローロ。


「多分、私が出て来いという事でしょう。

 私と戦いたいものが居る。」

とユキツー。


私が出るには美香様と一緒でなければ

ならない。私は美香様のゴーレム扱いだから。

しかし美香様はウォッカ様と戦う。


その為に私と戦いたいと言う者は

バローロを精霊使いと告知した。

それならば問題なく戦える。


そしてその相手の名前はシャルル。


「なめられたものだな、俺」と

槍をぎゅっと持つバローロ。


もしも、私が知っている短剣使いが

シャルルだとしたら、バローロ。


5秒。そう5秒お前が立っていたら

私が持っている妖精の里の財を

全てやろう。子孫10代ほどは

遊んで暮らせる。


「ソミュール様」とバフォメットは言う。


相手のスコティ様の事です。

今は訳合って言えませんが私は

力を削られるでしょう。


その為に開始と同時に全ての魔力を使い

汎用性の高い極級魔方陣を発動します。

持って2分です。しかし・・・


それすらも出来るかどうか分かりません。

スコティさんは爪使いよね?と私が言うと


違います。確かに爪使いとして

戦いますが、本来は魔導士です。


まだ爪使いとして戦ってくださるのであれば

勝機はあるでしょう。そう・・・。


天から降り注ぐ雨を全て避ける、

それくらいの確率位は。


リスボアは剣を布で磨く。

そして握りての部分を見て思う。


「この削れている部分。どうやって

 削れたのだろう。何か鋭利な刃物で

 削ったような・・・。何故だろう」


そう思いつつも剣を磨く。手を止め、

眼を閉じる。今までの戦いを思い浮かべる。


あ、そうか。斬られたんだ。多分。

水月への打ち込みに対して相手が斬ったんだ。


いや、この部分。ここは千切れている。

そうか、水月の打ち込みを刃で止めたんだ。

途中まで切れて・・・。

アスティ様が下がったんだ。


眼を閉じながらその戦いを思い浮かべる。

こう・・いや、こう剣を。

削れている角度からして・・・こう。


できねええええ!と口にする。

あ、でも二刀流なら。


そうか、アスティ様はウォッカ様と

戦ったんだ。

どっちが勝ったんだろう・・・。


一時して目を開けるリスボア。

だめだ、何回やっても・・・

何回考えてもウォッカ様の勝ちだ。


そうか、だからアスティ様は言ったんだ。

2番目だって。自分は2番目に強いって。



美香は寝ている。

いびきをかいて寝ている。

時折、お尻を搔いている。


よだれを垂らして寝ている。

時折鼻もほじっている。


私ははそれを見て思う。


見せられない。こんな姿を男子に

見せられない。女子というイメージが

ぶっ飛んでしまう。特にリスボア。


こんな姿を見たら彼は女性に興味をなくし

本当の意味で、誰も開拓したことのない

道を歩んでしまう。いや、稀にその道を

歩んでしまう男子が居ると聞いている。


しかし、リスボアには歩んでほしくない。

私は美香の周りに仕切り壁をおいた。


「み、美香にはゆっくり休んでほしい。

 ウォッカ様との戦いに備えて。」


と私は言いながら、どこからも美香が

見えないように隙間の調整をした。


そして時間は過ぎ

「入場です」と部屋に声が響いた。


特別戦が開始される。



































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