第6話 ユキツーの悩み

ユキツー、いやフシャスラは言う。


「私は使役されたモノではない。合体され

 生み出された存在だ。だから主の名のもとに

 美香様を見守るものだ。」


主とは?とバローロが聞くと

「バーボン様だ」とユキツー。


あ!と私以外全員何かを思い出す。


「ウォッカさんが母ちゃんという事は

 父ちゃんはバーボン様だった!」と。


バローロとダンは何か苦虫をつぶしたような

顔をしている。

「噂の悪代官、バーボン様の娘だったとわ」

とダン。


部族に伝わる噂をいろいろと聞きたい所だったが

止めることにした。聞いたらいけないと本能が

叫んでいる。


美香以外全員、私と同じであるがごとく頷きながら

顔を見合わす。


と、兎に角だ。お前が精霊使いってのはわかった。

主は違えど精霊使いでないと

「妖精」は言う事聞かんからな。


え?と私達は驚く。「妖精?」と。


なんだ知らないのか?とダンは言いつつ説明する。


今は妖精は中々人前に出ないし、人間が使役するのも

無理だ。大の人間嫌いだ。昔色々あったらしい。

その為にここ数百年、めったに見る事のない存在。


だから時たま現れる妖精は怪物とか呼ばれる。

最上級精霊ともな。

会えたら凄いがハーピィとかミノタウロスもそうだ。

使役するのはほぼ無理だろうな。というか

会ったら逆に問答無用に攻撃されるぞ。


「あれ?以前私、ミノタウロスを呼んじゃった事

 あるわよ?」と美香。

前のパーティでの挨拶はミノタウロスが

広めたのよ?こんな感じで、とも付け加え

私と美香は拳を突き合わす。


私も美香に教えてもらって気に入ってる。


おおおう。とバローロとダン。

「それはな、妖精との絆を意味する儀式だ。

 部族のばあちゃんたちに教えてもらった。」

とわけわかんない事を二人は言った。


兎に角お互いの力量がわかり、これならと

私と美香は俄然やる気になった。


「美香様、お願いがございます。もし

 バナジン鋼が手に入りましたら、私にも

 いただけないでしょうか。

 この体を強化したいと思います。

 というか強化しないとやばいです・・・」

とユキツー。さらに続ける。


もうストレスが溜まります。ほんの少しでも

力加減を誤ると溶けちゃいますし、体。


ちなみにどれくらい加減しているの?

と美香が聞くと


先ほどの援護射撃、あれはそう、

唾を吐きかけているくらいです。・・・と。


それは困ったと全員が申し出を受けた。

私達は最重要案件にした。


「美香、お前もう少し、というか剣の基本行動を

 学んでみないか?動きに無駄が多い気がする」

とダン。すると美香は


「二刀流でお願い。今は1本だけど、1本しか

 持ってないけど、二刀流がいいわ。」と。


二刀流となると難しいな。まぁでも基本的な

事は同じだろうという事で、街に帰ると

少し剣の学び舎を覗くこととなった。


街に帰りギルドで依頼達成の報酬を貰う。

今晩は居酒屋ね。と美香。今晩「も」だろうと私。


親方とサモスの所へ行くと

「こんなもんでどうだ?」と親方は鎖鎌を

美香に渡す。いいね、いいわ!と美香。


それをダンに渡すと大喜びで、外に行き・・・

試す。そして涙する。


サモスもニヤニヤして手袋をはめている。

試作品2号だ。どうだかっこいいだろう。と

美香に見せびらかす。


手のひらに鉄の塊がありそこから2本の支柱が伸び

手の甲についている厚めの鉄板につながっている。

手袋の部分いるのか?と思う私。

鉄に引っ付いている布としか思えん。とも思う。


そして居酒屋に行く前に剣の学び舎に行く。

ダンが先に入ると全員稽古を止め挨拶をする。


「ダンって偉いのね?」と美香が言うと

「そりゃもう、族長だからな」とバローロ。


全員稽古を再開する。

美香は見ているがなんか不満そうだ。

「あんまり攻撃とかしないのね。なんか守り、

 守る感じの動きなのね。」と言う。そして

「私は攻撃したいわ、兎に角攻撃。

 攻撃こそ最大の防御よ」と名言を吐いた。


すると稽古をしている中の一人が

「あーもう、俺は攻撃をしたいんだよ!

 なんでこう、受けなんだよ!」と叫んだ。


その声がした稽古場の隅の方に目をやる。


まだ少年だった。15歳くらいか。

美香はその少年の方に歩いていき

「私もそう思うわ!あなた名前は?」と聞く。


なんだこの姉ちゃんと言う目で見て

「俺はリスボアっていう名だ。

 将来の赤の国の議長近衛兵長となる者だ!」

と真剣に言う。


私はダンに、あの子は?と尋ねる。

「あいつはなぁ、剣の才能はあるんだが

 兎に角防御が下手なんだよ、というかしない。」


「まぁ美香の様な戦い方だな。あの歳にしては

 強いし、将来有望なんだがなぁ。あでも、

 近衛兵長は盛りすぎだ」と笑いながら言う。


よし!ねえ私と勝負しない?と美香。

私は精霊使いだけどね?

「なめるんじゃねえ、精霊使いが剣で勝てるわけ

 ないだろう。やらないよ」とリスボア。


「あら逃げるのね、精霊使いに負ける所を

 見られたくないもんね。」とニヤニヤしながら美香。


少しリスボアは怒った感じで

「もし、俺に勝てたらなんでもいう事を

 聞いてやる。その代わり俺が勝ったらなんでも

 いう事を聞け」とリスボア。


もう駆け引きが子供だった。・・・子供の二人。


美香はあたりをきょろきょろと見まわし

何かを見つけ歩いていく。


私の武器はこれでいいわ、と少し短めの箒。

リスボアが叫ぶ。「なめんじゃねえ」と。


ダンは笑いながら

「じゃあ戦え、お前ら。おれが見ててやる」

「勝った方には褒美を出す。」とも言った。


美香とリスボアは向き合い構える。

リスボアは余裕だ。そりゃそうだ。

精霊使いだし。箒だし。・・・美香は。


やはりリスボアは子供だ。

戦いはどんな状況であれ油断した方が負ける。

人同士の戦いでそれならば魔獣には勝てない。

相手をなめている時点でリスボアの負けは確定だ。


二人の間合いは約4メートル。

ダンが開始の合図をする。「はじめっ!」













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