第5話 直感

その槍使いは

「俺はバローロ。このパーティのリーダーだ」

続けて

「姉さんたち、近頃荒稼ぎしてるみたいだな。

 噂になってるぜ、流れの冒険者で強いのが来たってな」

と笑いながら言う。


「流れはやっぱ遠慮される?」と美香。


「いいや、この国は強いやつが正義だ。

 強いやつに従う、それが掟だ。

 流れなんて関係ない」とバローロ。


「ところであなた達は強いの?」と笑いながら美香。

この美香の、挨拶したらみんな友達という性格。

うらやましい・・・。

「そりゃあ、もう」とバローロ。


取りあえず明日ギルドで待ち合わせすることとなった。

あと5人集めるために。



そして翌日、冒険者ギルド。

既にバローロたちは集まっていた。

昨日は飲みながらだったので全員で紹介し合う。


残り5人は俺らが見繕うか?と提案され

美香はウンウンまかせるわ、と頷く。


バローロはパーティの一人をどこかに走らせる。

「ちょっと待ってな、強いやつを呼んでくる」と。


小一時間ほど、談笑をする。

「なるほどねぇ、母ちゃんを探す旅か。

 そのウォッカと言う女性。多分知ってるぞ」

「お前の母ちゃんかどうか知らんし、

 直接話もしたことない、噂程度だがな」とバローロ。


「相当強いらしい。というかそう言ったレベルの

 強い弱いという括りではないらしい。

 存在自体が違う。ドラゴンすら単独パーティで

 やれる存在だ。勿論一緒に居るパーティメンバーも

 相当らしい」と。


「それ、猫耳族の人たちよね?

 一緒に組んだことあるわ」と美香。

まじか!とバローロは驚く。


「なぁこいつら信じていいのか?」と心配しながら

サモスは私に言うが、隣から親方が

「大丈夫だろう。美香は直感が働く。というか

 直感が人間になったような存在だ。」

 

 「そいつが仲良くしている。問題ない。」と

ガハハと笑いながら言った。


そうこうしていると一人の男がやってきた。

「お前の頼みはいつもろくなことはないが、

 今回も来てやったぜ」と言いながら

バローロとガッチリ手を握り合う。


「こいつは美香、今巷で話題の流れの冒険者。」

と親指でクイッと指さす。

「信用していいのか?まぁお前は直感が働くからな。

 直感が人間になったような人間だ。

 そのお前が組むんだ。問題ないだろう」と

その男は、はっはっはと笑う。


類は類を呼ぶ。その類が呼んだ者。

どう考えても・・・類。

まて、じゃあ私も類。周りからはこんな風に

おバカさんを見るような目で私も見られてるのか?

と真剣に悩む私。


「この男はダン。この辺りの部族の族長だ。

 強いぞ?まぁ俺より弱いがな」とバローロは笑う。


「そういえば私達が強いとか弱いとか調べないの?

 依頼なんてなにかのズルをしているかもよ?」と

笑いながら美香。


「いいや、大丈夫だ。こっそりと

 いくつかの戦闘を見せてもらっている。

 美香、お前は強い。そしてそっちの魔法士も

 えげつないほど強い。」


「そっちの弓使いは年期を感じる。

 美香ほどではないが玄人の戦いだ。

 矢の回収も堂々と行っている。」


「そっちのガタイのいい男は、よくわからん」


と私達の印象を述べるバローロ。


美香が私を見て、ニヤリとした。

いかん、なんか考えている・・・。


「私と、ソミュールはどっちが強い?」と

バローロに聞く美香。


おい・・・。


バローロは少し思案し、状況によるが

と前置きをして言う。


「多分、今はそっちのソミュールさんだ。」


「美香は強いが粗削りだ。才能だけで剣を

 振り回している。基本がない。

 基本という概念がない戦い方だ。」

と評論家バローロ。


少し恥ずかしかった。が私は言ってあげる。

「美香は精霊使いよ?それにこれは剣じゃない。

 包丁よ」と。


バローロとダンは口を半開きにし目を見開く。


事の顛末を話すと、二人は再度固まった。

「そそ、そしたら俺もムチ使いっぽくなれるのかな」

「俺はこう見えて、スティック、回復魔法士だ。

 俺はなぁ、ムチが好きなんだよ!」とダン。


「いつも紐に石を括りつけて振り回して遊んでいた。

 でもなぁ、スティックなんだよ!加護!」とも続ける。


「わかる。わかるぞ、友よ。おれもスティック使いだ。」

と何故か涙ぐんでいるサモス。


美香は何かを思案している。

「それ大丈夫よ、私閃いた。」と悪女の顔の美香。

「親方、突貫の依頼よ。」と言うと

紙に何かを描いた。設計図だ。


「これはね、向こうの世界で鎖鎌っていうのよ」

と美香が言うと


「お前たちは異世界から来たのか!」と驚く二人。

こいつだけ、と私と男2人は美香を指さす。


親方は設計図を見て、これならすぐに作れる。

既製品を組合すだけでいい。と言い、


まぁ一日もかからないな、鍛冶屋を紹介しろ。

ついでにサモスの試作2号も作ろう。とも言う。


その間、お互いの力量を見合わせる為に

近場で事足りる依頼をする事となった。


槍使いの戦い。私は参考にする。

間合いを維持し着かづ離れず。ここぞという時に

飛び込む。・・・なるほど。綺麗な戦い方。


私は低級魔法を繰り出しながらダンを見る。

細かく全員に何かの魔法をかけている。

なるほど、気が回る男らしい。


美香は突っ込む。というかいつもだ。

なんか知らない技の名前を叫びつつ。

というかいつもだ・・・。


その後ろからユキツーが援護射撃をする。

むちゃくちゃ力を押さえている。

砲身を溶かして怒られたのだろう・・・。


一区切りつくと

「そのちっちゃいゴーレムはなんだ?」とバローロ。


美香は最上級精霊を宿していると説明すると

へぇ、どんな精霊だ?とダン。


ユキツーは挨拶をする。

「ユキツーです。統合される前はフシャスラと

 呼ばれておりました。」

「コンゴトモ ヨロシク」と。


ぶっ、とバローロとダンは飲んでいるお茶を吹いた。



「なんでフシャスラ様が精霊なんだよ。というか

 なんで使役出来ているんだ」とも続けた。







 














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