第4話 ソミュールの想い

サボルチを出て既に5日目。

私達は親方の荷馬車で移動している。

私達の馬車は鍛冶屋に預けている。


道中は野良魔獣を狩りつつ核を回収する。

いわゆる、小銭稼ぎだ。


昼飯時や夕食時には各々の疑問とかを出し合い

解決に向かうように話し合う。

そうそう、美香には料理をさせない。

お嬢様だからではない。アレだからだ。


サモスはずっと親方と手袋の設計図とにらめっこだ。

最初の試作品で欠点がわかったので対処する。

鉄板と指の間に少し隙間を作ればいいのでは。

・・・とかとか。


そう言えばと、私は美香に言う。

「そのローブで前衛は動きにくくない?」


あ・・・、と美香は言い、アイテムボックスから

布系装備を取り出す。


「これ、唯ちゃん、ベルジュラックの付与があるの」

と言う。

さすがに女子なので物陰でこそこそ着替えをしている。

「どうよ」と言う掛け声と共に美香は出てくる。


・・・なんかすごく。うん。異世界っぽい。

美香の育った世界の装備と思ったら

「コスよ、コス。向こうの世界で異世界を

 イメージした装備よ。」と言うが


こっちの世界にはそんなカッコいいものはない・・・。

「唯ちゃんが魔法で色々と付与しているのよ」

とも言う。


私は少し卑しい気持ちが起こった。


・・・人は平等という。

私は吸血族の家に生まれた。

トンビが鷹を生んだというのだろうか。

私は親にはない魔法の才があった。

突然変異なのだろうか。でも貧乏だった。


杖もろくに買えず自作したりした。

努力して、寝る間も惜しんで

・・・貪欲に勉強した。


食べるのにも命からがら野生のモノを

手に入れる生活。

なんで私はこんな苦労をするのだろう。

私は何でこんなに貧乏なんだろう。と。


私は一流になりたかった。


それに比べ美香は

ベルジュラックと言う伝説の魔導士を曾祖母に持ち

バーボン様と言う稀代の指揮官を親に持つ。

ベルジュラック様からは向こうの世界で

希少素材で作ったタクトを貰い、

さらに魔法付与された装備を貰っている。


バーボン様からは得体のしれない精霊を貰い

愛情、という名の恩恵を一身に受ける。

多分、美香が何か欲しいと言えば

バーボン様はすぐに準備するだろう。


本当に、これを平等というのか。

人は生まれながらにして不平等だ。

こんな考えを抱く私は、私が嫌いだ。


そんな嫌な想いを抱いていると、美香は


「唯ちゃんてさ、やっぱ私達のこと考えて

 いろいろ苦労したんだなぁと思うよね」


「だって私はこんなにも恵まれている」


「今では伝説の婆ぁとか言われているけど

 一生懸命に努力したのかなぁと思う。」


「本当に頭が上がらないよ。だから私は

 頑張るんだ。この服に誓って。あ、タクトもね」

と笑顔で言う。


あぁ、そうか。私は美香に嫉妬しているけど、

私が通るのは美香の道ではなく、

師匠の、ベルジュラックの道なのだ。

でも、私はベルジュラックではない。


私の道は私の道なのだ。

それがベルジュラックの

通った道に似ているかもしれないが、

そう。私が歩もうとする道なのだ。

誰も通ったことのない、私が作る道。


美香をもう一度見る。

私の子供や孫を、美香の様な笑顔が出来る

様にしたい。


それが私の道なのだ。

私が母になり、子を授かり、私の子に

私の様な苦労をさせない。


それが私の道。


「ってかさ、それ。男子の装備っぽくない?

 まぁ、美香には似合っているが」と私はニヤニヤしながら言う。


美香は「フンガー」とわけわかんない奇声を発し

「いいのよ、美女は何を着ても美女なのよ」

とも言った。


私達は笑い合った。


そして移動する事10日目。

赤の国に入り、一つの街に入る。


私達は宿屋を借り、冒険者ギルドへ向かう。

黄の国でランクSだったので、ここでも

それ相当の目で見られる。


美香は名前を売って仲間を集め、素材を集めたいと。

私達は、この人数では困難そうな依頼を手に取る。


受付の男は「おいおい」という感じでいるが。


そして私達は依頼をこなす。

美香はランクSだが力量はSSに匹敵する。

私も無詠唱で魔法が放てるほどに成長している。


そして、サモスは・・・、

もう、なんなんだかわからない。

回復魔法士なのか前衛なのかよくわからなかった。


因みに親方は弓使いだった。

「見るんじゃねぇ、どうせハズレ武器と

 思ってるんだろうに!」と自虐。

そして矢を回収しに走る。イソイソと。


「そんなことないわよ、紫の国の王子様も

 弓使いよ!すごく強いのよ?」と美香。

「もう矢の軌跡は閃光よ!そう

 閃光のジェニエーベルよ!」・・・と。


美香が何か、かっこいいこと言う時は

必ず何かのパクリと私は学習した。

多分異世界の何か・・・。


そしてあっという間に依頼達成。

冒険者ギルドに戻り、報告をし報酬を貰う。


そして次の依頼を受ける。

受付が驚いている。依頼をこなし、そして報告。

私達は次の依頼を手にギルドを出る。


この繰り返しを行う。わざと噂になり易い様に。

そう、強いパーティと

この街の冒険者に意識付ける為に。

そうこうする事4日目。


私達は一つの依頼をギルドに登録する。


依頼 バナジン鋼の入手

場所 エナ鉱山

人員 10名

報酬 バナジン鋼以外の魔獣の核全て


依頼を出し、私達は久しぶりに居酒屋へ行く。

ビールらしい何かを頼みプロージット!


「というかさ、この飲み物の名前って何?」

と美香。


いままで全員、ワザと冗談で美香が

言ってると思っていたらしく呆気にとられる。

「こ、これはな、リューキュルだ・・」と親方。


「舌かみそうね、リューでいいわ。長いし、名前」

と返す美香。


わけわかんなくて全員プロージット。


すると5名の男たちが声をかけてきた。


「姉さん、さっきの依頼、おいしそうだな、混ぜろ」

と言う。


その瞬間、美香は包丁を抜き男たちの前の

空を切る。・・・ここは居酒屋なんだが。


3人が腰を抜かすが2人が微動だにしなかった。


「まぁいいわ、入れてあげる」と美香。



腰を抜かした二人は竪琴使いと魔法士二人。

腰を抜かさなかったのは短剣使いと槍使い。

というか、その前衛二人は見切っていた。



「なるほどな、合格でよかったぜ」と槍使い。












 








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