第3話 赤の国へ

帰りに裁縫針と口紅を一つ、親方に渡し解散となった。

サモスは手袋の試作品を試したいとの事だったので

翌朝、宿屋の前で待ち合わせし、低級魔獣討伐をすることになった。


そして翌朝。3人は魔獣討伐に向かう。

適当に狩りをし、残り1匹になった所で

サモスが手袋をはめる。


魔獣との対峙。お互い?がジリジリと間合いを詰める。

そして魔獣が飛び込んでくる。

サモスは左足を前に右腕を思いっきり後ろに引く。

渾身の右拳の一撃。


魔獣の額が陥没したと同時に煙となり灰が残る。

「うぉおおお!」と

雄たけびを上げるサモス。


よほど嬉しかったのだろう、

と思っていたら。


治癒!早く治癒!回復早く!

って俺じゃねえか!回復魔法士は!


どうやら反動で右手の指の骨が折れたらしい。


「今日だけは、今だけは回復魔法士で

よかったと心底思う。」と

治療が終わったサモスはつぶやく。


どういやら試作品はダメだったらしい。

再度考え直そうと鍛冶屋に戻ることにした。


鍛冶屋に戻ると親方が

「ちょうどいいところに」とダメダメな顔で迎えた。

「そもそもだ、この裁縫針を基に

 長さ2メートルの長さの物を作るのは

無理だ。やはり興奮すると我を忘れるな」と・・・。


人はこんなにも興奮すると思考が

変になるのかと。・・・私は思う。

明日は我が身。


「とりあえず可能な限り、

上等なもんは作ってやる」

とも続け、さらに・・・


ただな・・・、そっちの包丁なんだが。

合成した時の光、あ、

合成するとな光るんだよ。

バチバチと。その光の色が、

とある鉱物の光と似ていたんだ。

というか、

10個光るうちに2回ほどだが。

その包丁・・・複合材なんじゃねえか?


もしかすると作れるかもしれんぞ?それ。

あくまでも、もしかしたら、だ。


と親方は言う。


美香を見ると・・・あぁ、だめだぁ。

美香の頭の中では確実に

作れることになってる。・・・そんな顔。


実はちょっと前に1本の剣の依頼があってな。

2つの素材を合わせて剣を作ってほしいと。

1つの素材は激レアさんだ。もうひとつは

お前さん達なら手に入れられるかもしれん。


その手に入れられる方がその包丁に

使われている可能性がある。


「バナジン鋼だ」と親方。


今取れる所は限られているが

冒険者であるお前たちは取れるかもしれん。

お前たち、強いんだろ?


と、言うのもその鉱山は今や魔獣の住処だ。

というより、うじゃうじゃだ。

・・・人を集めればいけるかもしれん。


「因みにもう1つの激レアさんは何?」

と美香。


親方は真顔になり言う。

「アースドラゴンの・・・・糞だ」


「やっぱ自分の糞が何なのか知ってるんだ

な。よっぽど気に入った者でないと

渡さないらしい。まぁ、駆け引きだな。」とも続けた。


仮にな?アースドラゴンを殺っちまって

奪うには、なまくらな剣や武器じゃだめだ。

よっぽどの・・・そうだな、

神器に近いくらいでないとダメだ。

じゃないと傷ひとつつかないはずだ。


「ちなみにこの包丁では?」と美香。


「どうだろうなぁ、相性もあるかもしれんが

 それは細いし、薄い。

多分折れるかもしれん。」

と考えながら親方。


「じゃあさ、その2つを取ってきたら

 それで包丁と薙刀作ってくれる?」

と美香。


ありがたいと言えばありがたい。しかし

ありがたくないと言えばありがたくない。

何故なら、素材集めもだから・・・。

と私は思う。


「因みに、アースドラゴンが居る場所は?」と美香。


赤の国のペンデニウム地溝だ。

もう一つの方も赤の国のエナ鉱山だ。

と親方が言うと、

というか言い終わるとすぐに


「じゃあとってくるからよろしくね」と

美香は言うと、続けて


「そういえば、その剣の依頼者って

 白っぽい桃色がかった髪の

二刀流の剣士?」と。


「よくわかったな、

 そういえば何か姉ちゃんと似ているな。

 ありゃぁ、絶世の美女だ。

いや・・・変に、

 そう、なんだか変に綺麗すぎる。

 おかしいくらいに・・・。まぁ、

 あれが魔性の女っていうんだろうな。」

と親方はガハハと笑いながら言う。


私達は宿屋に戻り、明日の準備を整えると

居酒屋へ。昨日と同じ顔ぶれ。


「なるほどなぁ、母ちゃんかもしれないと」

と言うと親方は一気飲み。


「いや、母様よ、絶対」と美香も一気飲み。


私達はわかる範囲でまとめてみる。

美香の母様、ウォッカさんは

赤の国で素材を集め、親方の所に持ち込む。

その後、何故か秘境に行く。何か凄い物を探しに。


そして情報屋をこの街の鐘に縛り倒す。

そして剣を受け取り、多分スコティさん達と

どこかへ行った。


沈黙は流れるが、破る男が居た。親方だ。


「多分、赤の国じゃないか?」

と上機嫌で一気飲み。続けて


「年に一度開かれる赤の国の部族対抗の

 コロッセウムに勝手に参加するって

言ってたぞ。

 呼ばれていないが、とも言ってた。」


店員さん!飲み物追加ね!全員分、とも言う。


「何故それを早く言わないんだ!」

と美女二人。


「いや!だって聞いてないし!」と親方。


向かう先は赤の国で確定した瞬間だった。


「だったら俺達も連れていけ。

おもしろそうだ」

と親方が言うと、

サモスが緑色の豆を吹いていた。


「赤の国にはお得意様も弟子もいる。

 包丁と薙刀は向こうで作ってやる。

 まぁ素材が手に入ったらだがな。」と

ニヤニヤしながら美香に言う。


「その喧嘩!かったわ!」と言うと

親方と美香はプロージット。



そして明日の昼頃に

鍛冶屋で待ち合せることになった。










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