第2話 口紅
談笑している二人だったが
突然、親方が美香に向かう。
「おい、ちょっとその剣をみせてくれ」
と真顔で言う。
「剣じゃないわ、包丁よ」と
なんかドヤ顔の美香。
「こりゃなんだ、なんなんだ」
親方はそれはもう隅々まで見る。
日用雑貨屋で作った包丁に、異世界の
素材を付与した。と美香。
「バカか、バカなのか!なんで付与なんだよ。
すぐに分離しろ、
悪いようにはしない!今すぐだ」
と親方は美香に言うと
バカとは何よ!といいながらも分離する。
「俺が合成してやる。逆だ、この包に
・・・ってかなんなんだ、 この包丁!」
と興奮しながら隅々まで見る。・・私も。
私達の目の前で異世界の包丁を基の素材とし
80センチの包丁を合成する。
「いいか?あのままだったら元の素材が
耐えられなくてぽっきり
折れちまったとこだ。
だから合成は強い物を基とするのが
基本だ。そして、この長い包丁の
特徴だけを取り入れる」
これで完成だ。
姉ちゃんがやったのはこの綺麗な模様を
取り入れて、元の包丁に鞭打って
働かせているという感じだ。
そう付け加えると美香に包丁を渡した。
「いいもん見せてもらったからタダでいい」
と笑いながら。
美香は「斬撃丸 改」と名付けた。
ところでおやじ、話を聞いてくれ。
とサモスは言った。
武器についてだ。
昨日に居酒屋で話した内容。
親方は「ふむ」と思案し、
サモスが言うならと
美香に「その薙刀ってどんなのだ」
と聞いた。
美香は紙に
こんな感じとなにか設計図の様な感じでと、書く。
そしてもう一枚にこんな感じで、
と手袋を描く。
「面白いな姉ちゃん!」乗った!
その話乗ったぞ!と親方は言う。
「あ、サモスの手袋は自分で作れ。
お前なら簡単だろう」とも付け加えた。
3日ほど待ってくれ。その代わり一級品を
作ってやる。代金も一級だ。と親方は言う。
美香は親父に袋を渡す。袋には
「ウゾの。秘密の隠している袋」
と書いてあった。
私達は冒険者ギルドに戻り、
適当に募集に入る。
美香は以前来た所らしく
ガンガン攻めている。
動きがいちいちカッコいい。というか、
何か自分の世界に入っている感じだった。
時たま、聞いたことのない、
多分技の名前?を叫び攻撃している。
後ろからユキツーが援護射撃と言う美香が
名付けた攻撃を繰り出している。
私もほぼ無詠唱で中級魔法を放つ。
固定式魔方陣に加え、美香に教えてもらった
異世界の知識。
私は一生懸命勉強した。
炎とは、氷とは何かを。
今ではイメージしただけで魔法を放てる。
もう募集主たちは私達を見ているだけで
戦闘が終わる。
「この包丁いいわ!
前からしたら軽いし扱いやすい」
と美香はご満悦。
「美香様、少し砲身が溶けてしまいました」とユキツー。
美香はめっちゃ凹んでいた。
募集主はここまでで帰ろうと全員に言う。
「ボス部屋にはいかないの?
ファフニールの所」と美香が言うと、
討伐されてまだ存在しないと言われる。
夕刻、私達は街に戻り報酬を受け取り別れる。
鍛冶屋が気になるので覗くことにした。
どうやらサモスの手袋はほぼ完成していた。
手袋には厚めのプレートが付いている。
そのプレートには尖った楔上のものが
4本。ちょうど骨のあたり。
私は爪なのでは?と思う。しかし・・・。
手袋なのだ。ただの。
私はふと思い出す。スキルの事を。
魔法使いが魔法を唱えるように
武器使いもスキルがある。
この場合、スキルはどうなるのだろう。
私は心配と同時になにか楽しくなってきた。
今日は親方も呼んで一緒に飲もうと言い
私達は一度、
宿屋に戻り水浴びをする事とした。
美香は
「温泉ないの不便よね。というかさ、
お風呂作ろう。
後で、親方に言ってみようかな」
とわけわかんない事を言った。
時間になり居酒屋に向かう。
4人でプロージットだ。
親方は薙刀について語る。
「使うのはこっちの綺麗な姉さんか。
ちょっと立ってみてくれ。もう一度
武器の長さを確認したい。」
とも言う。私は立つ。
「なるほど、わかった。じゃあ今度は
俺と腕相撲してくれ。」とも言う。
ガッチリと組み合い、私は渾身の力で!
力でっ!・・・親方の腕は
びくともしなかった。
・・・わかった。と親方は言うと一気飲み。
「ジャンジャン飲んでいいのか!?
というか飲むぞ!」
そして全員プロージット。
薙刀を作りながら思った。
あれは何故か女性に似合う気がした。
考えるにつれ俺は思ったよ。
あれは最強の武器だ。
と、一人真面目な親方以外全員
プロージット。
「剣よりも?」と美香。
状況によるが、と前置きをし親方は言う。
もし、お互いの力量が同じなら
剣は勝てない。しかし、同じ力量ならば
槍には負ける。
まぁ武器はそんな感じでうまく出来てるってことだ。
と笑いながら一気飲み。
そして。
「俺の名前はトスカーナだ、
そう呼んでくれ」と親方。
「ところで親方、
サモスって鍛冶師だったの?」
と美香さん。
名前で呼べや!と親方一気飲み。
「お前さんは異世界から来たんだろう?
何か面白い素材はないのか?」
と質問無視で言う。
美香はアイテムボックスから何かを取り出す。
「これが裁縫針、そして口紅、あとは、こんなもんね」
といくつかの物を机に並べた。
「この針すげえな、これ刀身に使おう。」
「そして、この口紅なるもの。
なんかこう・・・
吸いつきたくなる色の・・・アレだ。
そう、魅惑。心くすぐる何かだ。」
「・・・付与してみるか?美香。
なんか面白そうだ。」とも続ける。
美香はこうやって使うのよ、と口紅を
唇に当てる。
口紅を使った美香は凄く綺麗で見る者を
釘付けにする。
まだあるわよ?ともう2本取り出した。
「ソミュールはこれね」とオレンジ色の
口紅を私に塗る。
美香はコンパクトなる物で、鏡で、
私を写す。そこには、
綺麗な私が鏡に映っていた。
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