第12話 処理能力

血がなせる業なのか。

ウォッカ様、いや、普通に考えて

バーボン様の血。・・・異世界の血。


向こうの世界の人間とはそんなにも強いのか。

私達と何が違うのだろう。

と、思っていると既に魔獣の群れは

片付いていた。


「なにボォォっとしてるのよ、ソミュール」

と美香。

「見とれていたのよ、貴方の戦いに」と私。

仕方ないわね、と美香は上機嫌。


私は冗談のつもりで言ったが

冗談ではなく私は確かに見とれていた。


小休憩を取る。ダンとサモスはスティックを持ち

全員を回復する。

美香すらも怪我をしている。


リスボアは足手まといとなるとわかっていたのだろう。

敵に目を付けられないような立ち回りをしていたので

ほぼ、怪我はない。


全員休憩を終えると更に奥へ進む。

いつの間にか美香は二刀流になっていた。

が、少しぎこちない。


その為にユキツーが援護射撃をする。

解けない体を手に入れたからなのか

砲身から出る魔法攻撃の様な物が、

もう光の閃となっている。


どういう仕組みで発しているのか私は

とても気になった。次の休憩時にでも聞いてみよう。


美香とバローロを先頭にし、リスボアをその後ろに置く。

サモスとダンは回復魔法士としてさらにその後ろに。

私と親方は最後尾。

美香達の左右に回り込んだ敵に狙いを定める。


陣形を変えた効果なのか、当初より若干時間はかかるが

確実に、そして反撃をあまりされずに進める。


リスボアも勘がいい。美香達が打ち漏らして

もう少しで倒せそうな魔獣のみを狙い攻撃をする。

ほぼ一撃で倒せるのは多分、剣のおかげだ。


リスボアはむやみに突進せずに、魔獣に目を配って

自分の力量に合わせた敵のみを攻撃している。

この短時間ですごい進歩をしている。


強くなるには強い中に居なければならない・・・。

よくいったものだ。と私は少し笑う。


無詠唱で連続で魔法を放っているせいか

私は疲労の様な物を覚えてきたが、

それでも放ち続ける。

しかし、軌道がズレだしてきている。


溝道がどんどん収束している。

終着点は近い、と全員が感じていた。


そして少し開けた所があり、そこで最後の休憩を

することとなった。

前半よりもこちらの怪我は少なくなったが

その分、攻撃ができるので、攻撃手数が増え

全員疲労が激しい。


「大丈夫、どうせ地竜とは戦わないわ」と

美香。汗ばみ、息が荒い。


「地竜ってなんだよ、アースドラゴンだろう」

怒られるぞ、アースドラゴンに、と全員。


「名前長いので言いにくいわ、地竜と呼ぶことにする」

と美香。少し鼻息が荒い・・・。


全員がそれぞれ休憩を取る。


私はおもむろに自分の杖を見る。

「ひびが入っている・・・。」と声にしてしまった。

確かに途中から魔法の軌道がおかしいとは思っていた。


全員が集まり、どうしたものかと思案する。

「大丈夫。なんとかするわ」と私。


「そういえばさ、杖とかスティックとか、そう、

 タクトもだけど、どういう仕組みになってるの?」

と美香。


「多分、攻撃系の武器よりも魔力を込めやすいのだろう。

 杖は攻撃系、スティックは回復系の。タクトは知らん」

とサモスとダン。


「それって、魔力を貯めやすい。じゃないの?」と美香。

さらに続けて言う。


私は若木のタクトと唯タクト二つ持ってるけど、

明らかにタクトへ込める魔力の大きさが違う。

あまりにもタクト自体の性能が違うから

わかるのかもしれない。


それを聞いてリスボアも言う。

「俺が持っていた剣。あ、勿論今、魔力の話だけど

 この婆ちゃんからもらった剣。」


「全然違うんだ。力を込めやすいっていうか。

 アスティ様の剣。

 なんて言ったらいいかわからないけど。」

「俺の力を全部乗せられるんだ。剣に。

それと同じじゃないのかな、多分。」


「だからソミュ姉の杖もそうでさ、

 杖が受け止めきれなくなってるんじゃないかな。

 ソミュ姉の魔力を。」


・・・ソミュ姉ってなんだ、おい。と私。


なるほど、と美香は言い


唯タクトには私の魔力をガンガンに乗せられるけど

若木のタクトは少し乗せ辛い。それは多分

無意識に魔力を調整している証拠かもしれない。


魔力を杖に込めるのが自然と効率良くなっていって

・・・。例えばいままで5の魔力を入れてたけど

いつの間にか、5のつもりでも10入れちゃっている。

だから杖の処理が追い付かなくなってひびが入った。


「その通りです。武器自体が処理する能力です。

 リスボアの剣しかり、その危険な唯タクトしかり。

 貴方の魔力を杖が処理しきれなくなったのです」


ユキツーが話し出す。そして続けた。

この延長砲身。私はこれを発射口としています。

例えば・・・。美香様、その唯タクトを

貸してください。


美香が差し出すと右手に持つ。

そして壁に向かい射撃を行う。


少し溜めが入り一気に放出される光の閃。

いつものモノより太く早い。そして

光の閃がとおった後には空しかなかった。

岩も何もかも、えぐれている。


い、今のは私の全魔力、あ、少し残しましたが。

動けなくなるので・・・。

これだけ込めてもこのタクトは処理しました。

多分若木のタクトは、はじけ飛びます。


武器によってこれだけ違います。

もしも、ソミュールの魔力を処理できる杖があれば

ソミュールも先ほどの攻撃くらい出来ます。

・・・ソミュールは武器を変えるべきです。

良いものに。それほどに貴方は強い。


美香様には失礼ですが、もしも美香様と

同レベルの武器ならば・・・。

唯タクトと同レベルの杖を持ち、

それで魔法系で対峙、対決するならば・・・。



ソミュール、あなたが勝ちます。


















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