第31話 月明かり②

私は呆気に取られて動くのが遅れた。

私の様な奴もいるんだなぁ、と

しみじみ思っていたら


いきなり私の右側を、デカい何かが

後ろに飛んで行った。遅れて

なにか液体の様な物が私の体に罹った。


振り返ると上半身だけの人間だったよ。

私に罹った液体は血だった。


私はあわてて中に入るとウォッカさんは

そりゃあもう

「ちぎっては投げちぎっては投げ」いや

「斬っては投げ、斬っては投げ」を

言葉通りでやっていた。


斬った上半身を後ろへ投げ、

下半身は前に蹴り飛ばしていた。


だから建物の入り口側には体上半分が

奥には下半身がちゃんと分かれていたよ。


ウォッカさんの顔を覗き込むと

ドアから差し込む光と返り血のせいかな。

目が赤く、光っていた。


そして2階へ上がり、誘拐された者達が

居ると思う部屋に入ると


3~4人かな?女の子を盾にこう言っていた。

「それ以上近づくとこの女の首が飛ぶぞ」ってね。

でも、言い終わるとその男の首が飛んでいた。


これはまずい、活躍の場がねぇと思って

私も棍で3人をなぎ倒したよ。


そしてウォッカさんは大きな声で叫んだよ。


「ジヴァニアはいるか?

 ジヴァニアと言う名の子はいるか?」と。


まだ子供たちだ。泣く子もいるし我を忘れて

叫んでいる子もいた。


ウォッカさんは一通り子供たちを見まわすと

ジヴァニアが居ないとわかったのかな。少し

項垂れていたよ。


でも5歳くらいの子が居てさ。

凄く泣いていたんだよ。その子に気づくと

近づいて行って


「もう大丈夫よ」と優しく抱き上げて、

頬を摺り寄せ、何度も何度も

「大丈夫よ、大丈夫」と優しい声で

言っていた。


格子窓から差し込む月の光が

ウォッカさんに当たるんだ。


そこにはまるで女神の様な顔をした人が居た。

先ほどの苛烈と言う言葉が似合う人とはまるで

別人だったよ。


一時して、国に雇われた人間がやってきて

少女たちを連れて行った。


「安心しろ、あの子たちは必ず親元に届ける。

 絶対だ。必ずアスティにさせる」

と私に言うと


「お前の棍の使い方、旨いな。素質がある。

 強くなれ。あぁ、後、何度も言うが

 我慢を覚えろ、勝手に3人倒すな」

と私に微笑んで言ってくれた。


それ以来私の座右の銘は「我慢」だ。


まぁこんな感じかな!出会いは!と

言うとテージョは一気飲み。


まぁその後もそんなこんなで何回か

一緒に仕事したよ。いやぁ楽しかった!

でも必ず体上担当が私で

体下担当がチェスキーだったよ・・・。


片付けるの。


私達は酒ではない、何かを、ゴクリとした。

全員。


「お前たち、特にソミュールだっけ。

 お前どうするの?杖使えないだろ。」と

チェスキーが言うと


「ほら、これ使え。」と一つの杖を渡す。

「まぁゴネた詫びだ。あ、でも返せよ?

 それむちゃくちゃ高いんだからな」と。


杖を手に取る。


「ピノだ。ピノの木で作られたモノだ。」

とテージョは飲みながら言う。

「そう、誰も見たことがない伝説の杖だ」

とも付け加える。


うぉおおおお、神が宿ると、聖なる力が

宿っていると言われるピノの杖。

レアだ、激レアさん登場だ。と私は大興奮。


売ってくれ!金貨何枚だ!?と聞いたら

金貨5000枚でいいと言われ、

・・・私は酒を注いだ。庶民には無理だ。


「それに移ろうか?」と杖の中からバフォメット。

また審判になるからやめろ、と私。


全員大笑いでプロージット


「絶対に勝て。でないと私達が弱かったと

 思われる。だから、勝て」とテージョ。


「マッカイ族の爪、ルエダは強い。

 私よりも弱いがなっ!」と鼻息荒いテージョ。


「何言ってるの、あんた速さに惑わされて

 わちゃわちゃしてたじゃない」とチェスキー。


「私が魔法であなたの速度強化してなかったら

 あんた負けてたわよ」と呆れてチェスキー。


「因みにどれくらい速度上がるんです?

 その魔法で」とリスボア。


「そうねぇ3倍くらいかな?」

と一気飲みしながらチェスキー。


テージョの3倍の速さと同等。

その速さを持つルエダ。


所で美香は目が覚めたかな?とリスボア。




でね、勇樹ったら私の作ったご飯を

謎の何かっていうのよ?というかこの世で

最強の兵器だって。もう失礼しちゃうわ。


じゃあ、明日の朝私とお団子でも作ろうか。

と微笑むウォッカ様。そして、


「バーボン、もう入ってこい。いつまで

 ドアに耳当てて聞いてるんだよ」と言った。


ドアが開いて、なんかばつが悪そうに

立っているバーボン。


「父様が回復してくれたんでしょ?わかったわ。

 なんかすごく暖かくて父様を感じたわ」


「ありがとう、父様」と美香が言うと


「く、口きいてくれないって言ったから。

 なんか、その。・・・うん」とバーボン。


「もう二度と母様を困らせないでね、そしたら

 許してあげる」と笑う美香。


「も、もちろん!こう見えて俺と母さんは

 仲がいいんだぞっ!」と嬉しそうにバーボン。


呆れた顔のウォッカの横に椅子を持ってきて

座るバーボン。


「しかしな、美香。母さんと料理だけはするな。

 絶対だ。約束だ」と言うと

ウォッカにおもいっきり殴られた。


「じゃあ二人で作った団子を一番に食べるのは

 父様ね。」と笑いながら美香。


「いやぁ、お父さん死んじゃうかもなっ」

と焦り笑いのバーボン。


「いや!絶対に死ぬかもよ!?」と

真顔で美香に言う。


美香は笑っている。ウォッカも微笑んでいる。


・・・・。


わ、わかった。父さんが強いってところを

最強で最高の父さんって所を見せてやる。



月明かりが三人を優しく照らす。






 









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