第32話 生還

そして翌朝。決勝当日。


美香とウォッカは調理場で何かを

作っている。バーボン様の指導の元。


「おい、ウォッカ、何入れた今。」

「ちょっとまって、美香。

 それは入れてはいけないぞっ」


3人は楽しく?何かを作っている。

まぁバーボン様が付いているのであれば

気絶しても1分くらいで済むだろう。


私は3人に「おはよう」と言う。

3人は振り向き「おはよう」と言った。


いいな、こういうの。家族で楽しそうで。

と思う、私。

・・・作ってるのが料理じゃなければだ。


全員が起きてくる。

おのおのが「おはよう」と言うと


「あ、ソミュ姉、おはよう。

 朝ご飯作っておいたから並べよう」

とドアを開け入ってきてリスボア。


「どうだ、少しは出来るようになったか?」

とウォッカ様は言うと


「うーん。よくわかんないけど、

 ドーンと言ってバーンと引くみたいな?」

とリスボア。


「リスボアばかりずるいわ。」と美香は

何かを捏ねながら言う。そう何かを。


「ジヴァニアはまず足腰の鍛錬よ」と

微笑みながら、何かを捏ねているウォッカ様。


「あ、団子だ。俺も作る。」とリスボア。


リスボアはそれが団子だとわかるのか。

すごいな、リスボア。才能だな、と私は思った。


そして私は言う。

「リスボアは最初から自分で、自分だけ作れ。

 ・・・絶対だ」


全員で「いただきます」を言うと

机に並べられている食事を各々がとり食べる。


しかし、いつもと違い静かだ。

そう、バーボン様の前にだけ特別な何か。

そう美香とウォッカ様が作った謎の丸い球。


全員が食べながらもチラ見している。


バーボンは様まず匂いを嗅ぐ。

生きとし生けるものの基本行動を行う。


そして様々な角度から覗く。

「うん。見た目、匂い、問題はない」

と呟く。


「失礼ね、父様は」と頬を膨らませる美香。

いや、まったく問題のない行動だ。と全員が思う。


謎の玉を手に取り、少し舐める。

「うん。表面はつるっとしていてる。

 舌触りはよい。舌もピリピリしない」


「早く食べなさいよ、片付かないじゃない」

とウォッカ様。

いや、問題ない行動です。ウォッカ様と、全員思う。


そしてなんとバーボン様はその謎の玉を

口に投げ入れる!勇者だ。やはりバーボン様は


勇者だったのだ!


と全員がチラ見を止め凝視する。


勇者は、いやバーボン様は口をもぐもぐさせる。

そして飲み込んだ。


沈黙が流れる。

ウォッカ様はスープをすすっている。

美香は黒パンをかじっている。

リスボアは野菜を食べている。

ダンはスティックに手をかける。

バローロはお祈りを何故かしている。

親方は卵を割りかき混ぜている。

サモスもスティックに手をかける。


「うん。いけるなこれ。」とバーボン様。


「なんかこう、中華系?でも旨辛?

 なんかミントの様な・・・。

 ちょっと複雑だが通好みの味だ」

というともう一つ口に入れる。

そしてモグモグし、一時して・・・

幸福に包まれたような顔をする。


バーボン様は立ち上がり、涙を流す。

頬を伝う涙!そしてゆっくりと

右拳を天に向けて突き上げる。

微笑みながら。


勇者の勝利。勇者は勝ったのだ!


目の錯覚だろうか。バーボン様の体が

白く、そう全体が白く見える。


そして動かない。


「治癒だ!早くしろ!治癒だ!

 間に合わんぞ!」と親方が言う。


「だめだ、呼吸をしていない!」


ユキツーすら慌てている!

「いかん!主が、主がっ!ダメだ!

 魂を何かに吸い取られている!」


「バフォメット!なんでもいいから

 強化魔方陣を発動させろ!」

とも言っている。


上級回復魔法を二人が交互に発動する。

それに合わせバフォメットが魔方陣を

バーボン様に重ねる。


5分!5分後、バーボン様は

「げほっ、」と息を吹き返す。


「こ、ここは?あぁ、そうかエアスト大陸か。

 戻れたんだな、俺は。」と言うと


目の前に巨大な生命体がいた。それが言うんだ。

この先に二つの道がある、選べ。と。


俺は迷わなかった。そう、何故ならば

俺の歩む道こそが道となるのだと。


そして左側の道を選んだ。何故ならば

美香が俺の左側に座っていたからだっ!

団子を食べた時に!


親子の愛、絆を感じた。全員が涙した。


バーボン様は勝ったのだ!

究極のカティ・サークレットに!


ウォッカ様と美香を見ると、

何事もなかったように食事を続けていた。

そしてウォッカ様は言う。


「ごちそうさま」


全員で片づけをする。


リスボアが作った団子は勿体ないので

会場にもっていくこととした。

小腹が減ったら食べようと。


団子を容器に入れながらリスボアは

少しニヤリとする。

何かすごくいたずらっ子の様な顔で。



そして準備をして会場へ向かう。


「ジヴァニア、特別戦で待っている。

 勝ってこい、そして私と剣を合わせよう」

とウォッカ様は美香の頭を撫でる。


「美香、俺からの指南だ。相手の爪は

 早い。想像を絶するほどに。でもな」

というと美香の耳元で何かを喋っている。


「バーボン、耳元で話す必要あるのか?

 ジヴァニアの匂いを嗅ぐためだろう」

と呆れた感じでウォッカ様は言う。


美香は真っ赤になり、しかし

「わかったわ!やってみる!」と返事をする。


そして私達は控室に入る。


皆他愛のない話をする。

緊張していることを自分自身

わからないフリをするためだ。


私は杖を両手で持つ。金貨5000枚の価値、

借り物の激レアの杖を。

そして私は思う。


この杖だけは守る。他の何を犠牲にしてでも。

ダンとバローロを犠牲にしてでもっ!

二人が死んだとしてでもっ!と強く心に誓う。


そして

「入場です」と部屋に声が響く。


「いこう!」と美香が言い、歩き始める。

私達も後を続く。



決勝戦が始まる
























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る