第30話 月明かり①

ベッドに寝ている美香。

その横に椅子を持ってきて座っているウォッカ。

右手を美香に添えている。


美香は「うー、んん」と少し声を上げ目を開ける。

気が付いた?ジヴァニア。

と優しく微笑むウォッカ。


美香は寝ながら母様を見る。

窓から差し込む月明かりに照らされるウォッカを見て

「母様、綺麗」と微笑みながら言う。


「そりゃそうよ?ジヴァニアの母だもの。

 綺麗に決まってるじゃない」と微笑む。


私負けたのかな・・・。と言うと

「勝ったわよ、おめでとう」と額にキスをする。


私勝ったんだ。でも記憶がないわ。

私ね、棍を頭に受けた所までかな、覚えてるの。

いや、その後も少し覚えてる。


湖の中かな、沈んでいくの。どんどん。

そして体に力が入らなくなって動けないの。


でも誰かが呼んだのよ?私の事。

美香、美香。って。そして

美香は頑張ったけど、まだ頑張れるよ、って。

がんばれ、がんばれって応援してくれるの。


聞き覚えのある声。あぁ、そうかチルちゃんだ。

って気づいたの。


あ、チルちゃんってね、こっちに戻ってきて

初めて召喚した精霊なの。凄く小っちゃくて。

それでね、フィギュアに統合しちゃった。


今は、シンの森で暮らしてる、他の精霊と

一緒に住んでるの。

強くなったら私を助けるんだって言ってたわ。


ウォッカは微笑みながら美香の話を聞いている。


チルちゃんに助けられたのかな。

その声を聞いたらね、腕が動いて何かを

掴もうとした。

でも届かないの。そしたら光が水面から

伸びてきてそれを掴んだの。

光なのに掴めたの。すごいでしょ。と微笑む。


ウォッカも微笑んでいる。


そしたらいつの間にか私の周りに沢山精霊が

来て言うの。


「仕方ないなぁ、手伝ってやるか」とか

「美香は弱いから力貸してやる」とか

意地悪言うのよ?でもどんどん私の体の中に

入ってきて、そしたら動けるようになったの。


掴んでいた光を握りしめたらなんか

刀みたいなのになって。

そしたら私どうしたと思う?


私ね、一生懸命素振りするのよ?

動けるようになったんだから泳いで

水から上がればいいのにね。


と布団を口のところまで持ってきて笑う。


覚えてるのはそこまで。

でもずっと暖かかった。眠っている私、

凄く暖かかった。

そして目を開けると母様が居た。えへへ。


ウォッカはただ微笑みながら美香の話を聞いていた。




場所は例の所


プロージット!

「いやぁ、すごかったね!代表戦!」とサモス。

「もう、あれだ!バトル物の何か!」とダン。


なんだよそれ!と全員プロージット。

「私達にそれ求めるなよなっ!」と私。

そして笑いながら一気飲み。


「しかし、強かったなぁ、棍。

 20秒で終わっちまったし、俺。」

と鼻水すすりながら涙目のバローロ。


全員笑いプロージット。


「しかし、あのジヴァニアって

 強かったなぁ。意識飛んでても

 攻撃して来たし!」と誰かが笑う。


「そりゃそうだ、だって俺の師匠だ!」と

リスボアも一気飲み。


そして全員プロージット。

「それに鎖鎌の刃、ありゃなんだ。

砕けなかったぞ!はっはっは」と誰か。


「そりゃ俺が鍛えたんだ。当たり前だろう!」

とガハハと親方、そして一気飲み。


全員笑顔でプロージット!

って誰だよ!人数増えてるし!

まぁいいかってことで全員一気飲み。


「お前らいつもこんなかよ」と笑いながら

テージョと、チェスキー。


全員が固まる。が

「もう対抗戦は終わったんだ、私達。

 いいじゃねえか!昨日の敵は今日の

 飲み友達っていうだろ?」と二人は

一気飲み。


「しかし、ウォッカさんの娘、強かったわ。

 まぁ?本当は私の方が強いけどね」と

鼻息荒くテージョは一気飲み。


「ウォッカ様を知ってるみたいだったけど」

と私が聞くと


「あぁ、数年前のギルドの依頼で一緒に

 仕事したのが最初だ。」と言うと

テージョは話をつづけた。



私はある依頼を受けた。数年前に

女性ばかりを狙った誘拐事件が多発していた。

5歳から15歳前後のまだ幼い子供だ。


国も動いているらしく、国からも

助っ人を出すってギルドは言っていた。

それがウォッカさんだった。


私はコイツ、チェスキーを連れて

指示された場所に向かった。

辺りはもう、暗くなってきていた。

雨が降りそうだったけど、たまに

雲の隙間から月明かりが差し込んでいた。


私達は木の陰で待っていた。

こっちは二人だから多分あっちから、

国の派遣の方が人数多いのかな?と

話しながら。


一時して、

話をしながらも気配を感じることは

忘れていなかったはずなのに

目の前のチェスキーは突然目を見開き

私の後ろを見ていた。


私の後ろにウォッカさんが立っていた。

私が何も気づかずに後ろを取られた。

チェスキーなんて目の前なのに気づかなかった。


動揺しながらも私は「え?ひとり?」と

聞くと「そうだ」と一言だけ言ったよ。


そして、どうするか作戦を決めようとして、

だけど私が「そんなもん私が突っ込むだけだ」

と言うとさ、ウォッカさんは

「それはダメだ。少しは我慢を覚えろ」って。


でもそう言うとウォッカさんは誘拐犯の

建物に向かった。


おいおい、我慢するのは私だけかよ!と

思い私達も後に続いた。

もう歩き方だけでも「こいつは強い」と

思った。そんなもんだよ、強い人って。


そして時たま雲の隙間から差し込む月明かりが

ウォッカ様に当たってさ、

そりゃもうかっこよかった、綺麗だった。


私は見惚れてしまって立ち止まっていた。


我に戻ってウォッカさんを見ると

何色とも言えない何か、そう。

なんかオーラの様な物が体の周りに見えた。



そして扉の前に立つといきなりドアを

蹴り破ったんだ。ウォッカさん。


そして突っ込んでいった・・・。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る