第29話 決着

手ごたえありだ。決まりだ。とテージョ。


美香の体がふわっと沈み込む。

そして動かない。


アスティは立ち上がり宣言をしようとするが

「まだだ、まだ立っている。」とウォッカ。


テージョは勝敗は決したと思い

美香に背を向け歩き始める。

しかし、立ち止まる。


背後に異様と思えるほどの気配。

棍をしっかり握る。が、

体がゾワゾワとするのを感じる。

ゆっくり振り向くと

崩れ落ちるはずの美香はまだ立っている。


刀を両手から離さず、いつ崩れ落ちても

おかしくない姿勢で。


よく見ると美香は何かを唱えている。

刀に雷光のような光が一瞬走る。ほどなく

周りに色とりどりの光が複数集まり、そして

その光は徐々に刀の中に入っていく。


全ての光が刀の中に消えると

刀が虹色に輝く。


美香はその場で右手に持った刀を振る。

振った後の残像が虹色の刃となり

テージョに向かう。


慌てて避けるが既に美香は左手の刀でも

虹色の刃を放っている。


「く、食らう!歯を食いしばれ!私!」と

テージョは自分自身に言う。

直撃。と同時に鮮血が飛び散る。


「おもしろいなぁ、楽しいよなぁ。

 意識が飛ぶとこだったぞ、私が!」

と棍を両手に持ち美香に歩み寄る。


美香は右手で刀を振る。虹色の光の刃が

真っすぐにテージョに向かう。が、棍で

光の刃をしたから払う、が空を切る。


すると棍の先端の十数センチがほどなく

ゆっくりとズレながら落ちる。

と同時に鮮血が飛ぶ。


「ずるいな、攻撃を当てられないんじゃ

 お手上げじゃないか」というが

 滴る血をぬぐいながら真顔で笑う。


そしてゆっくりと更に美香に近づく。

と、同時に素早く踏み込み、鋭利に切り取られた

棍の先端で美香の胸を突く。

が、当たる寸前に棍は半分のあたりから二つになり

地面に落ちる。


「見えなかったか・・・。私が」とテージョは

眼を閉じる。

右手に持った刀がテージョの首筋に添えられていた。


「参った。私の負けだ」と宣言する。


「勝者ジヴァニア」とアスティが言う。

私達はそれぞれ抱き合い歓喜する。


テージョは

「いい加減、首の刀をどけてくれ。

 握手も出来ないじゃないか。

 抱き合ってもいいぞ?

 というか・・・そうか、そりゃだよな。」


美香は気を失ったまま立っていた。


完全にとどめを刺さなかった私の驕りだ。

くそ、私もまだまだだな。と言うと


「それに降参するのが早かったな。

 我慢が足らなかったか。・・そう言えば

 ウォッカさんにも言われたっけ。

 我慢を覚えろって」と目を閉じる。


よっこらせっと、と言う掛け声とともに

美香を抱えると私達の方へ向かってくる。


「ほら、勝者のご帰還だ」というと

早く回復しろ。死んじまうぞ。と笑う。



あれは・・・何だったんだ。とアスティ。

あんなの初めて見たぞ。とも言う。


「ただの精霊召喚にゃ」とスコティ。

「だけど呼ばれた精霊が自分の意思で

 美香の刀に付与されていったにゃ」


「・・・それだけの話にゃ」と続けた。


「それだけって・・・。じゃあどうやって

 刀を動かしたんだ?」とアスティ。


そんな事、ここにいるヤツ全員するじゃない。

意識が無くても攻撃。とシャルル。


「特にあんたよ、あんたなんていつもじゃん」

とアスティの頭をポンポンたたきながら

笑いながら続けた。



「バーボン。・・・ジヴァニアをお願い。

 私には回復は無理だから」とウォッカ。


「任された!」とバーボンはジヴァニアの所へ

向かった。バーボンは美香に回復魔法をかける。

一時して

「こんなもんだろ、ってか頭蓋が割れてたぞ」

「俺の娘をこんなにしやがって、アイツ殺す」

と言ったところで

ウォッカ様に思いっきりぶん殴られた。


ウォッカ様はテージョの所へ向かう。


「負けちゃいました。

 いい所見せようとしたんですけどね!

 でも、何者なんです?あの女」


「なんか親しそうでしたけども!?」と

鼻息荒くテージョは言った。


私の娘だ、娘のジヴァニア。やっと会えたんだ。

「強かったか?私の娘は」とも笑いながら言った。


そりゃあもう、親友になりたいくらいに。

とテージョは言った。



決勝は明日の昼からだ。

マッカイ族対カティ族だ!

そして優勝者は私達と特別試合を行う。


アスティはそう言うと

手を叩きながら

「はいはい、撤収撤収」と言う。


よいしょっと。そう掛け声すると

バーボン様は美香を抱える。

「ジヴァニアの借りている家に運ぶ。

 お前は・・・ついてやっててくれ」と

バーボン様はウォッカ様に言った。


そして私達は全員退場する。



観客席で見ていたマッカイ族の族長と

爪使いのルエダは話をしている。


「ありゃどうやって勝つんだよ」と

族長。

「そうだなぁ・・・。どうしよう」

とルエダ。


まぁ開始突っ込むよ。それしかねえ。


ジヴァニアを残して全員速攻で落とす。

・・・先にソミュールを落とす。

それしか手はない。ともつぶやいた。


マッカイ族の杖使いの一人が

慌ててやってくる。


「明日のソミュール。あの杖は使えないそうだ。」

「いま決まったそうだ」と伝えた。


「お!キタコレ。相当楽になったよ」と

ルエダは真顔で、そして不敵に笑う。




カティ族控室


「まじか!なんでだよ!」とバローロ。

「いや、ペナルティを受けるのは当然だ」

と私は全員に申し訳ない気持ちで言った。


「じゃあさ、今までの試合も無効になるの?」

とリスボア。


「いや、それは問題ないそうだ。その時点で

 審判しない方が悪いと。」とダン。


よし、じゃあ作戦会議だな・・・。

あぁ、・・・作戦会議だ。

・・・あそこで、あの場所で。と全員。


美香は?と私が聞くと


「お留守番だ。母ちゃんとな」とガハハと親方。



そりゃそうだ。まだ意識が戻ってないし。







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