第18話 首都コトナリにて

赤の国は15の部族、領地からなる集合体

である。議長はその代表である。


5年に1度、部族間で行われる部族戦で

単純に勝利する事。

その間に毎年行われる対抗戦もある。

これは腕試しの意味合いが強い。


そして現在、部族戦にて4回、現在22年間

議長を務める部族トロッケン。

その族長がアスティである。


首都は議長のホームタウンがそのまま首都と

なる為に人の移動が頻繁に起きていた。

1度議長、首都になった場合の恩恵はすさまじい。


部族戦でも金や地位をたてに国中からツワモノを

集めることも可能であるからだ。


なので今回の対抗戦も現在の部族に属してはいるが

アスティの目にかなって取り入りたい者も多い。


その為に他族長は優秀な人材の流出を防ぐために

様々な特典等を準備するが、大した効果はない。

一度流出が起こると他のツワモノも部族を後にする。


そうして他部族は徐々に、金を失い、人材を失う。

だからこそ代替わりを行うのは相当の力と運を

必要とする。


今でこそ赤の国建国以来、

最大最高の首都となっているが

元々は辺境の地であり

当時の首都から相当遠い場所にあった。


そもそもアスティはこの土地で生まれた者でも

その時の族長の類縁でもない。

只の流れ者であった。そう・・・。

只の異世界転移者。


様々な幸運に近い出会いや出来事を経て

アスティは族長として部族戦に出る。


そして議長となりその辺境の地の街は

首都となる。



それがここ赤の国の首都 コトナリ


「なにこれ、すごい街ね。というより

 凄く人が多い。」と美香。


私達はまず借家を探す。

私達が望む借家はあったが・・・高い。

妥協しても今まで借りてきた家賃の2倍。


「もうメンドクサイから、これでいいわ」と

投げやりになった美香。

実は私もだった・・・。


荷馬車2台分の荷物を家に入れる。

親方とサモス、リスボアが

残りをするという事だったので

他の者は先に対抗戦の申し込みをする為に

内政事務局へ向かった。


「なにこの造り、向こうの世界の市役所みたいね」

と美香。市役所とは?と私が聞くと

「お役所よ、こっちでいう国の機関ね」


ダンは手慣れた感じで申し込みを行う。

「もうメンバーは変えられない。」と言うと

受付に渡す。


「そう言えば私の名前は美香でだしたの?」

と美香が言うと、

「そんなわけあるか。それ通り名じゃねえか。

 通り名でも出場できるのは議長の部族位だ」

とダンは言い、続けて


「お前、色々名前あるからな・・・。

 美香が通り名で、冒険者ギルドにはマガラ。

 そして身元保証書はジヴァニアだからなぁ。」


美香と私の身元保証書はバーボン様が

村を出る時に準備してくれたものだ。

何かしらの機関にお世話になる時には

それでなければ通用しない。


なので今回はジヴァニアで出場となる。

実際問題としてジヴァニアの方が好都合であった。

それの方が美香の母様が気づきやすい。


私達は適当に街を散策し、

いろいろと「おせわになる」店などを

探したりして、借家に戻った。



数日前 紫の国 首都ミネルヴァ


「おーい、バーボンさんに手紙だぞー」と

大声でファルツ。

「なんで布を腰にぶら下げてるんだよ。というか

 元帥が野良仕事してるんじゃねえ」とも言う。

結構、砕けた間柄になっていた二人。


「これはな、異世界で流行っていた手拭スタイルだ」

とバーボン様。そして手紙を受け取る。

「アスティからか。どれどれ・・・?」


読み終わると少し考え込み

「ジェニエーベル連れて外交してくる」と

手拭と鍬をファルツに渡した。


「ジェニエーベル!赤の国に行くぞ!」と声をかける。

教会の壁を補修していたジェニエーベルは作業を止め

腰の手拭で顔の汗をぬぐう。


「昼飯食べたら出るぞ。いいもん着とけよ。」

とバーボン様。


「リアスに護衛で連れて行くからって言ってて?

 コルンちゃん。」とも言った。


バーボン様はボソッとつぶやいたのを私は

聞き逃さなかった。

「久しぶりの親子水入らずだ・・・」

と確かに言っていた。


そして、昼飯の後3人は赤の国へ向かった。


同じ頃 ルナティアの部屋


皇女はアスティからの手紙を読み終えると

「ベルジュラック、残念ね。親子3人が

 対面するみたいよ?赤の国で。」


「こんな時に体悪くしちゃって。まぁ

 私があなたの感動を体験して来てあげるわ。」

と床に伏しているベルジュラックに言った。


「そりゃぁ、残念だねぇ。神様はとっても

 意地悪なんだねぇ」とベルジュラックは微笑む。


そうよ、神様は意地悪なのよ。だから早く

良くなりなさい。もっと意地悪してあげるわ。


とルナティアは言うと

ベルジュラックの手を取り額に当てる。


同じ頃 黄の国 13人衆のとある部屋


手紙を読むハジメ。

「うわぁ・・・。おれ、パス。なんか理由付けて

 欠席しよう。そうしよう、うん。」


そして現在の赤の国 議長室


「今先ほど、届け出がありました。

 カティ族で出場です。」と役人が

アスティに伝える。


「だそうだ。よかったな、娘との対面だ。

 姐さん、今すぐ面会の部屋準備しようか?」

と椅子に座り茶を飲んでいる女性に言う。


大丈夫。私から行くわ。とその女性は言うと

立ち上がり部屋を出ていこうとする。

しかし、扉に手をかけた所で手を止め、


「例の件は必ずだぞ?」と

何か念を押すようにアスティに言いう。


出て行ったのを確認してからアスティは

その女性のお茶とお菓子を片付けつつ


「まじで親子でやり合うのかよ・・・。まぁ

 見ものだからいいけどさぁ。」

とつぶやいた。

































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る