第17話 メンバー変更

ソミュールは魔法を放つ。


なんだこれ。杖でこうにも違うものか。

魔力を注ぐこともだが放つことさえ

楽だ。いや、楽と言うよりも考えただけで

自然と魔力を流せる。そして打てる。


それを全員に伝える。

全員拍手。


調子に乗ってバンバン撃ちすぎたが

全く疲れない。杖の魔法伝導性と

バフォメットのおかげでほんの少量の

魔力で済んでいるのだろう。


私達は再度冒険者ギルドへ向かい報告をする。

すると後ろから声がした。


「がんばるねぇ、ダン。引っ越しの準備しとけよ?

 お前の領地を合わせれば俺は

 この国で5本の指に入る広大な領地持ちとなる。」

と言うと、さらに


「前回同様、一回戦で当たりたいもんだ。ははは!」

「ん?またも魔法中心の構成か。お前学習しないな。

 参加することに意義があるってか?ウケる」

と腹を抱えて笑っている。


美香がキレると思ったら冷静に言う。

「本当に賭けは成立でいいのよね?

 ギルドに書類を作ってもらいお互いが

 サインをしましょう。契約よ」


そしてその男とダンは書類にサインを行い

契約が成立。賭けはギルド証人となった。


「ダン、よかったね。この国で5本の指に入る

 領地持ちとなるのよ?少しは感謝してね」

と美香は言うが、ダンはそれはもう項垂れて居る。


私達は借家に戻る。

今後の計画を話し合う。

親方の武器完成まで各々が鍛錬を行う。

それしかしない。という事になった。


計画も方針もへったくれもなかった。


そして依頼をこなしつつ鍛錬を行う。

リスボアの成長が早い。というよりも

凄い勢いで強くなっている。


動きは独特だ。

多分美香を見て覚えているのだろう。

しかし、剣士の基本があるので

美香ほど苛烈な動きではない。


よくよく見ていると片手剣を両手で

振るっている。片時も離さない。

必ず両手での攻撃。


これの方が受けもやりやすいんだよ。

とリスボア。

彼は彼なりに考え戦闘をしている。

時折、美香の動きを見ながら

まねごとをする。


なるほど、成長が速いわけだ。

彼は優秀だ。


ダンも美香に教わった攻撃のやり方を

実践している。


何か動きがいちいちカッコいい・・・。

向こうの世界の何かだろう。


私も薙刀を訓練したいがこの杖で

魔法を放つのが楽しい。


時折、薙刀を持ち魔獣を切りつける。

私は思う。最悪、魔法が使えなくなった場合のみ

これを使おうと。


それほどまでに今は魔法が、魔法士として

攻撃することが・・・楽しい。


そして10日目の夕方を迎える。

親方は説明する。


刃渡り80センチ。前回のより長い。

刃の部分のみ超硬度にしてある。

前回のよりも幅を取った。しかし若干薄い。

素材的に問題ないと思う。

可能な限り軽くした。握り手の部分は

少し変形させてある。

・・・俺が打った武器の中でも屈指の完成度だ。

おまえの母さんのヤツよりも出来がいい。

保証する。


サモスの手袋は、板の部分を約倍の厚みにしている。

その分支柱も太くした。


ダンの鎖鎌、刃の部分はソミュールと同じ刃だ。

そして鎖は細く長い。鎖を巻き取る部品もつけてある。

歯車にばねを付けて軽く引くと巻き取れる。

鉄球は超硬度だ。バナジン鋼をふんだんに使った。


バローロの槍は三つ又にした。3本の穂先の間で

剣の刃を受けることができる様に返しもつけた。

それに時間はかかったが納得の出来だ。

巻き込んで折ることができる。その為に

これには少しアースドラゴンの糞を使った。

まぁ少し余ったからな。


もう鉱石も素材も使い切った。

店じまいだ。ガハハと親方は笑う。


親方のハンマー無理だったのね。と美香。


いや、俺はやっぱり弓でいい。

お前からジェニエーベルの話を聞いて

俺も弓で、弓を鍛錬することとした。

と答えた。


そしてこの街での最後の宴会


「今日はカティ・サークレットは無いよな!」

とバローロ。全員が笑う。


あるかもよ?と私は冗談を言いながら

一気飲み。


全員の楽しい時間。

訳もなく笑い、訳もなく泣く。


こんなにも仲間が増えたのかと、私は思った。



そして翌朝、私達は首都へ向かう。

首都までは長い。


道中にいくつかある街に立ち寄り

冒険者ギルドで依頼をこなしたりする。

買い物もしたり、居酒屋に行ったり・・・。


ある意味、時間調整と言ってもいい。

ある時、依頼が終わりその街のギルドに

戻る途中にサモスが言う。


なぁ、メンバー変えないか?と。


「俺は武闘家も楽しい。しかしリスボアを見て

 感じたんだ。俺はこの武器がないと強くない。

 代表はリスボアがいいと思う」


リスボアは目を丸くしてサモスを見る。

「サモス兄!おれはまだ弱い!サモス兄のほうが

 強い!」と。


「リスボア、謙虚な心はいいことだ。しかし、

 それは謙虚とは違う。多分、ここに居る全員が

 思っている。お前は凄い速さで強くなっていると。

 そして・・・強いと。」


親方は言う。

「俺もリスボアを代表にすべきと思う。

 今回はダンの領地がかかっている。

 強い奴を代表にすべきだ」


そしてダンが言う。

「メンバを変更する。サモスに変えて

 リスボアを入れる。本当は俺が抜けるべきだが

 残念ながら、族長は指定枠だ。すまん・・」と。


私が抜けようか?魔法使いだし。と私は言うと


「一回の戦いだけであれば、キルビーとだけなら

 それでもいいけど、私達は優勝を目指すのよ?

 ソミュールは絶対に必要よ」と美香が言う。


いつの間にか、母様に会うという目標が

優勝すると言う目標に代わっていた・・・。


そして代表は

美香。ソミュール。ダン。バローロ。リスボア。

と決まった。



何気に構成はいい。表向きの構成は・・・。


そして私達は首都に入る。



















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