第39話 ダン対エルセブン②


俺は思う。

「その1個は当たりなのか?実は

 ハズレなのではないか?」と。

おれは引き運が弱い。


それが当たりならば引かない。

それがハズレならば確実に引く。


「そうか!選ぶんだ!それを!

 当たりだ!必ず!と思おう・・・。」

つい声に出してしまった俺。


バーボン様とエルセブンさんが俺を見る。

「バカなんじゃないか?こいつ!」と言う目で。


長引きそうなのでお互いに椅子が準備された。

エルセブンさんは座りながら俺の行動を

観察していた。


「絶対にこれだ!」と俺は選び口に入れる。

「あ、まじ旨い。リスボアすげえ」と。


「セーフ!」とバーボンさんは言う。

そして俺は座りエルセブンさんの出方を

見る。


一瞬!刹那の速さで取り口に入れる。

「うん。甘いの大好き」とも言う。


「セーフ!」バーボン様の声が響く。

俺は驚いた。そう、俺と真逆の作戦。

なるほど、エルセブンさんは引きが強い。

と俺は確信した。


俺の番。

「セーフ!」とバーボン様。

エルセブンさんの番。

「セーフ!」とバーボン様。

俺の番。

「セーフ!」とバーボン様。


残り4個となるが

エルセブンさんは立ち上がると団子も見ずに

手に取り口に入れる。

「お茶が欲しいな。口の中が

 甘ったるい」と言いながら座る。


「セーフ!」とバーボン様


ここで水入りとなった!

俺も茶をすする。残り3個・・・か。

引き運の強い女と

引き運の弱い男の戦い。


俺は立ち上がり机の前に出る。が、

甘いものの取りすぎで少しめまいがし

机に体が当たってしまった。


「す、すまない。」と謝罪する。

エルセブンさんは「気にするな」と。


俺は選ぶ!選んでやる!

ウォッカ様の生手で捏ねられた団子を!

そう!レアだ!多分、この世で一人しか

味わった事のないウォッカ様の

生手で捏ねられた!団子をっ!


バーボン様以外にもいたかもしれない!

しかし、多分・・・確実に死んでいる!


「本望だ。おれはウォッカ様の作った

 団子を食べられるなんて」と言う。


ウォッカ様が照れていたのが

ちらっと見えた。

そして!1個を取り口に入れる。


「ちくしょう。甘いじゃねえか」

「セーフ!」とバーボン様の声


勝負の行方はエルセブンさんの選択に

ゆだねられた。


エルセブンさんは椅子から立ち

いつもの速度で団子を取ろうとする。が!

問題発生。


なんと俺が机に当たった瞬間に

団子の場所がズレ、エルセブンさんの

手が空を切る。


「あれ・・・」と言うと、ついに

エルセブンさんは2個の団子を

・・・見てしまった。


沈黙が流れる。


「・・・ヤバい。どっちかな?と

 思ってしまった・・・。」と呟く。


何度も言うが私は引きが強い。

であるならば・・・。

ウォッカの作ったモノが

当たりならば確実に手に取る。

・・・はずだ。


それがハズレならば・・・。

「いかん、もうわからん。

 ちんぷんかんぷんだ」


「もうこれでいいや」と口に入れる。

そしてモグモグしながら椅子に座る。


幾度目かの沈黙が流れる。


「あ、味はどうなのだ・・」全員が

エルセブンを見る。


残り2個の戦いだったのだ。

・・・そりゃ引っぱる。

俺だって引っぱる・・・。


エルセブンがほほ笑む。そして

シャルルを呼び何故か鎖鎌を渡した。


「お前に・・・貰ってほしい」というと

微笑みながら下を向く。

両腕を膝にのせて。


エルセブンの体が一瞬で白くなる。

そして何か天から光が伸び、体を照らす。


「いかん!」とバーボン様は言うと


立てぇ!立つんだぁ!エルゥゥゥ!


と涙を流しながら叫んだ!と同時に

「回復だ!早く!急げ!」と言うと

超極大魔法陣を描く。


俺もスティックを持ち回復魔法を唱える。

この闘技場に居る回復魔法士は呪文を唱える。

そうでない者は手を前に組み祈る。


7分後


「ここは?・・そうか。

 私は戻ってこれたのだな」と

エルセブンは言うと、続けて


私は気が付くと魚になっていたんだ。

そして桃色サンゴたちが私に手を振る。


ふと見ると目の前においしそうな物があった。

それが何かはわからないが、兎に角・・・

おいしそうだった。


私はそれを食べたよ。そしたら

何かが私の唇に刺さり、よく見ると

それには糸がつながれていた。


そう、私は釣られてしまったのだ。

私はもがくが、じりじりと水面へ

引っぱられる。


水面から人が竿を持って格闘しているのが

見えたよ・・・。

あぁ、そうか。私は釣り上げられるのか。

そしてあの人は私をおいしそうに食べるのか。


そう思った瞬間に、太古の竜が後ろから

やってきて言うんだ。


「選べ」と。

釣り上げられて人間に食われるのか、

それとも私に食べられるのか。と


私は太古の竜に食われることを拒んだ。

そう、私は太古の竜を必ず釣り上げる。

お前は私のライバルだと言ってやった。

そして釣り人は私を海の中から

釣り上げた・・・。


と、いうところで目が覚めた。


全員が涙を流しその話を聞いていた。


私はエルセブンさんに近づき

拳を突き出す。

エルセブンさんも拳を突き出し

お互いがガッチリと拳と拳を合わした。


会場から割れんばかりの拍手。

ある者は歓喜し、ある者は泣いていた。


俺はふとエルセブンさんの口を見た。

唇には針で指したような跡と、少し

そこからにじむ血が見えた。


「まじか」


勝者 ダン!とアスティ様が宣言した。


カティ族 奇跡の2勝目

そして特別戦勝利まであと1勝!


興奮冷めやらぬ会場


そして私達が望んでいた1戦が

始まろうとしている。


ジヴァニア対ウォッカ

親子の対決


ウォッカ様は言う

「全力で来なさい」と微笑みながら。


ジヴァニアは言う

「もちろんよ!」と声を弾ませ。


ウォッカ様は二刀流で構える。

ジヴァニアは何と1本を構える。



全員が開始の銅鑼が鳴るのを待つ。























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