第40話 親子の戦い①
美香は思う。
「二刀流では勝てない」
「ただ見せるだけならば
それでもいいけど、でも私は・・・
勝ちたい」と。
美香は銅鑼が鳴る前にすでに構える。
決勝で使った居合の構えだ。
ウォッカはただただ、2本の剣を持ち
そこに立っている。
そして開始の銅鑼が鳴る
同時に美香は目を閉じ大きな声で言う。
「大地の精霊よ!魔方陣を描け!」
「風の精霊よ!この体に纏え!」
「炎の精霊よ!この刀に力を!」
「水の精霊よ!道を作れ!」と。
しかし精霊は答えない。
美香は再度同じ事を繰り返し言う。
しかし、精霊は答えなかった。
「な、なぜ・・・。」と動揺する美香。
「すまんな、私が居るからだ」と
何色ともいえないオーラを纏いながら
ウォッカは言った。続けて
「私が命ずる。ここにいる精霊達よ、
ジヴァニアの力となれ」とも言った。
「母からの贈り物だ。遠慮するな」
と何かを見下すように言った。
「おいおい、あれがさっきまで美香と
イチャイチャしていた人かよ」とダン。
「あら、ウォッカ本気じゃん。半分くらい」
とシャルルが言うと
「あたりまえにゃ。娘の期待に
応えるつもりにゃ。」とスコティ。
これがお前の母である、と。
「ありがたくいただくわ!」と美香
どんな手を使ってでも勝つ。
勝てるなら、勝つ可能性があるならば、
敵が送った塩でも平気で舐める!
ありがたく舐める!
「そうだ、それでいい。勝つためには
なんだってしろ」と
表情を変えずウォッカ様は言う。
しかし剣は構えない。
「まさかウォッカはあなたみたいに
わざと負けるつもりじゃないわよね?」
とシャルルはスコティを見ながら言う。
「それはないにゃ。いくら手加減をしても
ウォッカが勝つにゃ。というよりも
美香にゃんは勝てないにゃ」とスコティ。
「それ、一緒じゃないの?」と聞き返すと
「違うにゃ。全く違うにゃ」と答えた。
美香は再度精霊を呼び出す。
魔方陣が現れ、体に風が絡みつく。
そして刀に炎が纏う。
そしてお互いを結ぶ道が出来る。
美香は刀を振る。
その残像が炎の刃となりウォッカへ向かう。
しかしウォッカは避けようともせず
右腕に持った剣をその炎の刃を切る様に
動かした。
そして、炎は立ち消えた。
「おいおい、なんで切れるんだよ。
私の時は無理だったぞ」とテージョ。
「そりゃあ、あんたが弱いからよ」
とチェスキー。
美香は再度残像を放つ。
しかし、ウォッカの前で霧散する。
「小手先の技ばかり使うな。打ってこい」
と美香に向かって言う。
美香は「だよね!」と一旦、刀を
置き、顔をパンパンと叩く。
「そうよ!私は突っ込んでナンボよ!」
とほっぺを腫らしながら言う。
左足を前に、両手で刀を持ち
右斜め下に構える。
「それでこそ私の娘だ。いい構えだ」
と言うとここで初めてウォッカは、
剣を構える。
左の剣を顔の前に、右の剣を
美香と同じ位置に。
美香が突っ込む。と同時に
刀を下から上へ。
ウォッカは体を少しひねり
左の剣ではなく右の剣で美香の刀を弾く。
お互いの剣が弾かれ体の前に空間ができる。
強く踏み込み密着する。
ウォッカは水月への攻撃と思い
左の剣で刀の握り手に合わせようとする。
が、美香は近距離のまま再度、刀を振る。
しかしウォッカはその攻撃を左の剣で
器用に合わせた。が、
「ぐっっ・・」と言う声がウォッカの口から
漏れた。
体を少しよじり、美香が思いっきり
蹴とばしていた。
「なめんなよっ!」と美香は言うと
刀を持ったまま何か挑発するような仕草を
腕でとり、ウォッカに向ける。
ウォッカの眉毛がピクリと動く。
「おもしれえじゃねえか、この小娘が」
とウォッカは言うと
今度はウォッカが踏み込む。
美香は振りの大きい左手の剣のつき上げを
体に当たる寸前でよけた。
・・・つもりだったが避けたはずの剣は
突っ込む前と同じ位置で構えられており
右の剣の横なぎを体に受けていた。
「ぶぐっ」と声にならない声を
発する美香。
ベルジュラックの装備ではなかったら
体は2つになっていたであろう。
「寝ぼけて夢でも見てるんじゃねえか?」
とウォッカはケケケと笑いながら娘に言う。
美香の眉毛がピクリと動く。
口から血をペッっと吐くと美香は
「てめえは団子でも捏ねとけや!」と
言いながら突っ込み
むちゃくちゃに剣を振る。
兎に角むちゃくちゃだ。そして早い。
むちゃくちゃすぎてウォッカは
若干避けるのが遅くなっている。
気が付くといつの間にか美香は
左手だけで刀を振っており
右手にも刀を持っていた。
「年なんだからそこでじっとしてろ!」と
ウォッカの左足の甲に刀を突きさす。
と同時にぐっと深く押し込む。
そのまま抜き去り、
距離を取ろうとする美香。
しかしウォッカは
刺さった刀を抜こうとする
美香の手を押さえ、
膝蹴りを美香の顔に叩き込む。
ひざは美香の横っ面に直撃し
少し腫れていた頬がさらに赤く腫れた。
「なんだ化粧でもしてるのか?
赤くなってんぞ?ん?厚化粧だな。
ガキのくせに色気づいてんじゃねえ」
とウォッカ。
両者の眉がピクピクしている。
「こ、これはなんか、アレだな」
とバローロ。その声に全員が言う。
「ああ、あれだ。なんかもう
只の親子げんかになりつつある」
シャルルは言う。
「あら、面白くなったわ。ウォッカの
闘気が少し薄れちゃってる」と。
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