第38話 ダン対エルセブン①

中堅戦の前に小休憩が挟まれる。


も、もしかしたら勝てるんじゃないか?

とダンは思う。


い、いや。さすがにそれはないだろう。

しかし・・・。この世には

絶対と言う言葉はないはずだ。


考えろ、俺。このエルセブンという

ちょっとかわいい男子っぽい顔つきの

ツワモノに勝つ方法を。


考えろ、俺。この少し幸が薄そうな、

この顔つきのツワモノに勝つ方法を。


そして俺は思いつく。このツワモノに

勝つ可能性がある方法を。


しかし、諸刃の剣。下手すりゃ俺は死ぬ。

というかエルセブンさんも死ぬ。


い、いや、大丈夫だろう。さっきの

ソミュールの攻撃でも死人は出ていない。

バーボン様のおかげで。


・・・多分、今回も。

しかしどうやって持ち込めばいい。

その戦いに・・・。


見ろ、観察しろ、俺。

ん?先ほどから何を見ているのだ。

俺の斜め下辺り?


もしかしてこれか?と私は右手に持った

鎖鎌を上にあげた。


するとどうだ!

エルセブンさんの顔と視線も

上に行くではないか!


今度は左手に持ち替えてみる。

なんと!追従するように動いている。

私は鎖鎌を足元に置いて3歩横に動く。


確実だ。確定だ!

この人は鎖鎌に興味を持っている!

よく見ると凄く物欲しそうな顔ではないか!


私は美香に向かって言う。

「なぁ、この鎖鎌はもう俺のモノだよな?」


美香はうんうんと頷く。


「だったら俺の自由にしてもいいんだよな!」

とダンが言うと、美香は再度頷く。


俺は覚悟を決める。そして言う。


ちょっとエルセブンさん。提案があるんだが。

この鎖鎌あげましょうか?と。


エルセブンさんは私を見ていない。がっ!

少し眉毛がピクリとしたのを私は見逃さない!


ただ、あげる替わりに勝負の方法を

変更したい!


エルセブンは言う。

「ほう、それはどういった勝負だ」と。


乗ってきたではないか!

そして俺は覚悟を決めて言う。


「カティ・サークレットだ」と。


おれはやり方を説明する。

目の前に10個の団子がある。

その中に一つだけ「当たり」がある。


団子を交互に1個づつ食べ合っていく。

そして「当たり」を食べた者が敗者だ。


リスボアが叫ぶ!

「ダン!だめだ!未来に・・・

 託すんじゃなかったのかよっ!」と。


エルセブンは言う。

「その当たりは自己申告か?とても

 まずいとか」と少し笑いながら。


俺は少し間を開け言う。

「美香とウォッカ様が作った団子。

 それが当たりだ」


「死ぬじゃねえか!」


と凄い反応速度でエルセブンは言う。


と同時に2か所からデカい石が飛んできた。

俺の後頭部と腹に直撃した。


俺はエルセブンさんに言う。

「あぁ、怖いですよね?

 すみませんすみません。」


「当然ですよね?怖いですもんね?

 当たり引いちゃうの」とも続ける。


更に

「聞かなかったことにしてください。

 まぁ私は?幾度となく

 死線を潜り抜けていたから

 つい提案してしまいました。」


「怖いですもんね?わかります。

 わかりますとも」と追い打つ。


エルセブンの眉毛がぴくぴくと動く。

そして言ってしまう。

「やってやる!なめるなよ!?小僧が!」


俺はリスボアに言い、封印されし小箱を

取ってくるように言う。


一時して封印の小箱と机が用意された。


俺は厳重に幾重にも、重ねられた

幅広テープをはがすと、

中から白い団子が現れる。


それを机に、横一列に並べていく。


「まず確認してくれ。どれもこれも

 全てが同じ形だ。しかしこの中に

 形だけが同じで全く別の、そう、

 謎の何かが混ざっている」とダン。


まず互いに後ろを見て順番を変える。

ズルしていると思われたくないからな。


安心しろ。バーボン様すら外見では

普通の団子と認識していた。してしまった。


いつの間にか立会人となっていた

バーボン様はエルセブンに向かって

右の手を大きく広げ


「5分だ。おれはそれを食べて

 呼吸をしていない。その間、謎の

 知的生命体と会話していた。」


 「この世界に戻ってこれたのは

  愛と言う名の絆。・・・奇跡の力だ」

と真顔でエルセブンさんに言った。


「お、お前ほどの男が・・・。

 それほどまでの破壊力なのか」

とエルセブン。


「違う。生きとし生けるものが・・・

 抗う事の出来ない、絶対的暴力」

とバーボン様。


バーボン様に岩が飛んでいた。


「これは先行が有利な戦いです。

 提案したのは俺だ。先行はそちらで

 結構です。」とダンは言う。


「もしも、最後の1個まで残ったら

 お前は口に入れるのか?」

とエルセブン。


ダンは言う。「当たり前だ」と。

「お前は漢だな。」とエルセブン。


そしてお互いが背を向け位置を変える。

位置を変えつつエルセブンは思う。


「本当にこの中に星を破壊するほどの

 力を持つ何かが混ざっているのか。

 外見では全くわからんな」と。


そしてダンも混ぜる。

「まじでわからん・・・」と言いつつ。


そして中堅戦の開始の銅鑼が鳴る


先行のエルセブンは目を閉じ思う。

「私はどちらかと言うと引き運は強い。

 太古の竜を釣ってしまうほどに。

いや、釣り上げてはいないが。」


「であれば、当たりを探し、

 それを残せばよい。い、いや待て。

 当たりと言う名に騙されてはいけない。

 それはハズレではないのか。」


「どっちだ、当たりなのかハズレなのか」

「いかん、もうわからん。」


そして目を開け適当に手に取り口に入れる。

そして言う。


「なにこれ甘いしおいしい」と言う。


セーフ!というバーボンの声が響く。

「なぜわかるんだ?バーボン」とエルセブン。



「それは甘いとか苦いとか。そんな

 この世にある言葉では表現できない。

 そんな存在だ」とバーボンは言う。

















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