第48話 下種な小物

アスティは扉を開けず剣で斬る。

斬られた直後爪を付けた腕でルエダは

扉をぶち破るとそのまま突っ込む。


2~3回、転がりながら入るルエダ。

そして高く飛びあがり天井の柱の上で

戦いの姿勢を取りながら下を見、

すぐに飛び降り3人の男を爪で斬り倒す。


残るは4人だ。と言うと

アスティがフラフラと剣を片手に歩む。

そして4人が吹っ飛ぶ。


1人に剣を当てアスティが言う。

「二人をどこにやった」と。


男は目をそらし黙っている。

「議長さんはぬるいなぁ」と言うと


ルエダは爪を男の脛に押し当てると

力を少しずつ入れて押し込む。

ゆっくりと爪を上下に動かしながら

足の骨を削る様に慎重に押し込む。


爪が3センチほど入った所で

男は激痛に耐え切れず言う。

「ポ、ポルスカだ!荷馬車に乗せて

 向かっている!」と。


ルエダはそれを聞くと腕を回転させ

男の足をそのまま折る。

男は声にならない声を発し気絶した。


「他は全員縛った!」とリスボア達。


「お、俺達は族長に言われてやっただけだ!

 まさかアスティ様も来るなんて・・・。

 聞いてないぞ!」と他6人。


「な、なんでもいう事聞くから助けてくれ」

とも声を合わせて言う。

ルエダの拷問が強烈だった証である。


縛った男に話を聞く。


キルビーの族長 ピスコが

美香に負けて領地を失う。その為に

黄の国に行こうとするが、どうしても

復讐したい。


その為に親方とサモスを

人質にしてから美香を呼び寄せ

色々なんやかんやして、

あんな事もして、こんな事もして。


「もういい、そのピスコは荷馬車で

 親方と一緒にポルスカに向かっているのか?」


そうアスティは言うと外に出て笛を吹く。

一時して警備兵がやってくると


「早馬を準備しろ、5頭だ」というが

リスボアは馬に乗ったことがないらしく

ルエダと一緒に乗る。


「下種の考える事ね。

 まぁ出来ると思っているから

 下種なんだけどね。女の敵は殺す。」

とルエダ。


馬が到着すると全員が乗る。

そして一気に駆ける。


「多分すぐ追いつくぞ」とアスティ。

「何故そう思うんです?」とバローロ。


「計画が雑だからだ!適当すぎて

 行き当たりばったり過ぎて

 つまらん!」とアスティ。


小一時間ほどで荷馬車が見えた。

アスティは荷馬車に近づき

「検問だぁ、」とニヤつきながら言う。


リスボアは荷台に飛び乗ると

親方とサモスを縛っている綱を斬ると

「確保だぁ」という。


なるほどなるほど。ピスコは先に

馬で走っていったか。

で?どこへ向かうと?とルエダ。


じゃポルスカにずっと待たせておけ。

と笑いながらアスティ。


いいんですか?とダン。


いいもわるいも、金目の物を

持ち出して一目散に黄の国に行くだろう。

追っかけるだけ無駄足だ。とルエダ。


まぁそうだな。さて帰るぞ。とアスティ。

親方とサモスが手綱をにぎり

3人がぐるぐる巻きにされ荷台に。


「いやぁ助かったよ」とガハハと笑いながら

親方が言うと

「後ろからガツンだからな」とサモスも笑う。


「すまんなリスボア。お前の剣は直ったが

 多分もう飾り物にしかならない。」と

親方はリスボアに言うが


リスボアは腰の剣をパンと叩き

「大丈夫・・・じゃないけど大丈夫。

 その剣は婆ちゃんに返すよ」と。


そう言えばキルビーの領地は本当に

お前のモノになるのか?とダンに聞くアスティ。


「いえ、美香にやろうと思います」と返すと

アスティは少し考え


「いや!だめだ!おまえでいい!いま決まった。

 俺が決めた。ジヴァニアを族長とは認めない!」

と焦りながら言った。


何故です?とバローロ。

「いいか?よく聞け」とアスティ。


ジヴァニアが族長となるとだな、

明らかにバーボンとウォッカはアイツいつく。

するとだな、その取り巻きもだ。

・・・どうだ。3年後の議長の誕生だ。


ジヴァニアが議長になって見ろ。

・・・この国は。


「滅ぶ」と全員が言った。

ダンで手続きすることと決まった瞬間。



この時全員が気づいていなかった。

この下種な小物を取り逃がした事の意味を。




ウォッカの話を聞きながら涙を溜める

ジェニエーベル。


「で、ではそのまま母さん、いえ

 ミネルヴァさんは私とあっちの世界へ。」

と言うと


「母さんと堂々と言ってやれ。

 いいじゃないか、母さんが二人いても」

とウォッカは言う。


精神腐食。ウォッカの両親が

命を懸けて撲滅させた流行り病。


人によって少し症状は違うが

ミネルヴァの場合は精神退行のはずだ。


とウォッカは言う。

そのまま妖精の里に残り治療を

するように私とエルピスは言ったが

聞かなかった。


この里に被害が少なからず及ぶと言って。


ある程度の薬を持たせ、向こうの世界の

治療に望みをかけて送り出した。


「いつからだったんですか?」と

ジェニエーベル。


多分、紫の国が進行を受ける2~3年前

位だろう。


「そうかだから日記をつけていたんだ」

とジェニエーベルは思うと続ける。


「いま、ウォッカさんから聞いた話。」


私を守るために道で倒れ、しがみ付いた

足がウォッカさんの足。


勿論、ウォッカさんはサンテミリオン王女

から依頼を受けて追いかけていた。


そして3人は精霊の里から妖精の里に渡り、

交換条件としてエルピスの提案を受ける。


それを、その提案、依頼を完遂し

確実にバーボンのいた世界へ転移する。


「ミネルヴァは日記をお前に渡して

 るんじゃないか?私といる時にも

 毎日書いていたくらいだ」とウォッカ。


「はい。私が紫の国が首都を、

 首都ミネルヴァを完成させたら読もうと

 思っています」とジェニエーベル。


「いつ読もうがお前の勝手だ。でも

 早く読んでやれ」とウォッカ。
























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