第49話 行きたい場所

「すまんな、遅くなった!」と

笑いながら親方とバローロ。


「さて、話も終わったし私は少し

 行かなければならない所があるので

 そろそろ出発する。こうみえて

 忙しいんだ」とウォッカは席を立つ。


「母様!また会えるよね!」と美香も

立ち上がり言った。


「当たり前だろう?颯爽と登場するよ」

と抱き着いてくる美香の頭を撫でるウォッカ。


そして扉に向かいながら

「ジェニエーベル。強くなれ」と言う。


そして出ていく。


「姐さん、もういいの?

 まだゆっくりしていけばいいのに」

と外で待っていたアスティ。


「色々手伝ってくれて礼を言うよ。しかし

 結構、顔出していないので戻るよ」

とウォッカは言うと


「ガキどもによろしく言ってくれ。」

とアスティは金貨の入った袋をウォッカに渡した。

ウォッカはそれを受け取ると

「謎のおじさんがまた贈り物送ってきたとでも

 言っとくよ」と笑いながら何処かへ。


「ウォッカさんって・・・いつもは

 何してる人ですか?」とルエダ。


「只の保母さんだよ。孤児たちのな」と

言うと、さて俺達も行こう。と

リスボアとルエダに言う。


「戦う保母さん・・・。」

かっこいいな、とルエダ。そう言うと


「ダーリン!ごめん!

 私ウォッカさんと行くよ!」と。

そう言うとウォッカを追っかけて行った。


が、振り返り

「ダーリンが窮地になったら颯爽と

 登場してあげるから!」と。

そして走っていった・・・。


「あらま、これはどういった展開だ?」

とアスティはリスボアに聞く。


「わかんないです。全く。」と。


15歳の少年の甘酸っぱ・・・くもない

いきなりダーリンにされ、いきなり

チュッチュされ、いきなり何処かへ

行った女性との・・・経験であった。


各々が各々の道を歩く。全員が

全く違うその人だけの道を。

誰も通ったことのない道を。



ご飯でも食べにいく?と美香。

いく。と残った全員。


そして昨日の居酒屋の隣にある

定食屋へ入る。


6人は空いてる席に座る。


「おい、聞いたか?昨日の夜

 怪物が隣の居酒屋へ2匹現れたそうだ。」


「お、知ってる。偶然いたアスティ様と

 バーボン様が取り押させたそうだ」


という、噂話で持ちきりだった。

全員は下を見ながら黙々と食べる。


「ところでダン達は?」と美香は聞くと

「帰るよ。領地に。それとキルビーの

 領地も俺のモノになったんで少し忙しいよ。」


「バローロに取りあえず

 そこに行ってもらうことにした」


「アスティ様が俺に管理してほしいんだと」

とダンは食べながら言った。そして


「美香は・・・族長とか興味はないのか?」

とも付け加えた。


「あるわけないじゃない。めんどくさそう。」

と何かをホフホフし食べながら言った。


「なあジェニエーベル様。」と親方は言うと


俺とサモスをあんたの街へ

連れてってくれないか?仕事はする。

どうだ?と。


「もちろん歓迎です。それとジェニでいいです。

 子供たちにもそう言われていますし。

 もうみんなジェニ様ですよ。名前が長いって」


「あ、こんな時には様はつけないでいいですよ?」

とも続けた。


そして食べ終わると一旦借家に戻り

荷物を荷馬車に入れる。


「長かったようで短かったわね」と美香。

「あぁ、そうだな。」とダン。


二人は拳と拳を付き合わす。


「じゃあまたね!」と美香は言うと

「あぁ!まただ!」とダンも言う。


「そろそろ行きましょうか」とジェニ。


親方とサモスが手綱を握り

美香とジェニは後ろに座る。


そして親方は手綱で馬をあやつり

馬車は出る。


道中、他愛のない話をしながら

馬車は走る。


「ところで弓の腕前とか鍛錬が

 すごいんじゃないの?あ、でも

 ほとんどのスキル使えるんだったけ」

と美香は言うと親方の耳がピクリとする。


「ジェニが対抗戦に出てたらどうなったろうな」

とサモスが言ってしまう。


「はは、俺は出れないよ。立場的に」と笑う。


「美香的に、美香の想像では

 どれくらい強いんだ?俺たちのジェニ様は」

と親方も聞いてしまう。


「確か何かの戦いでフェイルノートを持った

 人と戦ったのよね」と美香。


親方とバローロは吹き出す。


「あぁ、俺も異世界で生活してて。

 まぁ仮想空間での戦いですよ。

 コロッセウムでずっと2~3位でした」

と少し自慢げにいうジェニ。


まぁ弓の部門での話なので

総合的にはわかりません。とも続けた。


そういった話をしながら、笑いながら

時折騒ぎながら走る。


「帰りに寄りたい所があるんだ」と

ジェニは言う。

「国主が言うんだ。断れないな、」と

親方は言うと、どこに?と聞く。


以前、紫の国にあった公園。

「あ、若木のタクトを手にしたところね」

と美香は言う。


「そうそう、そこ」とジェニ。

「なにかするの?」と美香は聞くと。

「いや、単に行きたいだけだよ」と笑う。


その公園の名前は

「サンテミリオン公園」

ジェニエーベルの母の名前を冠した公園。


「というかなんか筋肉ついてない?」

とジェニの二の腕をもみながら美香。


「もうずっとツルハシとか鍬とか

 振ってるしね」とジェニは

二の腕にこぶを作る。


「おいおい、国主がそんなことするのかよ」

と親方。


「うちの元帥はさせますよ。そりゃあもう」

と言いながらも、まんざらではない。


「みんなで一緒に作っていると実感するんだ。

 与えられたものではなく自分で作るからこそ

 本当の国主となるんだ、って。まぁ

 バーボンさんの受け売りだけどね」と笑う。


本当にそう思うよ。とも言う。

そう言えばユキツーは?と聞くと


「アスティさんに直してもらうの。

 直ったら飛んでくるんじゃない?」と

美香は言うと


「ただじゃ申し訳ないのでフィギュアを

 1体渡したわ」と。



「どれだけ持ってきてるんだ」とジェニ。












 





 




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