第3章 最終話 平等とは

ジェニエーベルはボォォっとする。

すでに2時間がたっている。

切り株の上に座り。


「おいおい、ひでえな、ここ。」

と親方はジェニエーベルの横の

切り株に座る。


「美香たちは?」と聞くと

「バローロと食事の準備をしているよ。

 安心しろ、美香は火を熾してる」と

ガハハと笑う。


「これ青の国の兵隊がやったのか?」と

親方が言うとジェニエーベルは答える。


「違いますよ。人間です。」と。


「なるほどな、そりゃあ精霊と妖精様に

 嫌われちまうな」と親方は言う。


「前に来た時はもっと暗かったんです。

 でも今見たら俺・・・」というと

口をつぐむ。


そろそろ食事ができるぞ。と親方は

立ち上がり言う。


「人間・・・か。そうだな。人間だ。」と。


「あ、親方。今日はここに泊まります。

 夜にフランゴを生け捕りにして、

 そうですね。20匹ほど。」とジェニ。


それを飼育する。とも続ける。

そして二人は美香たちの所へ戻る。


「美香さん、夜にフランゴを生け捕りに

 して持って帰ります」と言うと

美香は面白そうね、と言う。

「それも父様の発案?」と美香は言うと


「いや、俺。何気に卵が高いこと知った。

 飼育をして、卵を産ませ、そして

 売ったり食べたり。」


「バーボンさんも賛成してくれた。

 飼育として事業にすれば雇用も増える。

 いざと言う時には食べられるしね」と

ジェニエーベルは笑いながら言う。



じゃあ今晩の為に沢山食べときましょう。

と言うと美香も笑う。



翌朝 首都へ向かう一行


首都に着くと一人の幼い子が

ジェニエーベルに近づき言う。

「おかえりなさい!ジェニ様!これ、

 作ってたの。渡すために」と。


そしてお花の冠を渡す。

「ありがとう。大切にするよ」と

ジェニは言うとその子の頭を撫でる。


ジェニエーベルは誓う。

「この小さな純粋な子供でさえ、

 大人になると心が変わる。当たり前だ。

 人は成長する。しかし、その過程で

 正しいことを正しい。悪いことは悪いと

 言えるようにするのが俺の役目だ」と。


「しかし、悪い事。あちらの世界では

 ルールがある。規則がある。破った者は

 罰則がある。しかし・・・。

 こちらはそういったものが少ない。

 俺にできるのだろうか・・・。」とも思う。


美香はあたりを見回し

「結構、進んでるのね。というより

 整地も終わって建物も出来てるし。」

と言うと、ジェニエーベルは


「そうだね。こっちには魔法があるから

 便利だよ。今後そう言った方での

 魔法使用が普及するといいな」

と言うと続ける。


「今後は殺傷目的だけの魔法には

 したくない。だから魔法の使い方を

 考えて、それを実践したいなぁ」と。


「何故、今の魔法使いはしてなかったの?

 そういった、例えば整地とか、他にも

 あるよね?水魔法を使った清掃とか。」

と美香が聞くと、ジェニは答える。


「多分、だけど。そういった事は下級使用人

 たちの仕事であって、それをするのは

 プライド?がゆるさない。みたいな?」

と言うと続ける。


「この国には下級使用人はいらない。それを

 使う人間もいらない。みんな平等だ。

 そうありたいと思う。

 人間も亜人もみんなが等しい国だ。

 上下関係はいらない。」と。


ウンウンと美香は頷く。

そして庁舎のような建物に入っていった。


ジェニエーベル達に話しかけようとしていた

バーボンは立ち止まり、二人の話を聞いていた。

そして思う。


確かに理想だ。みんなが平等である事は。

しかし、それは社会の仕組み上、ありえない。


気づいていないのか。既にお前は国主だ。

その時点で上が出来てるじゃないか。

種族云々ではなく。

見方を変えればその他は下だ。変えなくても。


可能とするならば、上に立つ者が下に立つ者を

敬い、下の者も上の者を敬い、行動する。


そういった生きる者の気持ちの部分でのみ

行う事でしか出来ない。

お互いが自身の立場を理解し。


お前の父親は出来なかった。そして挫折をした。

その結果はどうだったのか。


しかし・・・。出来るのであれば見てみたいし

やってみたい。だからこそ俺はお前に力を貸す。

向うでの知識、こちらでの知識。

お前の知識と心構えを支えてやる。



お前を育てたミネルヴァがなぜ勇樹という名前を

付けたのか。それを考えろ。そして、

その名に恥じぬように行動しろ。そうすれば

出来るかもしれないな・・・。



そしてバーボンも庁舎へ入る。




この時は誰も知らない。



半年後に黄の国で13人衆の大幅な入れ替え

があり筆頭を20年間続けたハジメも

その座から落ちることとなる。


13人衆の中枢はハジメ達の組織と表面上は

普通の付き合いだったが裏では激しい

やり取りがあるほどの組織である。


そして紫の国でも


それはこの後にミネルヴァの日記を読んで

しまったジェニエーベルに、人間に対する

考えが少しだが、変わってしまった事から

・・・起こる。


ほんの小さな小石が水面に落ち、それが

波紋となり、黄の国での出来事がさらに

その波紋とぶつかる。そして波となった

モノ。それがぶつかり合い、

このエアスト大陸を飲み込むほどの

大波となる。


その話はミネルヴァの章をはさみ

第4章より始まる。



第3章 ~完~


ミネルヴァの章 ~ミネルヴァの日記より~

へ続く。




数日後、ジェニエーベルは日記を手に取る。

そして最初のページを開く。
















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