第10話 少年の旅立ち

全員プロージット!

もうそれは大騒ぎだ。


全員がほくほく顔で笑い合う。

数名が美香を囲み、なんか握手とか

サインを強請っている。


なんか知らないが私の所も

そんな感じだった。


一時して親方が

「なぁ、美香。なんか斧っぽい

 向こうの世界の武器はないか?」真剣に聞く。


「い、いや!弓が嫌だってことは無い。何気に好きだ。

 でも俺はもっと斧が好きだ。

 渾身の一撃で敵を砕く。」


「斧こそ男のロマンだ。」頼む。教えてくれ!


お前たちを見ていると、すごく楽しそうだ。

戦闘に楽しさを求めたらいけないとは思う。

しかし、やりたいことをすることが一番だ。

それが稼ぎと直結することは一番理想だ。


この世の中は神の加護の元、使える武器を

与えられている。他より優れた力を発揮できる。

それはとても素晴らしいことだ。

でも、自分の想いとは違う者も沢山いる。


俺はお前が持ち込んだ話。

おれは凄く気に入ったよ。


というかさ、なんでソミュールは普通に

槍使わないんだ?おまえ吸血族だろう。

槍が好きなら使えばいいじゃないか。

武器はなんだって使えるはずだろう。


あれ?でも私槍使えないよ?と言ってみる。

そりゃ、お前がただ槍の使い方が下手だからだろう。


衝撃の事実。私が槍使えないのはただ単に

へたくそだったからだった。


しかし、と親方は続ける。

攻めの槍に対して受けの薙刀、面白い。と。

お前は受けが似合っている。今まで一緒に

行動して思った。お前はそんな感じで出来ている。


私は思った。確かに、と納得した。

作者は思った。辻褄があったと。ホッとした。


「斧っぽい何かねぇ・・・」と美香は思案する。


粉砕と言うことなら・・・ハンマーね。

美香はどんな武器なのかを説明する。


親方は金槌の大きいやつ?と言うと

重いだろう、それ。持てるのか?

というか柄の部分、重さで折れるだろう。

・・・普通。ともつぶやく。


そんなもん合成で何とかしなさいよ!と

美香は言いうと一気飲み。


でもなんか燃えてきたぞ!と親方も

一気飲み。もう全員一気飲み!


美香は今までいろいろな武器を創造している。

コルンに渡したものもしかり。

ナックルに鎖鎌、薙刀。そして今、ハンマー。


異世界の知識だ。でもそれよりも

概念をぶち壊す考え。

この大陸に一つの波紋を起こしている。

と真剣に考えている私に酒を進める。


今は考えるのをよそう・・・。

私も笑顔でプロージットだ。


宴もたけなわ。ダンは全員に言う。


「今度の部族対抗のコロッセウム。

 俺たちは美香を代表としたい。

 意義ある者はここで言え。」と、続けて


ここに集またものは俺の部族でトップクラスだ。

お前たちが代表になりたいっていうなら

ここで美香と戦え。


全員が異議なしとプロージット。

そしてメンバーが決まる。


この部族でコロッセウムに出るのは

美香 精霊使い(多分)

ソミュール 攻撃魔法士

バローロ 槍使い

ダン 回復魔法士(表向き)

サモス 回復魔法士(表向き)

と決まった。


そう、見る奴から見れば

守り重視のパーティ。・・・が、

実の所、前衛バカの集まりだった。


そして美香は聞く。

いつもいい所まで行くの?と


ダンは堂々と言う。

「いつも一回戦負けだ」と。

そして一気飲み。


ダンは弱くない。今回のメンバーも

十分強かった。それでも1回戦負け。

どれだけこの国、赤の国の戦闘力は

高いのだ・・・と思った私。


そして宴会はお開きになる。


翌朝早くに親方は宿屋を出て行った。

薙刀の刃の部分を作ると。


私達は今日と明日は休日とした。

各々が勝手に行動をする。

私も街を散策する。服屋に行ったり

雑貨屋に行ったり。

・・・次の日も。


そうこうしていると2日目の夕刻。

私は親方の所へ向かった。美香もそこに居た。

ほんの少し前にここに着いたらしい。

私達は鍛冶屋の中に入る。


「ちょうどいい所に。出来上がったぞ」

と私達に薙刀を見せる。


色々試したが、なんと通常の鉱石のほうが

バナジン鋼と相性が良かったらしい。


美香に教えてもらった折り返し鍛錬を8回。

その間にバナジン鋼を混ぜていく。

安定しないときは鍛冶スキルを使い

調整していく。調整していくうちに

独特の模様が出てきたそうだ。


私は薙刀を手に取る。

え・・・軽い。と思う。


強ええぞ、その薙刀。お前さんが

立ち回りやすい様に柄の部分は空洞だ。

でも強度はある。安心しろ。


そして親方は1本の包丁を渡す。

「ついでに作っておいた、欲しかったんだろう?

 2本目」と言いながらガハハと笑う。


「お前が言っていた刀とかいう奴に似せて作った。

 まぁ、本命を作るまでの予備とでも思え」と。

美香は親方のほっぺにキスをする。


親方は少し赤くなり「よせ」と恥じらった。


薙刀、長さ2メートル。刃渡り40センチ。

柄の部分は空洞になっているがその分軽い。

取り回しに特化させた作り。

その分、反撃を当てやすい。

受けからの返しの一撃に特化してある造り。


刀 長さ70センチ。片刃で厚みがあるが細い。

少し反りがあり撓る様に刃の部分以外は

硬度は落としており、

背の方で受けができる様にしてある。

そして刃は切れに特化させ

その部分だけは超硬度になっている。


親方はへとへとだ、といいながら今日は

宿屋へ直行した。


私達は武器を受け取ると

リスボアの家へ向かい婆さんに言う。

「明日からリスボアを預かります。」と。

明日の朝に宿屋へ来るように伝える。


私達は宿屋に帰り準備をして寝ることとした。

休む時は徹底的に何もしないで休む。

美香の方針だった。


そして翌朝。


婆さんはリスボアに一振りの剣を渡す。

それはね、中古品だが、少し握り手の部分が

削れているが・・・いい代物だ。


エンド討伐の時にアスティ様に貰った。

その時にアスティ様が使っていた剣だ。

持っていけ。そしてジヴァニア様と共に

強くなりなさい。その剣に恥じぬように。


リスボアは受け取る。

「婆ちゃん、俺強くなる。戦いだけでなく

 心も。そして近衛兵長になって帰ってくる」

と言うと、振り返らず家を出る。

剣士の旅立ちだった。



そして全員宿屋に集まる。

ダンとバローロ、そしてリスボア。

その3人を加え次の街に向かう。



ペンデニウム地溝の近くの街へ。




















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る