第21話 開会

次の朝


私達は全員で食事を囲む。

「いただきます」を言ってから食べるのよ。

と誰かの声。

「ちょっとまて、俺のねえし」とサモス。


全員分準備したはずだが、と私。


「ジヴァニア、食べ終わったら少し

 稽古する?」と誰かの声。

「するする」と声を弾ませて美香。

「俺も、俺にも稽古つけて」とリスボア。


「だから、俺の朝飯!」とサモス。

「男が飯くらいでガタガタ言わないの」と

誰かの声。


うん。一人多かった。

・・・気づいてはいたが。

私はサモスのご飯を準備し

スープをすする。そして言う。

「ウォッカ様。おはようございます」と。


「飯があるっていいな。

 食べることができるっていいな。」と

涙ぐみながらサモス。


食事が終わると3人はどこかへ

楽しそうに出て行った。


「なんでいるんだよ!緊張して

 飯も喉を通らなかったぞ!」とダン。

バローロは

「いやぁ、綺麗だったなぁ。うん。

 見惚れて飯も喉を通らなかった」



私はもうどうでもいいので食事をかたずけた。

気になったので3人の所へ行ってみる。


リスボアは地に伏している。

木剣を持ったウォッカ様は言った。

「おいおい、まだ始まってすぐだぞ。」


あれ?美香が居ない。

「あのぉ、美香、いえジヴァニアはどこへ?」

と私が聞くと


「足腰が弱いので走らせている」とウォッカ様。

あれで弱いのか!とびっくりした私。


ウォッカ様は私に近づくと

「ソミュールと言ったか、ジヴァニアと

 一緒に居てくれてありがとう。」と

微笑む。そして私の杖を見る。そして


「その杖、面白いな。妖精を入れているのか?」

と言う。


カクカクシカジカで。と私。

ウォッカ様は笑うと大事にしなさい。と。

それはいい物よ?というより

いい妖精よ?


と言うとリスボアの所へ戻り

「今度はあの木のところまで3歩で行き

 2歩で帰ってこい」と言った。

おいおい、

リスボアと木までは5メートルはある。


人はそれほどまでに前に行き後ろに下がれるのか。

と思ってしまった。

そうこうしていると美香が走って帰ってきた。


「よし、これで私も特訓開始ね」と声を弾ませ

ウォッカ様に言った。


と言う所で

「ウォッカにゃ、アスティが呼んでるにゃ」

とスコティさん。


「親子の楽しい時間を邪魔しやがって。

アスティ、ぶん殴る」とウォッカ様。

それはそれは・・・怖い顔でした。


「ジヴァニア、兎に角、剣を振れ。

 振って振って振り続けろ。」と言う。


美香は「がんばる」と鼻息が荒い。

ウォッカ様は美香の頭を撫でる。

「私はお年頃よ?もう」と膨れているが

頬が赤い。


ウォッカ様はスコティさんと

どこかへ行ってしまった。

多分、アスティ様のとこだろう。


「き、緊張した。ウォッカ様に

いい妖精と言われてしまった。

俺は自慢する。他の妖精に自慢する。」

と、杖。


私達は家に戻る。


「ちぇ、私走ったばっかりじゃない」

と不貞腐れている、美香。

「リスボアだけずるいわ」とも言う。


リスボアは

「稽古も何も二人で構えて、というか

 俺だけ構えてたけど。」


「なんも見えなかった。

 何で殴られているのかさえ、

 ・・・わからなかった。」


多分、ウォッカ様は手加減をしていたと思う。

だけど、その手加減はウォッカ様基準だ。


大人と赤ん坊だ。

いくら大人が手加減をしても赤ん坊は

絶対にかなわない。

いくら赤ん坊が頑張っても大人には

絶対にかなわない。大人は赤ん坊が

頑張っているという事すら気づかない。


それと同じだ。

存在が違うのだ。


・・・美香は、どれくらいなのだろうか。

赤ん坊なのか、それとも。



そして翌朝。対抗戦当日の朝。


私、美香、リスボア、ダン、バローロは

各々準備をしている。


私は杖を片手に薙刀を背負う。

美香はタクトを脇に刺し剣を2本持つ。

そしてユキツーが肩に乗る。

リスボアはアスティ様の剣を。

ダンはスティックを持ち、腰の後ろに鎖鎌。

バローロは三つ又の槍を背負う。


いこう!と美香は掛け声をする。

そして対抗戦がある会場へ向かう。


個別になっている会場の待合室に入ると

張り紙がしてあった。組み合わせ表だ。


1回戦

①組

コアントロー対ガンチア

マルフス対クエルボ

②組

マッカイ対ベルノリカール

シーバス対カルーア

③組

ベイリーヌ対マリブ

カティ対キルビー

優先組

カッツ


「うぉ、初戦キルビーかよ」とダン。

「いいじゃねえか、リベンジだ」とバローロ。

「俺も頑張る」とリスボア。

「さすがお母様、

 言ったとおりにしてくれた」と美香。


おい、何か一人だけ変なこと言ってるぞ。


だって当たらないと賭けにならないじゃない。

あっちが負けちゃうとか。

そしたら優勝しても領地手に入らないし。

と、負ける気はさらさらない美香。


ところで優勝したら何か貰えるの?とも言う。


ないぞ?そんなもん。ただの祭りだし。


衝撃の事実をダンから聞いた。


ダンは何もいらないの?と美香。

「いらねぇな、名誉だけで十分だ」と

男らしく言った。


「じゃあキルビーの領地は私がもらうわ」

と美香。


「そ、それとこれは別だ・・・」と

男らしくなく言った。・・・ダンが。


全員が笑う。程よく緊張感が解けた。

そして

「開会の時間です。準備お願いします」

と声がかかる。


私達は闘技場に入ると

凄く人が集まっている。


「うぁ、ドーム球場みたいね!」と美香。

それはどんなものだ?と聞いたら

細かく教えてくれた。


部族ごとに整列を行う。

私達を見てニヤニヤしながら笑っている。

・・・そう、全部族が。


色々な意味で有名部族だからだ・・・。


「さて、今年も始まったな!

 3年後俺を議長の座から落とすものは

 この中にいるのか!見極めてやるから

 全力で戦え!死ぬ寸前まで戦え!」

とアスティ様が偉そうな場所で喋っている。


その横には

青の国のルナティア様か?。

そして・・・、何故か

ジェニエーベル様とバーボン様が居る。


美香は

「勇樹ぃぃ!がんばるからねぇぇ」と

大声で言って勇樹に手を振っている。


なぜか隣のバーボン様が嬉しそうに

手を振っている。

よく見ると何か、殴られた後が顔に。

ボコボコにされた跡が・・・。

というか、何故回復魔法で直さないのだ・・・。


バーボン様にはいいの?手を振らないで。

と私が美香に言うと


「罰よ、今日は口をきいてあげないんだから。

 私と母様をワザと会えない様にしたね」

と美香は笑いながら言った。


バーボン様、自業自得。


ちょっと長いアスティの話。

「なんか、回を重ねるごとに話し長くなるな」とダン。

「やっぱれか、歳と共に語っちゃう奴」

とバローロ。


そして開会のあいさつが終わり対抗戦が始まる。

































 















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