第15話 美香お手製

それはそうと、私の杖どうしようか。

と杖を見ながら私は悩んでいる。


ちょっと待ってて、と美香は言い

親方の所へ走っていった。

・・・場所知っているのか?と思ったが

「ジョア!」と言う声がした。

探索専門が居た。


私達は美香が帰ってくるまで

アースドラゴンと対峙した時の事を

話して時間をつぶしていた。


あれは無理だ。人の勝てる存在じゃない。

とバローロとダン。


俺も剣を握りしめるのがやっとだった。

とリスボア。まじか!と男二人。

俺なんて手が震えて、しびれてピクリとも

できなかったぞ・・・。とバローロ。

俺もだ・・・。とダン。


私は吸血族だからかな。普通に話も聞いてたし

取りあえず杖に魔力も込めて覚悟だけはしてた。


ど、どんな話をしていたんだ?と全員。

話の中身を教えると、

全員少し思いつめた感じで聞いていた。


美香は悔しいだろうなぁ。母様との差を

感じたのだろう。そして糞を渡されたのは

二人の娘だからであって美香の力ではないと。

そう思ったのだろう。


その気持ちわかるなぁ。俺もよく言われてたよ。

お前が部族長になったのは親父の力だって・・・。

とダンは少し苦笑いしながら言った。


そして小一時間ほど。

美香が息を切らせながら帰ってきた。


親方に最優先で作ってもらうことにしたわ。

は?なんで鍛冶士?杖なのに。

と私は美香に聞いた。


杖の形を真似てバナジン鋼で作ってもらうわ。

そして中は空洞。

そして私が精霊付与をして魔力を充填する。


私の唯タクトと構造は同じ。

そもそもこの唯タクト。謎だったわ。

素材はわかるけど何故、タクトとして

使えているのか。それはただ単純に私が

タクトと認識しているだけ。

・・・違うかもしれないけど。


だからユキツーはそれをわかっていて

理解しているからあの閃光を放てた。


だからソミュールもそれを杖と認識して。

と真剣に美香は言った。


そうですね、唯タクトは中に精霊魔法、いえ

精霊の魔力が充填されている。というよりも

感じたことのない魔力。

私でさえ何の魔力かわかりません。


向こうの世界で作ったはずなのに。

向こうの世界にも魔力があるという証拠です。

タクトと言えばタクト。他の何かと思えば

他の何かです。


美香様の言う杖を杖足らしめるのは魔力。

純粋な魔力を充填する必要があります。

精霊の魔力では駄目です。美香様。

とユキツー。


純粋な魔力とは?と私は聞く。


妖精の魔力です。とユキツーは答えた。


美香様。バーボン様がやった合体を

やってみませんか?とも続けた。


それでもしも、妖精が出来るのであれば

美香様がその杖に妖精を付与すればいい。


バーボン様は各属性の妖精を2体ずつ使った。

組み合わせは覚えている。と私は美香に言う。


流石です、ソミュール。あなたは頭がいい。

とユキツーが褒める。照れる私。


問題は魔方陣だ。適当すぎて怖いくらいだ。

しかし・・・。あのくっきりした濃い色。

あそこまで濃い色を出せるのだろうか。美香は。


杖の完成を待って明後日に合体を行うこととした。

親方たちの仕事量を考えると10日ほどは

この街に滞在だ。


取りあえず親方たちも今日は段取りだけで終わると

言っていたらしいので私とリスボア、美香は

市場へ食材やら酒やらを買いに行った。


とりあえず今日の分は作らずに

屋台で売っている物を買い込むこととした。


方々で私達はニヤニヤとされる。

そりゃそうだ、ここはキルビー部族の街だ。

賭けのことはもう街中に知られているようだ。


親方たちはよくこの街で鍛冶する気になったわね。

と私が聞くと、美香は

「なんか鍛冶師たちは私達の味方っぽいわよ?」と。

というか街は二分されているらしい。


何かよくわかんないことになってるわ!と美香。

あんたのせいだ・・・。と私。


食べ物をオマケしてくれる店もあれば

売ってくれない店、代金をふきかける店。


そして運命の酒屋!


持ってけ!樽ごと!と2樽も貰う!

私達は勝者!


ちょっとそれでは悪いという事で

極上品の酒を1本買った。金貨2枚。

・・・うん。

試合には勝ったが勝負には負けた。


私達は借家に帰り食事の準備をする。

私がテーブルに買ってきた食べ物を机に

並べていると慌ててリスボアがやってきた!


大変だっ!美香が!と慌てている。

どうしたの?と私が聞くと驚くべき一言が!


「美香が料理をしている!」とっ!


私は急ぎ、台所へと行く。

美香が鼻歌を歌いながら何かを作っている!

そう!何かを!

台所で作っている何か。普通は料理だ。

しかし、美香の作るモノは料理であって料理ではない!


やめるんだ!美香!と思わず叫ぶ私。

しかし遅かった。何かが一つ出来上がっていた。


ネチョとしていて、生臭い。根菜なのに生臭い。

新鮮な根菜だったのが生臭い。

色が人工的な色だ。自然界にない色。根菜なのに。


リスボアは言う。食材が勿体ないので、食おう。

・・・出そう。買ったものに混ぜて。


とりあえず生臭さを消すためにそのまま煮込んだ。

鍋から「シューシュー」と蒸気以外の何かが

立ち込める。私はとりあえず蓋をした。


危険だからだ。私の本能がそう言っている。


すると何かをドボドボと入れる。

止めろ!止めてくれ。と懇願する私。


「美香?約束したわよね?料理しないって」と私。

「だ、だって女子力あげたいじゃない!

 私だって女子だし!」と焦る美香。


「てめえが上げているのは女子力じゃねえ!

 この世にない謎力だ!料理は私が時間をかけて

 教えてあげるから」と私。


俺も教えるからさ、とリスボアも言う。


少し煮込まれた何かをリスボアは器に注いだ。

あれ?、匂いはよくなった。色も取りあえず・・・

人工的な色もなくなったがどす黒い。


もう仕方ないので机に並べた。匂いさえなければ

わからないだろう・・・。


そうして全員が帰ってきた。

「お、豪勢だな。うまそうだ」とサモス。


よし、と美香は掛け声をした。


全員プロージット!


























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