第23話 圧倒的な戦い

だって魔法封印されてるじゃない。


「違う、アレは魔法封印であって魔法封印ではない。

 自分の力量以下の者には有効だが、

 力量以上の者には何も効果はない。」

と杖は答える。


何度も言うがお前は強い。さっさと終わらせろ。

とも続けた。


それならば、と私は極大魔法の詠唱を始める。

「お、いいね、俺も頑張るよ」とケケケと杖は笑う。


目の前に魔方陣がなんと2重に展開されるている。

私は極大魔法を、そして放つ。


ゼロ・アブソル・ブラスト。


私は美香のように技の名前は

大声では叫ばないと・・・誓っていた。


魔方陣から青白い魔法の塊が放たれ、さらに

その先にある魔方陣を通る。


魔法の塊はそれを通ると太い閃となり

相手の魔法使いへ、ぶち当たる。

そしてそのまま閃は魔法士と共にと奥の壁に

激突する。


全員の動きが止まる。というか会場全体が

静まり返る。相手の魔法士を見ると

氷の彫刻のようになっている。


「回復!早くしろ!間に合わんぞ!」と

遠くからアスティ様の声。


「審議!」と立ち合いの記録係が手を挙げる。

その間は両部族とも待機だ。


致死と思われる攻撃の場合はアスティが判定し

負けになる場合がある。

アスティは悩んでいる。が誰かと話している。

ここからはよく見えない。


アスティの後ろで話をするのはスコティ。

「アスティ、私はソミュールと戦いたいにゃ。

 面白そうだにゃ。」


「続行!」とアスティは叫ぶ。


続行の場合はその言葉から10秒後開始となる。

私はホッとした。美香を見るとニヤニヤしている。


あの極大魔法は威力こそ高いが致死までには

今までなったことはない。それほどまでに

威力が上がるのか、と私は私自身に驚く。


「くそがっ」と相手のヤな男が吐き捨てる。


10秒後全員が動き始める。

組んでいたバローロとダンも仕切り直しだった。

ダンは鎖鎌の鉄球を振り回している。


対峙したまま全員が動かない。美香さえも。

その沈黙を破ったのはユキツー。


精霊使いのゴーレムと言う扱い。うん、反則だ。

知っている者からすれば・・・だが。


唯タクトを右手に持ち短剣使いに向かうと

短剣使いと打ち合っている。

結構早い打ち合い。武器と武器が合うたびに

火花の様な光が現れる。数十合か打ち合うと

ユキツーは攻撃を止める。そして言う。


「武器を変えていいぞ」と。


短剣使いの武器は細かく金属の破片となり

崩れ落ちる。

「ちぃ」と短剣使いは予備を取り出し

構える。


ユキツーは唯タクトを短剣使いに向ける。

「とは言ったが時間がないので終わりにする」

というとタクトの先から数発、

・・・青い閃光が放たれる。


その閃光が全て短剣使いの体を貫くと

短剣使いはその場で崩れ落ちる。


「回復だ!すぐに!」とまたしてもアスティ。

「審議!審議だ!」とも叫ぶ。


またしてもアスティは考え込む。

そして誰かと話している。

「まさか、反則じゃないわよね?あれくらい

 普通は回避できるわよ?」と言う女性。


「それはあんた達だからだろう、困ったなぁ。

 あそこまで強いとわ。手加減してほしいものだ」

とアスティ。


「あのゴーレム、いや妖精と戦いたいわ。

 こんな機会はめったにない。」とシャルル。

「だめだ、ジヴァニアと戦うのは私だ」と

バーボンを蹴飛ばしながらウォッカ。


「ほんと、すみませんでした!」とバーボン。

ジェニエーベルは見て見ぬふりしている。


「じゃあさ、あのゴーレムと槍使いセットで

 私が戦うわ」とシャルル。


「じゃあ私はあの変なのを振り回している族長ね。

 あれおもしろそう」とエルセブン。

「アレは多分鎖鎌だ。気になる?」とアスティ。

「そりゃあもう」とエルセブン。


「もうジヴァニア達とやる気満々じゃねえか。

 死人が出ても続行しないと俺がヤバいな」と

困った顔でアスティ。


「続行!」とアスティ様。

投げやりに聞こえたのは私だけか。


10秒後リスボアが剣士に突っ込む。

相手の剣士も迎え撃つ様に前に出る。


もう相手の族長は見ている事しか出来ていない。


「なめんなよ!小僧がっ」と相手の剣士が

大きく振りかぶりる。しかしリスボアが

懐に入る方が早かった、が深く入りすぎだ。


その瞬間、リスボアは剣を返し、握手で

相手の水月の所を思いっきり突く。

相手の剣士は「グホッ」と言いながら体が

少し落ちると、動きが止まる。


少し後ろに飛び剣の横なぎを放つ。

が、攻撃が軽い。しかしそれを知ってか

少し前に出るとめったやたらに剣を振り回す。


「バーチカル・・・なんとかぁぁ!」と

なんか変な技の名前を言っている。


そして相手の剣士の装備がボロボロとなり

剣士はそこに崩れ落ちた。



「おいおい、あれは俺の技じゃねえか」と

アスティはウォッカを見ながら言った。


「あぁ、そういえばこの間、あの少年に

 お前が若い頃していた攻撃を教えた。

 あの剣を見ていたら、ふと思い出した。」

とウォッカ。


「じゃあ、本家本元をあの少年に見せるしかねえな」

とアスティは言った。



気が付くと

いつのまにかバローロが回復魔法士に

槍を向けて立っている。


美香がゆっくりと歩き出す。

両手に刀を持ちながら。

そして相手の族長の前に立つ。


ゆっくりと右手の刀を相手の首筋に

添える。そしてそこから微かに血が流れる。


「まだやる?」と笑顔の美香。


「ま、参った。降参だ」と凄く小さな声で

相手の族長は言った。

多分、私だからここまで聞こえたというほどに。


美香は剣を下ろし相手に背を向ける。

「けっ!バカがっ!」と扇の鋭利な刃の所で

美香の首筋を狙う。


が、美香は振り向きざまに右手の刀で

扇をはじき上げ左の刀で袈裟切り一閃。


一時して・・・大量の血が噴き出す。


「回復!早く!もう全員で回復しろ!」とアスティ。

・・・ダンも回復をしていた。


アスティは誰かを見て、そして首を垂れ

宣言する。


「勝者 カティ族!」


会場は静まり返っていたが、

ほどなく騒めきとなり、そして大歓声が起きる。



初戦 勝利










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