概要
男は言った
「金なんて要らない」
女は言った
乞食は命を求め
金持は命を捨てた
薬を願ったこども
病を願ったおとな
幸せになった悪人
不幸になった善人
全てを捨てようとした者
全てを手に入れようとした者
*
ある霧の街にひっそりと佇むその店では、どんな願いでも叶えられるのだという。
店の主は、口達者な少年・トータと、物静かな少女・ハナダの二人。曰く、ここでは、自分の願いを叶えるために、他の誰かと交換取引をすることができる。
重要なルールが一つ。客は、自分が貰うものと、自分が差し出すもの、そのどちらかしか決定できない。
(2008-2009初稿・2022改稿)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!店の主人が見届ける願望を巡る数奇な運命たち
願望交換局という不思議な店。
そこへふらりと訪れる客、噂をどこかで聞きつけて訪れる客、何かを願う者はその代償として何かを「交換」する。
これは願望交換局の若き主人であるトータと、願いを叶える者たちの物語。
人間にとって願望は切っても切り離せない関係にある。たとえば少年時代に見たささやかな夢、恋人とふたりで見た夢、子どもたちとの約束。さまざまなシーンにおいて願望それ自体が人を生かし、そして殺しもする。
願望をテーマにした本作は鋭い視線で人間の本性を暴き出している。
店主であるトータは願望交換局に来る人々を淡々とした態度で出迎える。店の地下室の扉が開くとき、それは願望を交換する契約の成立だ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「どんな願いも叶えてくれる店があるって、本当かい?」
どんな願いでも叶えてくれる店。
そんな店があったら、貴方は行ってみたいですか?
いえいえ、きっと不信に思われることでしょう。確かにうまい話には必ず裏があります。
この店は願いを叶えてくれるのではなく、別の誰かと願いを「交換」してくれるのです。しかも、客が選択できるのは、自分が願うものか自分が捨てたいもののいずれか一つ。
何かを願えば、何か自分の大切なものを失うかもしれない。
何かを捨てられる代わりに、何かとんでもないものを押しつけられるかもしれない。
それでも貴方は、何かを叶えたいですか?
これは、様々な欲望が織り成す、喜劇で悲劇な物語。 - ★★★ Excellent!!!願いはあくまで「交換」である
人には様々な欲望がある。金、愛、命、美、他者からの承認。
ここはそんな願いを叶える店。
ただし、その方法は少々特殊で願望は「交換」によって成り立つ。
依頼人は自分が欲するもの、もしくは捨てたいもののどちらかしか選択できない。
この「交換」というシステムが物語の肝であり、作者のセンスとアイデアが光るところだ。
サイトの方では以前読んだが、毎回異なる依頼人はどれも中々に興味深い結末を辿る。
人の欲により紡がれる物語と、依頼人たちの末路。気になる方は是非とも、霧の町にてこの店を訪ねると良いだろう。
奇妙な少年と少女の2人組が、きっとあなたを出迎えてこう言うはずだ。
――ようこそ、願望交換局へ