カクヨムSF研＠非公式

☆爆さんのその後を見守るエッセイ、このエッセイもひっそりと見守るつもりでしたが、だんだん面白い展開に。レビューさせてください！

資本主義がほどほどに解体された世界に生きる主人公を映していくような小説で、世界にはヒッピーが溢れ、労働は趣味に落ち込んでいる。 SFとしてはディストピアなのだろうが、そこでも淡々と…続きを読む

カチッと内容を説明する冒頭の切れ味が素晴らしいです。緊張感のある中盤のスキットや、終盤のオチまで隙の無いショートショートになっていると思いました。

良いSFを絵と表現した故人がいたが、それがぴったりと当てはまる。時待町というこの世の特異点《シンギュラ・ポイント》の町は、絵になる場所だ。このサイズの物語にして世界は大きくもならず…続きを読む

別サイトの小説コンテストにて偶然にも読んだ同一世界観作品の前日譚。ストーリーの奥行きを感じさせつつも、起こることは穏やかで優しい世界です。都会の一角なのか、場所はわかりませんが都会…続きを読む

人工人間という人間の生み出した怪物を、その機構のあいだにある心的なシステムとしての人間のウェットな部分として描き出した。 それは記憶領域という過去を表す表象と、愛撫される肋骨、つま…続きを読む

ホットケーキを焼くだけでほとんど何もしていないとも言えますが、これも情報の出し方が上手な枠の作品です。小出しにされた会話のなかでそれとなく世界観を提示するところも余裕が感じられ、思…続きを読む

序盤の展開に冗長さを感じましたが、鮮やかなヴィジョンの転換が見事でした。色彩によるランドスケープの切り替わりは確かにありがちと言えばありがちですが、美しかったと思います。いっぽうで…続きを読む

謎めいた研究所を舞台に闇で増える細菌の研究をする人々のお話しです。闇で増える細菌というモチーフの取扱いが「やられたな」と思いました。「光合成もあるなら闇も……」と面白く読みました。…続きを読む

はっきりとこの施設が何を目指して作られているかといった情報が無く、よくわからない施設か研究所にいると思しき博士が命を狙われるといった趣の作品です。はっきりとここが良いというアピール…続きを読む

認知行動療法的なセラピーに参加した女性が自分の感情の機微に気づいていくというあらすじです。これは自分は個人的に面白いと思いました。このセラピーがプラグマティズムの極致とも言えるので…続きを読む

法令といった制度を扱うSFは個人的に興味があるのですが、そうした側面を併せ持つ新感覚のSFといった気分を味わいました。人工知能によって世界が変わるという視点はありがちですが、そこか…続きを読む

環境調査の目的でやってきた惑星。 タナカと相棒アンドロイドのノイは、いま危機的な状況にいた。 これは葛藤を抱えるアンドロイドと熱い人間の物語だ。 良かったのはキャラクター描写だ。…続きを読む

食べ物の記憶がキーワードの物語です。親子の物語でもあります。登場するチョコボールやエンゼルといったモチーフから、どこか懐かしい手触りを想起させますが、後半はしっかりとSFな内容で読…続きを読む

イヌイットのお爺さんと異邦人の青年の何気ないやりとりが見ていてほのぼのする作品です。ところが「AZハンマー」と耳慣れぬ武器？　が出てきてお話は深みを増します。結末のどこかおかしくて…続きを読む

深夜番組で放送されていたグルメの記憶を手かがりにその幻のグルメ「サンプーマーシン」を追うというあらすじです。サンプーマーシンとは何なのかというとっかかり、その謎という側面でお話を引…続きを読む

AI観は古い印象を受けましたが、AIが人間の相棒であった古き良き時代を表しているところは好印象でした。これはAIという表象を用いたバディ小説と私は読みました。ときに聖母のように主人…続きを読む

地球の自転が止まるというダイナミックでSFならではの題材を選んでいる意味で高評価でした。そこに至るまでの家族の物語でありながら、背景にある政治的な描写や国際的な描写といった細部にま…続きを読む

世界の秘密がもしも自分にあったら……という物語です。自分が周りの人間とは違うのではないかという若いときの小さな違和感を掬い上げています。さらにこの世界はどうやら戦争をしているらしい…続きを読む

我が家では猫を飼っていた。その猫のクローンが我が家に来るというお話でハートウォーミングな話かと思いきや、騙されます。もう一度、タイトルをよく読んでから内容を確かめましょう。実に深い…続きを読む

私たちにとって身近で愛らしい、あの生き物が実は人間を抹殺しようとしているというショッキングでありながら、どこか憎めないお話でした。タイトルとは裏腹に柔らかい文体が心を和ませます。ギ…続きを読む

伝染病の流行で直接接触できない世界、老人はあるものに憧れていたという設定です。よく考えてみればそうなのですが、直接接触できないということは本物のものとは距離を置かざるを得ないのです…続きを読む

生成AIが話題になった昨年でしたが、SFの世界にも生成AIの話題を取り込んだ作品は少なくありません。この作品もそういう意味で生成AIモノです。AIによって生成された人間達がデスゲー…続きを読む

信長になってしまう疫病、信長病というワンアイデアがくだらなくて面白い作品です。ありとあらゆるものが信長と化してしまう、そういう力強いアイデアに結実していくそのパワーに一票を投じたい…続きを読む

荒々しい文体で読む人を選ぶ作品だと思います。しかしお話の大筋は自分を孤独に追いやったヤンデレAIに復讐するというシンプルで力強いお話で、読めば読むほどに引き込まれる面白い作品でした…続きを読む

宇宙人が夏祭りに来る、ベタだけど味わい深く何故か読んでしまう作品です。宇宙人の描写もほんとうにベタですが、お話の面白さで推します。また憎めない世界観がよかったですね。

これ、見逃してしまうような作品でした。なぜかというとあの有名な100円ショップで綺麗なおねーさんと出会うという、それだけのプロットなんですね。ただ序盤で、何を買うのか忘れてしまうと…続きを読む

SFの想像力をフルに使って異星の登山をするというイメージが最高な作品です。百合作品となっていますがスポーツが好きな読者にもおすすめします。宇宙の星の登山というイメージを具体的に描き…続きを読む

妹を病院から連れ出すというお話のようですが、内容やストーリーという魅力よりも執拗に美しいものを描きたいという執念のようなものを強く感じました。結末に騙される、そういう作品でもありま…続きを読む

ゴシック的世界観を舞台に、教会に眠る少女が突然目覚めるところから物語が始まります。最終戦争後ともあって世界は終わりに向かっている、彼女は救世主なのか、はたまた……考察が捗る作品とし…続きを読む

記憶を追体験できるようになった未来のデバイスを巡って女性同士のカップルが少しずつおかしくなっていくお話です。記憶というものは確かに現実のような感覚を持つ、夢とは違う人間の持つ不可侵…続きを読む

人類滅亡の危機、地球と月に分かれた人類、自律型戦闘人形（オートボーグドール）……ライトノベル的なSFの面白さがギュッと濃縮された原液のような作品です。長編の一節のような重厚でありな…続きを読む

この新生物、皆さんも良く知るあの生物です。帰巣本能が「あれ」にもあるという驚きの視点はまさにSFです。円城塔による小説「Self-Reference　ENGINE」にもマリアナ海溝…続きを読む

大人になってしまった夫婦、子どもを持つには年を取り過ぎてしまったので、保護カラテカを飼おうというお話に。もう何だか分かりません。保護猫、保護犬、保護カラテカがいる世界なんですかね。…続きを読む

主人公のメイドの語りはカズオ・イシグロ「日の名残り」のような、どこか奥ゆかしさを感じる語りで、この世界を紐解いていきます。スチームパンク世界の無骨さと、謎めいたストーリーが読ませま…続きを読む

フラッシュフィクションという短い長さの文章の中で微に入り細を穿つSF設定と洒落たSFヴィジョンの両方を楽しめる作品でした。もう数話と読みたい気持ちもありますが素敵な作品です。

姉妹の人型機械のロードムービーとでも言いましょうか。ふたりの関係性だけに焦点を絞った作品として読みました。背景に世界は広がっているのですが、それをはっきりと見せて欲しかったというの…続きを読む

軽妙な台詞回しがクセになる、そんな炒飯店の成り上がりストーリー。SFと言えども、舞台設定のみがSFなので、楽しい思いに浸れること間違いなしです！

サイバーパンク世界で最底辺の街、ボトム。そこへと落とされた娼婦のリサはクラッカーのトオルとともに最悪の世界に反撃する――――リサとトオル、ふたりの主人公の人生は読んでいて辛いし、鬱…続きを読む

昔の翻訳小説の文体を目指して書かれたという本作は、確かに海外SFのような文体の質感を感じました。初めて父親の本棚を開けたとき好きなブルーの背表紙の本を手に取り、ゆっくりと読んで、な…続きを読む

自分が何の使命でここにいるのか、生きている意味って何だろうと考えたことはないだろうか？　あるいは世界はどこへ向かっているのだろうとか。 陰謀めいた妄想に囚われることなく世界に対し…続きを読む

何度読んでも奇妙な展開と奇妙な内容、そういった地軸がズレているような感覚を味わえる傑作短編だと思います。

警察のネットが街を覆い、システムによる密告が起こっても倫理や犯罪が消えてなくなるほどユートピア化されていない近未来。 ――――とでも言おうか。今作は完全監視社会を実現した社会でそ…続きを読む

古典的なスペースオペラのアウトラインに、サメ映画。異色の組み合わせが読者をぶっ飛んだ世界へと誘います。さまざまなSF作品へのリスペクトに溢れた大人を楽しませる作品です。

文芸の世界にはときどき、すっとぼけていて、味のある小説を書く人がいます。これはそんな作者が書いたものかもしれませんし、それよりもっと手練れの作者が書いていったものなのかもしれません…続きを読む

人類が眠った巨大宇宙移民船でコールドスリープにつく人類たち。彼らの管理の仕事に就きながらも、生体アンドロイド「ロイド」はおひとりさまを満喫しようとしていたというあらすじです。読むほ…続きを読む

アンドロイド、歌……といった少し古典的な題材選びに保守的だと感じたのですが、思いのほか、遠くへ連れてこられてしまうというような魅力がこの作品にはあります。それは読んでいて心地の良い…続きを読む

図鑑形式の作品で、古くは「鼻行類」「アフターマン」といった著作の系譜にあたる本作は幻の生物の記録書となっている。短編というボリューム感が、あわよくばもっと長尺の作品として読んでみた…続きを読む

恋人が不治の病に罹ってしまい、そのあいだARの向こうに存在するイミテーションの恋人と過ごすことになる。奇妙なシチュエーションと、アイデンティティのありかへの問いかけはこうしたSFの…続きを読む