概要
より遠くへいけばいくほど良い
男は図書館をめぐる不思議なうわさを通じてさまざまな小説と出会い、物語を体験していく。いつしか彼のそばには司書の女性がいた。男は女性と親しく交流し、愛を育んでいく。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!前向きになりたい時に。
読み味として、村上春樹作品に似てるなと感じた。
あの作家の描く主人公特有の、妙に達観していながらも、どこか決定的な欠如を抱えているような、あの感じだ。
だからこそ、読み始めは「ともすれば、この物語はハッピーエンドには向かわないかもしれない」とも思った。私が読んできた村上春樹作品の結末は、多くがどこかしら薄暗い余韻を残すものだったからだ。(もちろん、そうでない作品もあるのだろうが、そのあたりはニワカなのであまり詳しくない)
ただこの作品に関して言えば、読み味は似ていても、明確に「ここだ!」と分かるポイントがある。それは「主人公がハッピー、あるいはアンハッピーに向かう分岐点」とでも言うべきも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この現代社会で、『生きる』とは。現代人必読。
風景描写がなくても雰囲気で読み進めることができる。そんな小説は多々ありますが(書ける方羨ましい!)、この作品はまさしく『遠くへ』であり、どこまで行くんだろう? という疑問が、読者の好奇心を引きつけます。
それが地球の反対側なのか、宇宙空間なのか、よもや別次元の宇宙なのか! ……というのは随分ぶっとんだ妄想ですが(笑)、そんな『どうしようもない』感覚ではなく、日常の中の温もりだったり、涼しさだったり、寂寥感だったり――というものが、この作品には溢れています。
よく見慣れている風景が、本当にそこにあるものなのか。それは人間についても、心についても、自分自身についても言えることなのかもしれませ…続きを読む