前向きになりたい時に。

読み味として、村上春樹作品に似てるなと感じた。
あの作家の描く主人公特有の、妙に達観していながらも、どこか決定的な欠如を抱えているような、あの感じだ。

だからこそ、読み始めは「ともすれば、この物語はハッピーエンドには向かわないかもしれない」とも思った。私が読んできた村上春樹作品の結末は、多くがどこかしら薄暗い余韻を残すものだったからだ。(もちろん、そうでない作品もあるのだろうが、そのあたりはニワカなのであまり詳しくない)

ただこの作品に関して言えば、読み味は似ていても、明確に「ここだ!」と分かるポイントがある。それは「主人公がハッピー、あるいはアンハッピーに向かう分岐点」とでも言うべきものだ。

個人的な好みとして、私はその分岐点から「ハッピー」な方へ向かう作品が好きだ。だから、この作品は好きだ。

読後は不思議と前向きな気持ちになれるし、もしかしたら、そっと目の端に涙が浮かぶかもしれない。9000字を超える長さだが、まるで蕎麦をすするように、するりと物語が頭の中に入ってくる。

通勤電車に乗ってる時あたりにでも読むと、その日のスタートが多少マシになるかもしれない。

その他のおすすめレビュー

埴輪庭(はにわば)さんの他のおすすめレビュー40