幕間Ⅰ 客は去って

「視力を失った画家と、聴力を失った音楽家、か」

「交換した結果、画家のお客様は耳が聞こえなくなって、音楽家のお客様は目が見えなくなってしまったけれど」

「それでも構わないだろうさ。人にはそれぞれの優先順位というものがある」

「いい交換相手が見つかって良かったわ」

「そうだね。二人とも満足そうだった」




「商才が欲しい人と、自分の店が欲しい人、か」

「難しい顔をして、どうしたの。交換は綺麗に成り立ったのでしょう」

「商才を手に入れても店が無い。店を手に入れても商才が無い。これでは意味が無い」

「そうね」

「だろう?」

「二人で商売をすればうまくいきそう」

「……そう助言してあげれば良かったな。彼らが帰る前に」




「二人とも古切手の蒐集家、か」

「お互い、それぞれが欲しい切手を重複して持っていたのね」

「そう。双方とも幸せそうで何よりだ。僕には魅力が全く分からないけれど」

「とても貴重なものだって」

「彼らが言うのなら、そうなのだろうね」

「願望交換局さまさまね」

「そうだね――」




「――普通郵便で事足りたな、今の交換」




 幕間Ⅰ 完

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