第27話 ある日突然、仲が深まる事もある。
美味しいバーベキューを食べ終わり、焚き火台でししゃもとスルメを炙りつつ残りのビールを飲んでいた。
「俺とツネ婆さんはな、ツネ婆さんの親が亡くなったら、一緒になろうって約束してたんだ。」坂本さんが昔話を始めてくれた。
「ちょうど俺が医者としてノリにノッてた時代。ツネ婆さんの親がいよいよヤバいって時に俺の病院に転院してきたんだよ。」坂本さんがビールをググッと飲み干す。
「まぁ、結果的に治しちまったんだよなぁ。どうしても医者としてのプライドが勝っちまってなぁ。どこの病院でも治せねぇって言われちゃよ。治したくなるだろ?」坂本さんは手に持った空き缶をグチャっと握りつぶす。
「まぁ、それからはあの婆さんピンピンになっちまってなぁ。死ぬどころかゾンビにでもなっちまったんじゃねぇか?って言うぐらい長生きしちまってよ。挙句の果てには、『あんた達の好きにはさせないよ!』なんて言われちまった。全てお見通しだってよ。」坂本さんは次のビールを開ける。
「ツネ婆さんの親がいつ死んだと思う?」坂本さんはビールをグビりと一口飲む。
「なんと2年前だ。ホント長生きしやがったよ。俺達もすっかりジジイババアになっちまったし、しかもそのタイミングでツネ婆さんも病に倒れちまった。ホント、タイミング悪いよなぁ。」ししゃもの頭をかじりながら坂本さんは悔しい顔をする。
「でもよ。俺も治せなかったツネ婆さんを、あんなにピンピンに治してくれたやつがいた訳だ。俺はよ、運命って物を信じた事無かったんだ。っていうか運命から見放されてるとさえ思ってた。」坂本さんはししゃもをブンブン振り回しながら言った。
「でも最近思うんだ。これが運命だったんじゃないかって、な。」そして手に持ったししゃもを僕の口に突っ込む。ブンブン振り回して卵がすっかり飛んで行ったししゃもを。
「ツネ婆さんを救ってくれて、本当にありがとう。」坂本さんが立ち上がって頭が膝に着いちゃうんじゃないか?っていうぐらい深く頭を下げる。
「や、やめてください坂本さん……。お、お義父さん。」なんか、ここまで腹を割ってくれる坂本さんに対して、坂本さん呼びはちょっと失礼かなって思った。
「ガハハハハハハハハ!!」お義父さんは豪快に笑うと、僕の頭を鷲掴み、グシャグシャと撫で回した。
その後も2人して色々な事を話した。僕の生い立ち、そして最近の事。坂本さんのサクセスストーリー。ホント書ききれないぐらいの色々な事。
そんなこんなで焚火を囲んだ男同士の熱い語らいの夜は過ぎていく。
寝袋は実に快適だった。お義父さんが僕用にと用意してくれた寒冷地対応の寝袋。「まずは慣れる事が重要だ。」ってベッドの上に寝袋を敷いて、そこで寝てみることになったんだ。
まぁあれだけ飲んで語り合ったからね。朝までっていうかもう昼過ぎだけど、ぐっすりと寝ることができた。
それにしても昨夜は飲み過ぎた、僕にしてはかなり飲んだ。っていってもお義父さんはもっと飲んでた。上機嫌でグビグビ飲んでた。僕の背中をバンバン叩きながら。
ツネ婆さんとの馴れ初めとか色々と聞いちゃった。中々面白いエピソードがあったりしたけど、まぁそれはまたいずれ……。
ここはレイトチェックアウトをやっているようで、この日は「予約も入ってないし夕方ぐらいまでごゆっくりしてください。」とは言われてた。
まぁ流石に帰りが遅くなっちゃうし、昼過ぎくらいには出ようかって昨夜は言ってたんだけど……。
「グオォォォ!!グオォォォ!!」凄いいびきをかいて寝ているお義父さん。
行きも運転してくれてたし、あんなに飲んでたしね、もう少し寝かせておこうかな。帰りが遅くなるのも別にいいでしょ。
このトレーラーハウスは寝る場所が2つあって、ちゃんとした寝室としてマスターベッドルーム。そしてリビングダイニングスペースのソファもベッドになる。
お義父さんには1番後部のマスターベッドルームを使ってもらっている。
最初は僕に使えって言ってきたんだけど、流石に僕が使う訳にはいかないよと、お義父さんに使って貰った。
じゃあ一緒に寝るか?とか言うから、いやいやそれは流石に無いかな。と断ったら
ちょっと寂しそうな顔をしてた。
というわけで、僕はリビングのソファを倒してベッドにして寝ている。
トレイラーハウスの設備として後は、小さいキッチンと小さいシャールームもついている。
昨夜は焚き火の前にずっと居たから、体中焚き火臭かった。だから寝る前にシャワーを使ったんだけど、狭いながらも快適に使用できた。まぁ大きいお風呂には勝てないけどね。
あ、そういえば帰りに温泉に寄っていこうって言ってたな。お義父さんの知り合いがやっている旅館があるんだって言ってた。なんでも、テレビで紹介された高級宿なんだそうだ。
そんな旅館行ったことないからそれはそれで楽しみでしょうがない。
花咲永遠、改め坂本永遠35歳。新しいお義父さんと、少しだけ距離が縮まった気がします。
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