第30話 ある日突然、出張サービスをする事もある。
美弥子の作ったデカ盛り角煮丼を食べ、デザートにホルモン焼きを食べ、おやつに華怜が慣れない包丁で指を切りながら剥いてくれたりんごを食べ。
使用人専用エリアの結界も無事に張ることが出来た。
結果的に美弥子の私室にも折り鶴は侵入していた。あの日一緒に出掛けていた佐々木さんの部屋には無かったので、直接千羽鶴と対面した人に取り憑いてきたと考えるべきなんだろうか?
いやでも、ツネ婆さんは直接対面してないんだよなぁ。焼却する時に近くに居た事を考えれば対面してるってなるのかな……。
それと心配なので、東雲夫妻と、紅葉さん、それとあの二人のセクシーメイドさん達も早めに見に行かないといけない気がしてる。
いや、別にセクシーメイドに会いたいからって訳じゃないよ!?ホントだからね!!
ツネ婆さんにその事を告げると、既にツネ婆さんが連絡をとって、安否確認をしてくれていた。折り鶴の話もしてくれたようで、家の中に焦げた折り鶴が無いかチェックしておいてくれるそうだ。
東雲家には早速今夜伺う事になった。流石に前回のように大人数で押しかける必要も無いし、無駄に危険に身を晒させるわけにいかないので、僕一人で行くつもりだったんだけど。ツネ婆さんから、「華怜と美弥子も連れていきなさい。」と言われて、2人も同行することになった。
約束の時間が近付き、僕達はガレージまで降りていく。美弥子は「もう仕事上がりですから。」と言って私服で登場した。白いブラウスにワインレッドのベスト、下はベストと同色のミニスカートその下は生足で短めの白い靴下にワインレッドのエナメルの靴、そして大振りなストールを肩にかけている。真冬なのに寒くないの!?
華怜は濃紺のツーピーススーツ、スカートは膝丈、黒い厚めのタイツに黒いローヒールを履いている。その上から白いダウンコートを羽織っている。
「ミネさん!!そんな薄着で永遠様に擦り寄ってはしたないですわ!!」僕の左腕に柔らかいものをギュウギュウ押し当てている美弥子に華怜が吼える。
「あら、どうせ車ですし、永遠様に可愛い美弥子アピールもしませんと普段はメイド服ばかりなので飽きられてしまいますわ。」美弥子は更にギュウギュウと押し付けながら身体を左右にフリフリしてくる。ホントなにこのお店。
「私もセクシーな服を着てくれば良かったですわ。」華怜が悔しそうに僕の右腕に柔らかいものを擦り付ける。このまま死んでもいいかも。
駐車場に着くと既に車が停まっていた。
僕専用と言われツネ婆さんが用意してくれた車だ。どんな車が欲しいか聞かれたんだけど、今まで車を買おうと思った事も無かったのでとても困った。
それで、昔お父さんとよく観た海外のドラマで、「飛行機嫌いなマッチョな人が乗っていた車。」ってリクエストをしたら、本当にドラマで観たそのままのカラーリングとデザインの車が届いた。たった1週間で……。
車の中は、ベース車両にプラスして防弾仕様で、シートはリムジン仕様にカスタムしてあった。アメ車は防弾仕様に適していると佐々木さんが言っていた。そうらしい。
割と年代物の車両らしいけど、外見も車内もまるで新車みたいにバリッとしている。フルレストアして、パーツはほぼ新品だって教えてくれた。この車が今でも生産されているのかは知らないけど、きっと新車の価格よりだいぶ高いんだろうなと思ってる。
運転席から佐々木さんが降りてきて、後席のスライドドアを開けてくれる。あれ?佐々木さんはツネ婆さんの傍に残るんじゃ?と言う顔をしていると、「奥様に佐々木が運転してあげてと言われやって参りました。」佐々木さんが説明してくれた。あ、そうか今お義父さんが来てるし、佐々木さんも気を使って2人きりにしてくれているのかもしれないな。
一応僕の専用車にもドライバーさんが居る。SP の人で、金剛さんっていう人。元格闘家らしく、2m近くの身長があって、ガッチガチのマッチョメンだ。っていうか、金剛さんモヒカンにしたら本当にこの車の持ち主みたいになるかも。色黒だし顔立ちもどことなく似ている気がする。あ、いや名前からして既に似てるわ……。
まぁ、というわけで今回は金剛さんは留守番。じゃなくて、追走車に乗ってるから一緒みたいなもんか。という事で金剛さんと目が合ったので軽く会釈する。ちわーっす。
ツネ婆さんが居たら怒られちゃうな。「もう少し偉そうにしたらどうだい?それじゃ近所の兄ちゃんだよ。あんたは深大寺家の婿になるんだよ!」ってね。でも中々慣れないもんだよね。
車内はL字型にシートが配置されていて、流石にキッチンまではついてないけど冷蔵庫がついていて。中には僕が好きな銘柄のビールと、リムジンには定番なのかあの有名な銘柄のシャンパンが入っている。あ、勿論ノンアルコールのドリンクも入ってますよ。華怜が一緒に乗る機会もあるしね。
という事で僕達は車に乗り込み、東雲夫妻の待つ東雲にあるタワーマンションに向けて旅立つのであった。
坂本永遠35歳。両手に華の道中はまさにリムジンに相応しい風景でしょうな。
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