第34話 ある日突然、新たなハーレムルートに進む事もある!?

 多分履いてます、思ったよりもだいぶ早く疑問が解決した。


 車に乗り込んだ僕達は、紅葉さんと弟さん夫婦の住む、有名テーマパークのある土地へ向かっている。ナビの役割を終えたミキちゃんが後部座席にやってきた。一番最後に乗り込んだ彼女が身を屈ませて車内に入る瞬間、謎は全て解けた。ミキちゃんはつけている。という事はアキちゃんも当然つけているだろう。だからあのまま接客しても大丈夫。


 前回向かった病院から割と近い場所に弟さん夫婦の家はあった。

 海の近くにある住宅街の中、少年野球のグラウンドのすぐ隣に立っていた。

 車から降りるとすぐに玄関が開き、深雪さんが出迎えてくれる。

 「先生、遠い所わざわざありがとうございます。華怜ちゃんもまた逢えて嬉しいわ。」深雪さんは華怜と会えたのが嬉しかったようで、華怜に駆け寄ってきてギュッと抱きしめた。





 「それではご案内します。」華怜と深雪さんで、元気だったか?とか大検受かって大学受験するつもりですとか、お互いに軽く近況報告し合うと深雪さんが中に案内してくれると告げてくれた。まぁまだまだ募る話もあるでしょうが、終わってからゆっくりと花を咲かせちゃってください。

 小さい頃に華怜がお世話になった方だって聞いてるし、深雪さんも教師を辞めて寂しかった時期に勉強を教えてたっていうのもあってか、2人ともとても仲良しらしいからね。折角だから2人でお話できるような時間を作ってあげたいなと思う。


 ただね……。今回ちょっとヤバそうな空気が漂ってるんだよね。ここに降り立った瞬間からビシビシ感じてる。星空の綺麗な良い夜だし、街灯も灯っていてとても明るい場所にもかかわらず、この家がラスボスが待つ城にしか見えない。世界の半分をくれるって言われたら間違いなく貰いそうな、そんな雰囲気。


 僕は両手で自分の頬をパチンパチンと2度叩くと気合を入れて玄関を潜った。


 ムワッとむせ返るような、ジメッとした熱気。まるでサウナに入ったかのような熱さが襲ってくる。


 その様子を見て華怜と美弥子が僕の両腕を掴む。

 「ごめん、まだ大丈夫。」2人に断ってまだちょっと離れていてもらう。何があるか分からない、そんな感じがする。2人には僕の後ろを着いてきて貰う。


 深雪さんの先導で、僕達はその熱気の元であろう場所へ向かう。そこに近付くにつれてドンドン熱気が強くなる。

 そして深雪さんが扉を開けた瞬間部屋の中から業火の炎が噴き出してくる。多分僕だけが見えてて感じてるだけだろう。


 「深雪さん、紅葉さんを連れて、一旦部屋から離れて貰ってもいいですか?」炎の中に薄ら紅葉さんの姿が見えた、着物姿で机の前の椅子に座っている。


 「は、はい!!」僕の焦った声で察してくれた深雪さんさんは、慌てて紅葉さん手を引いて部屋から連れ出す。


 僕の横を通り過ぎる瞬間紅葉さんに意識を集中させる。

 うん、やっぱりこの炎は紅葉さんからじゃない。

 通り過ぎる紅葉さんは不安そうな表情を浮かべていた。


 2人が部屋を出た後も、相変わらず部屋の中からは炎が噴き出している。




 よし!!行くか!!!!

 意を決して僕は中に入っていく。あまりの熱さに両手を前に出し顔の前を隠しながら。


 一歩二歩、進む度に熱さが増していく。

 あの机だな、真正面、さっきまで紅葉さんが座っていた机から炎が襲い掛かってくる。

 両手の隙間から前を覗き見ながら、ゆっくりと歩み寄る。


 机の上、何かが置いてある。多分あれだ。


 一歩二歩。ゆっくりと歩を進め、やっとたどり着いた。

 目標の物は写真立てかな?



 「グググググッ。」あまりの熱さに思わず声が出る。

 僕は両手の先に力を集めるように意識して、その写真立てに手を伸ばす。


 「グググググッ!!」写真立てを両手でもつと写真立てに触れている部分から火が吹き出る。

 「うぁああぁあぁあぁ!!!!!」あまりの痛みに悲鳴が上がる。なんとか堪えようとするが我慢ができない。



 「永遠様!!」華怜声が聞こえた直後、背中から力が流れ込む。どうやら後ろから抱きついて助けてくれているようだ。


 僕は手に送る力を更に強めて抵抗する。その力に反発するように写真立てから吹き出る炎がより強くなる。



 「ぐあああああああああああああああああああああああああああ!!」写真立てを持つ手が黒い炎に包まれて、手がドロドロと溶けていく。激痛に声を抑えることが出来ない。



 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!痛いの痛いの飛んでいけ!!痛いの痛いの飛んでいけ!!痛いの痛いの飛んでいけ!!」両手に力を全力で送りながら気休めにおまじないの言葉を口ずさむ。思わず口に出でしまった。それぐらい激しい痛み。両手の皮膚や肉が燃え尽き、骨が見えている。そりゃ痛いはずだ。


 背中から送られる力が更に強くなる。すごい力だ。


 「うおおおおおおおぉぉぉおおおおっ!!」貰った力をドンドン両手に送り込む。


 両手の肉と皮膚がみるみる再生されていき、逆に写真立てから噴き出す炎が光に包まれて小さくなっていく。


 「うおおぉぉぉおおおぉぉぉ!!!!」背中から送り込まれる力が更に強くなり、なんとか余力がある内に決着がつきそうだ。ん?5人分??ミキちゃんが加わって3人分だと思ってたお手伝いが5人分あった。

 ともかく、その全員の力はまだ尽きることは無い。前回華怜の力諸共使い切ってしまい、華怜を危険な目に遭わせてしまってから。送り込んでくれている力の残量が、ある程度意識できるようになった。バラツキはあるが、まだ残量は十分にある。



 「これで終わりだーーー!!!!」写真立てが完全に光に包まれ、ものすごい強い光が部屋の中に充満していた業火の炎をすっかり吹き飛ばしていた。



 「はぁはぁはぁ……。」荒くなった呼吸を落ち着ける。

 後ろを振り返ると、華怜、美弥子、ミキちゃん、そして深雪さんと紅葉さんも僕に抱きついていた。


 「ご!」凄い状況過ぎて僕も言葉にならない声を上げる。ごってなに!?






 その後皆落ち着きを取り戻し話を聞くと、突然僕の手が燃え上がり、ドンドン焼かれていく姿が皆には見えていたという。

 華怜と美弥子とミキちゃんが僕に抱きつき、炎が弱まっていたが、まだまだ火が消えなくて心配になった深雪さんと紅葉さんが更に抱きつき、そこからなんとか鎮火出来たっていつ感じみたい。

 確かにあのままだったら少しヤバかったかもしれない。多分鎮火させられていたとは思うけど。力は使い尽くして、最悪命の危機になっていたかもしれない。そうならなくて本当に良かった。

 

 その様子を遠目に見ていた弟さん夫婦もどうしていいかオロオロしていたそうだ。消防車を呼ぶか警察を呼ぶか、電話を手に持ち震えていたそうだ。



 何はともあれ、全員無事で良かった。さっき調べたけど、他に悪い感じの所は見つからなかった。もしあったとしても、さっきの光で吹き飛ばしちゃったかもね。家全体が光に包まれていたから。多分ついでに結界も張れているんじゃないかな。


 そして、全員で安全を確認すると、「グーーーーー。」5人ともお腹がペコペコだった。全員で顔を見合せゲラゲラと笑った。







 坂本永遠35歳。新たなハーレムルートのフラグが立ちそうな気配……、はないかな?うん、ないと思う。流石にね。

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