第40話 ある日突然、真面目な話をする?事もある。
「まず、今回の、と言いますか、前回からのお礼のお話なんですが。金銭的なお話については深大寺様と大二郎さんとの間でお話が進んでいると聞いております。ですが私から、個人的に永遠様にお礼をしたいと考えております。」深雪さんは真剣な表情で僕に語り始めた。お礼とか良いのに。その分はきっと既にツネ婆さんがしっかりやってくれているはずだから。
「まずは、この2人を永遠様専属メイドとしてお傍に置いて頂きたいのです。」いつの間にか深雪さん側にアキちゃんミキちゃんのミニスカメイド隊が立っていた。え?僕専属?だって東雲家のメイドさんでしょ?
「契約料、そして向こう10年分のお給金は、自動的に彼女たちの口座に振り込まれるようにしています。勿論、お傍に置いて頂ける限りそれは続けさせていただきます。この件は深大寺様にも既に了承を頂いております。もちろん華怜様と美祢子様にもです。それと合わせて、これはこの2人からの強い希望でもあります。永遠様が気に入らなければ、すぐにでも送り返していただいて結構でございます。」深雪さんは笑顔で立つアキちゃんミキちゃんの方を何度も見ながら説明をしてくれた。
「元々この子たちは、私が死んだ後に大二郎さんに寂しい想いをさせたくなくて雇い入れた特別なメイドです。私が元気で家に居られる今となっては、少々目の毒ですので……。」大二郎さんがちょっと気まずそうな顔をしている。
「別に厄介払いというわけではありません。彼女たちの接待力は特筆すべきものです。絶対に永遠様に不快な思いはさせないと思います。どうかお受けいただけないでしょうか?」深雪さんとアキちゃんミキちゃんが同時に深く頭を下げる。あれ?ミキちゃんも着けてない??
両サイドを見ると華怜も美祢子も僕の方を見てニコニコと笑顔を浮かべている。この自然な笑顔は……、了承しろという事かな?まぁ深雪さんからも事前にそういう話がいってるみたいだしね。
「わかりました、お受けいたします。」僕は深雪さんに笑顔で返事をした。別につけてない2人を見てニヤついてるわけじゃないよ?
「ありがとうございます!!」深雪さんとアキちゃんミキちゃん3人で声を合わせてお礼を言ってきた。あれ?なんか2人ともそんなに乗り気なの??まぁこの2人の接待力は既に知っている。本当に最高の接待を受けたしね。使用人専用フロアの部屋にも空き部屋があったし、大丈夫だよね?ツネ婆さんも了承済みって事らしいしね。
「ご両親のお店の方は大丈夫なのかな?お店が忙しくなって、お手伝いしなきゃいけなくなったりするんじゃない?」ちょっとアキちゃんのご実家が心配になって聞いてみた。
「大丈夫です!今日手伝ってくれた方も、これからまた定期的にお手伝いに来てくれることになってますし、すぐにアルバイトを雇わなきゃ!!ってお母さんも張り切ってました。」アキちゃんは嬉しそうに答えてくれた。あのお店は絶対に流行ってないとおかしいんだよね。だってあんなに美味しいんだもん。今まで流行ってなかったのは、たまたま風向きが悪かったのか、たまたまついてなかっただけだよね。これからの発展を心より祈らせていただきます。
「さて、お礼のお話はこういう事なんですけどね。もう一つはお礼というかお願いをしたいことがありまして……。」深雪さんはちょっと申し訳なさそうな顔で横を見る。いつのまにかアキちゃんとミキちゃんに代わり、紅葉さんが深雪さんの横に立っていた。マジシャンかな?
「ついでという訳ではないんですが……。この紅葉ちゃんも永遠様のお傍に置いていただきたいんです。」深雪さんの横で紅葉さんがずっとモジモジとしている。
「え??お傍にというと??」僕は頭の中にはてなマークが何千個も浮かび大運動会を繰り広げている。
「そうですよね、そう思われる気持ちはよくわかります。私もそれはどうなのかな?と思う気持ちは同じぐらいあります。ですが紅葉ちゃんのこの恋する乙女の様な顔を見てるとどうしても背中を押してやりたくなってしまうんです……。この紅葉ちゃんも良妻賢母で知られる有名女学院の生徒でしたから、女学生時代から一通りの教育を受けています。家事や身の回りのお世話を始め、秘書としてもお役に立つようなスキルを多数身に着けています。」深雪さんは少し困った顔をしながらもモジモジしている紅葉さんを見る。
「見た目は女学生の頃の様になってしまったけれど、実年齢は50半ばのおばちゃんですからねぇ……。戸惑われるお気持ちはよくわかります。でも、ごく普通の乙女の様な青春を謳歌できないまま傷だらけの人生を送ってきた、本当に純情な遅れて来た少女なんです。あの2人同様、永遠様がお気に召さなければいつでも叩き返していただいて結構です。少しだけお傍でチャンスを頂けませんでしょうか?華怜様、美祢子様とも話し合いはすんでいらっしゃるようですし……。」年に関する事は僕も実年齢でいえば35歳だし。20歳年上といっても別に僕は気にしないんだけれども。本当に気になるのは華怜と美祢子なんだよね。そう思い2人の様子を伺う。
「先ほど八坂家でも言いました通り、その件に関しましては既に紅葉さんともお話は済んでおります。あとは永遠様のお気持ち次第ですわ。」華怜が僕の背中を押す。いやこんな絶世の美女を前に断れるわけがないんだよ……。見てよあの僕をモジモジとして上目遣いに見つめるあの子。ここまで聞いてやっとあのモジモジを理解した。それだけ僕の事を思ってくれている。誰もが羨む超絶美女から好意を寄せられる事なんてこの先一生ないかもしれないんだぞ。華怜も美祢子も背中を押してくれているこの状況で断る選択肢なんてあるわけがない。ありえない。あろえない。
「わかりました。お受けいたします。」葛藤に葛藤を重ね葛藤モデルになりそうになったところで決断を下す。あくまでも秘書として、下心は出してませんよ。
「お姉さま!!」モジモジとしていた紅葉さんの顔がパッと輝き深雪さんに抱き着く。
「紅葉ちゃん、よかったわね。やっと時間が動き出すわね。」深雪さんが紅葉さんの頭をやさしくなでる。あの日止まってしまっていた紅葉さんの時間が再び動き出す。なんとなくその感覚わかる気がする。
坂本永遠35歳。超絶美女の秘書ゲットだぜ!!そして2人のセクシー専属メイドもゲットだぜ!!疲れているのか、なんかテンションおかしいぜ!!
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