第15話 ある日突然、詳しい話を聞く事もある。

 「じゃぁそろそろ本題に・・・。」凄いお店を堪能した僕達は、いよいよ治療の話をしようとエロ紳士に話を振ってみた。


 「そうですな。大変申し上げにくい事なんですが、実は妻が治療を拒否しております。」エロ紳士は真剣な顔になると、そう打ち明けた。


 「以前パーティーでお会いした後に先生の詳しい話を聞いてからというもの。私自身は治療を強く望んでいて、カネ爺にもツネ婆にもお願いをしていたんです。しかしここにきて妻が治療を拒否すると言い出したんです。」エロ紳士は俯きながら話し始めた。


 「妻が言うには、自分はもう十分に与えてもらった。残りの人生は自分のために使ってくれ、というのです。」

 「今うちに居るメイドなんですが、あの娘達も実は妻が呼び寄せた娘達なんです。」エロ紳士は寂しそうに笑った。

 衝撃発言!あの娘達は妻公認だった!!


 「妻と私が出会った頃、教師だった妻は多くの教え子たちに囲まれていました。」奥さんは学校の先生だったんだね。華怜に勉強を教えてくれてたって言ってたしね。


 「しかし妻は病気に好かれる性質のようで、結婚してすぐに乳癌がみつかりました。早期に発見されたので、放射線治療と化学療法で完治できたんですが。1年後再発してしまい、最終的に乳房切除手術を受けました。そしてその後子宮頸癌がみつかり、最終的に子宮も全摘出してしまいました。その頃になると妻は私を遠ざけよう遠ざけようとするようになりました。しかし私は妻一筋の真面目人間でした。だから私は妻と一緒に病気と闘う道を選んだのです。」エロ爺だとばかり思っていたけど、割と良い人なのかもしれないこの人。


 「その後様々な病気と戦いながら共に歩んできたのですが、子供の出来ない体になってしまった妻はその事を酷く気にしていました。元々子供が好きで教師の道を選んだ妻だったので、ショックがでかかったのでしょう。病気のせいで教師の道を捨ててしまった事も原因の一つと言えるでしょうね。」


 「そしてこの後はツネ婆も知る通り。寂しさを少しでも紛らわせてくれようと、華怜ちゃんが遊びに来てくれるようになりました。妻は久しぶりに教師に戻れたようでとても喜んでおりました。いつか病気が治ったら又教師をしたいと、頑張って闘ってきました。しかしステージ4の癌はそう簡単に許してはくれないようです。既に余命半年の宣告を受けました。」

 「治療の道を捨て、自宅に帰ってきて。今はこんな状態です。後は死ぬのを待つばかり。そこで妻は終活を始めたのです。」旦那の幸せを望んであの娘達を呼び寄せたのか。確かに幸せそうな顔で見てたなぁ。やっぱエロ紳士じゃないか・・・。


 「でも私はまだあきらめたくないのです。あの世目前だったツネ婆もこんなに元気になって、酸素ボンベに繋がれたカネ爺もシャキッとして、そんな光景を目の当たりにしたら、聞いていた話も全て信じられたのです。」


 「お願いします先生。どうか妻を救ってください。治療を拒否する妻を治療してくれというのは大変失礼な事だと思います。ですが私は妻が居ないとダメなんです。妻が居たから今まで頑張ってこれたのです。差し出せるものはすべて差し出します。私が最後に妻の説得を試みます。その後で治療を行っていただけないでしょうか?」エロ紳士は既にソファから降りて床に頭をこすりつけながら僕にお願いをしている。そんなの断れる訳ないじゃない。元からそのつもりできてるんだし。


 「頭を上げてください。元からそのつもりですよ。説得も僕が同席します。」僕も床に膝をつき老紳士の身体を起こす。もうエロ紳士とか言わないから一緒に頑張ろう。


 「ありがとうございます。」老紳士は溢れる涙を垂れ流しながら僕の手を握ってくる。奥さん大好きなんだな。ノーパンメイドも好きみたいだけど。まぁあれは嫌いな人も居ないだろうけど。うん。




 花咲永遠35歳、ノーパンメイドは至高の存在。まずは奥さんの説得、そして治療。全力で頑張ります。

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