第18話 ある日突然、気付く事もある。
「僕は生まれ変わっても又深雪さんと一緒になります。深雪さんが又病気になったら、僕も一緒に病気と闘います。ずっとずっと一緒に。1人では耐えられないような事でも僕達2人ならきっと乗り越えられます。だからこれからもずっと一緒に闘っていきましょう。だって結婚する時に誓ったじゃないですか。富める時も病める時もって。2人で誓ったあの誓約、僕は必ず守ります。」老紳士は女性の手を握りしめ、泣いてる姿を僕達に見られるのも気にせずに熱く宣誓する。
「大二郎さん、こんなにも面倒な私で本当に良いんですか?私なんかよりも、若くて美しくて気の利く女性は星の数ほどいるでしょう?先日呼んだ2人はいかがですか?大二郎さん好みの可愛い子達だったでしょう?」女性は老紳士の手を握りながら、真剣な眼差しでまっすぐにみつめる。
確かにあの二人は凄く美人で、スタイルも良くてめちゃくちゃセクシーだった、しかも気が利くしサービスもエレガントだった。非の打ち所もないほど完璧な接客だったね。うん、最高の時間でした。
なんか隣で華怜がすごく怖い顔で睨んでるんだけど、僕の心の声読んでる??
僕は華怜にあんな格好でウロウロして貰えたらもっと嬉しいんだけど。チラッ。あれなんか恥ずかしそうな顔してるけど、これマジで心読んでない??
「そ、そりゃお客さんとして接待を受けるなら最高じゃよ。でもあくまでもお客さんとしてじゃわい。一緒に未来を歩きたいのは世界中でただ1人深雪さんだけなんじゃ。」なんかこの紳士言い訳する時いつもこの口調になるな、とてもわかりやすい。
「もう、後で返品するなんて言わせませんからね。一生付きまとってやるんだから。」女性は少し恥ずかしそうに老紳士に抱きついた。
ちょいちょい、華怜が僕の袖を引っ張る。
華怜の方を見ると、邪魔しちゃ悪いからそっと抜け出しましょう、と言っている。いや、言ってないけどわかる、え?もしかしてこれテレパシー??もしかしてさっき僕の心読んだのこれ??僕はなんだかドキドキしてしまう。
そして、このドキドキを気付かれないようにこっそりと華怜について部屋を出ようとする。
その時なんか気になったんだな……。
よく病室に飾ってある折り紙で折った鶴。快癒を願って一つ一つ丁寧に、それを1000羽折って糸で繋げてある。
所謂千羽鶴だよね。
さっきまで病気の事に集中してて、しかも医療機器に囲まれてたからそんなに目がいかなかったんだけど、看護師の人が機器を片付けてる今ハッキリと気になった。
どうもおかしい。
病気が治りますようにって言う願いを込めて折るものだよね?
それにしてはなんだか黒く見えるんだよこれ。いや、実際折り紙はカラフルな明るい色してるんだけど。なーんか黒いモヤモヤが見えるんだよね。
部屋から出ようとしてたのに、ボケーッと立ち尽くしてるもんだから華怜が強めに袖を引っ張る。
「なんか、あの千羽鶴変じゃないかな?」ハッとして華怜に慌てて聞いてみた。
「何処にでもある、と言うのはおかしな話ですけれど。普通の千羽鶴に見えますが。永遠様には変に見えるのですか?」華怜が首を傾げる。
「なんかあの千羽鶴、モヤモヤしてるんだよ。黒い雲がかかってるみたいに見える。」そのモヤモヤ雲が部屋の天井を覆い尽くす勢いで強くなってくる。あれ?なんかヤバくない!?
振り返るとお2人はまだいい感じの雰囲気で抱き合っている。いや、でもなんかこれ非常事態だと思うんだ僕。
「あの……お取り込み中のところすみません。この千羽鶴なんですが、どうされたんですか?どなたからのお見舞いの品でしょうか?」明らかにヤバそうだけど、他に何も飾られてない部屋にこれだけ飾られているぐらいだから、とても親しい人からのお見舞いだよね?きっと。
「その千羽鶴は、私の妹からのお見舞い品なんです。」女性は嬉しそうに話してくれた。邪魔しちゃってすみません、でもどうやら緊急事態です。
「私が初めて入院してから、毎回妹は夜なべして折ってきてくれるんですよ。妹とは昔からとても仲良くしていて、今でもしょっちゅうお見舞いに来てくれるんです。」女性は本当に嬉しそうに話してくれた。いや、でもこれ多分ヤバいやつなんですけど……。
「あの……。大変言い難いことなんですが。」なんて説明しよう、これ僕の予感が本当ならとてもヤバい物です。
「多分、多分なんですけど。いや、9分9厘、十中八九、奥様の病気の原因はこれです……。」こんな事言いたくはないけど、絶対これだって言う予感がするんだ。
全員言葉に詰まる。そりゃそうだよ本人ものすごく嬉しそうに話してたもの。仲良しだって。
「ちょっとだけ失礼します。」そう言うと僕はその千羽鶴に手を伸ばす。
千羽鶴からは相変わらずモヤモヤと雲が出てくる。
とりあえず、手に取って調べてみよう。そうすればハッキリとするはず。
そして僕が千羽鶴に触れた途端。
ビカーーーーーーッ!!
僕の掌から強烈な光が出る。
天井に溜まっていた黒い雲がその光を消そうと一気に集まってきて僕の掌に絡みつく。
それと同時に僕の中にある光の元?と言うか血液?生命力?魔力?もうなんて言うのかわからないけど、それが掌に向かって流れ込む。
「ギャーーーーーーー!!」物凄い痛みで、僕も思わず悲鳴をあげてしまう。
僕の手首を3m ぐらいのプロレスラーが両手でギューって握って、そのままグルグル振り回して手首が毎秒5回転ぐらい捻じられていくぐらい痛い。知らんけど。
あまりの激痛で手を離したいんだけど、光も雲も許してくれない。
そして僕の中から何かが物凄い勢いで流れ出しているもんだからもう堪らない。
「ああぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」もう何も考えられないし言葉も出てこない。
「永遠様!!!!」ぽやん、背中に心地よい感触。
急激に薄れゆく意識の中に暖かな感触だけが救いだった。
え?いや、ギリギリ耐えてる。
なんだ?いや、イケる。
「うおおおおぉぉ!!」黒いモヤモヤを圧倒するぐらいの強い光が出て、千羽鶴から出てきた雲はついに消え去った。
1時間くらいやってたんじゃないかっていう程フラフラだった。
華怜が支えてくれてなんとか立っていられるぐらい。
グラッ……。
あれ?華怜が!!
「華怜!!!!」僕の身体を支えたまま崩れていく。
なんとか膝をつき自分と華怜の身体を支える。
その後、外に控えていた佐々木さんと美祢子が来てくれて、僕と華怜を連れ出してくれた。
客室へ連れられて、2つ並んだベッドに横にならせてもらう。
初めて華怜と同じ部屋で寝るなぁ。と、なんか突然呑気な事を考えていた。
いや、それどころじゃない。華怜を何とかしないと!
このままじゃダメだって気がしてきた。
身体を起こして華怜の手を握る。
僕の中の力を華怜に分けてあげられれば……。
ダメだ、力が出ない……。
何か食べないと、何か食べて力をつけないとダメだ。
「美祢子!!肉だ、肉もってこい!!ジャンジャンもってこい!!」そんな何処かで聞いた事があるセリフが自然と出てきた。
「わ、わかったよ!お兄ちゃん!!」美祢子はそう答えると部屋から飛び出して行った。
ダメだ力が出ない、僕は華怜の手を握りながらベッドにもたれ掛かる。
さっきの、誰のセリフだっけ?
あぁ〜、お父さんだ。僕が大好きなハンバーグのお店に行くと必ず言ってた。
そして食べ終わると「な?美味しい肉を食べると力が湧いてくるだろう?食えば食うほど強くなる!!」そう言って力コブを出してたっけなぁ。
それを見て家族みんなで笑うんだ。美祢子も凄く嬉しそうに、お母さんも凄く嬉しそうに。
花咲永遠35歳。大好きな家族の事を久し振りに思い出しました。
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