6.共通点が多かったらしくて。
「ふふふ。まさか、エヴィさんがたっくんを狙うなんてね。それに日本語もしっかりと話せているようだけど……?」
「狙っているかは、いまは保留とさせてもらうけど。ある事情があって、日本語が話せないフリをしてるのは事実かな?」
「へぇ……? ここにきて、狸になるんだ」
「なってるつもりは、ないかなぁ~?」
「…………」
「…………」
女子二人は、誰もいなくなった通学路でにらみ合う。
互いを牽制するような言葉を掛け合い、しかし最後は黙ってしまった。――シン、と静まり返った空間の中で、先に口を開いたのは知紘。
彼女は一つ息をついてから、エヴィにこう訊ねたのだった。
「それで? ……たっくんの、どこが好きなの」
核心に迫る問いかけ。
それを受けて、エヴィは数秒の間を置いてから答えた。
「や、優しくて、その……趣味が合うとこ、かな?」
顔を真っ赤にして、恥ずかしがりながら。
それを見て、知紘は雷に打たれたような衝撃を受けた。そして、
「あ、ははは、あっはははははははははははは!!」
突如として笑い出し、エヴィへと歩み寄る。
知紘は口元に笑みを浮かべて、ぬらりとした動作で相手の肩に手を置いて言うのだった。
「わかりみ!」――と。
◆
――予鈴が鳴った。
エヴィと知紘の両名は、まだやってこない。
ボクは不安になりつつ窓から校門の方を見るが、あいにく死角になっていて窺い知ることはできなかった。
そうして数分が経過し、焦りが増してきた頃だ。
「せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっふ!?」
知紘が元気よく叫びながら教室に飛び込み、あとに続く感じでエヴィもやってきたのは。クラスメイトの視線を集めた二人は、大きく肩で息をしていた。
どうやら、おおよそ1キロの道のりを全力疾走してきたらしい。
ギリギリ間に合ったのは良かったが、それ以上に驚いたことがあった。
「それじゃね、えっちゃん! またあとで!!」
「ん!」
二人はそう声を掛け合い、軽く拳を打ち合わせたのだ。
……え、なんすか? その息の合ったやり取り。
「なにがどうした、っていうんだ……?」
ボクは先ほどまでの険悪な空気とは真逆のそれに、思わず風邪を引きそうな感覚を覚えた。しかしながら、二人が仲良くなれたのなら、それは結果オーライ。
二人の接点がどこかは分からないが、エヴィに理解者が増えるのはいいことだ。
そう思っていると、担任教師が教室に入ってくる。
日直が号令をかけて、一日が始まる。
ただ、この時は思いもしなかったのだ。
今朝の出来事が、今日一日の騒動の始まりだったなんて……。
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