8.陽キャ VS 陰キャ。







「いやぁ、兄貴。アタシとしてはぁ、やぶさかではないんだけどぉ~? ちらっ」

「誤解ですよ、八紘さん。ボクと知紘さんは『友達』です」

「うむ! わざわざ強調したのだから、そうなのだろうな!!」



 ひとまず誤解を解きつつ、ボクたちは青葉高校自慢の中庭へ。

 晴天の下。しなだれかかってくる知紘を回避しつつ、到着したので全員が座れるベンチを探して腰かけた。――何故か、ボクが真ん中になってしまったのだけど。

 だが、ひとまずこれで八紘さんと話ができる。


 自分とは合わないであろう相手、というのは失礼な気はした。

 だけど、これで少しはエヴィの気持ちに近付けるかもしれない。ボクはそう考えて、ガタイの良い上級生を真っすぐに見つめて言った。



「……ご、御趣味は!?」

「たっくん、それじゃあお見合いだよ!?」



 言葉に迷った結果、知紘からツッコミを受けてしまった。

 くそ、こんなつもりでは……!



「はっはっは! すまない、杉本くん! 俺には心に決めた女性がいる!!」

「ほら、兄貴は冗談が通じないんだから!!」

「ホントだな……」



 気持ちの良く笑い飛ばしながら、八紘さんが真面目に答えた。

 ボクは知紘の言葉を聞き、改めて納得する。しかし、そこで思った。

 もしかして、八紘さんは八紘さんで、あまり人付き合いが得意ではないのではないか。そう思って、こんな話題を振ってみた。



「つかぬことをお聞きするんですけど、八紘さんは何部に……?」

「あぁ、野球部だ! これでも、主将を任されている!!」

「めっちゃ陽キャの中心だった……!」



 なんだろう、不思議な敗北感。

 ボクががっくりうな垂れると彼は、気にするなと言わんばかりに肩に手を置いた。そして、何度も頷きながらこう言ってくれる。



「大丈夫だ。それもまた個性! 俺のように声の大きいバカもいれば、キミのように思慮深い人物もいるだろう! それぞれが、それぞれの居場所にいればいい!」

「人ができている……!!」



 見せつけられる人間力の差。

 ボクはいま、圧倒的な陽のオーラを浴び続けていた。

 あまりに眩しい。闇の一族であるボクには、あまりにも眩しかった。



「気をしっかり持って、たっくん!」

「う、うぅ……」



 圧に負かされたところを知紘に支えられる。

 いいや、駄目だ。ボクには、駄目だ……。



「さて、そろそろ昼休みも終わってしまうな!」

「あ、はい……」



 目眩を堪えていると、八紘さんがそう言って立ち上がった。

 どうやら今日の訓練はここまでのようだ。ボクはほんの少し安堵して、ふと中庭の様子を確認した。すると、思わぬ人物を発見する。



「あ、エヴィ……?」

「なにぃ!?」



 間違いない。

 どうやら、クラスメイトと雑談しているようだ。

 ボクは話しかけるかどうか迷ったが、それ以上に挙動不審になった人が――。




「くぁwせdrftgyふじこlp」



 ――八紘さんだった。

 彼は発音不可能と思われる声を口にして(代わりに『ふじこ』とする)、後退りをしながらその場を離れてしまう。視線はエヴィに向かっているが、ボクには分かった。彼は今、視界がぐらぐらと回っているであろうことが。



「あ、あの……」

「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」



 声をかけたら、その瞬間に八紘さんは弾けた。

 背を向けて全力ダッシュ。中庭から見事なまでの逃亡劇を見せたのだった。



「どういう、こと……?」

「さぁ、なんだろう……」



 ボクと知紘は互いに顔を見合わせて。

 しばし、その場で首を傾げるのだった……。




 



――――


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