エンディング

1.失恋との向き合い方。









「ところで、こいつらどうする?」

「んー、こいつらだけじゃなくて。斉藤も探さないとね」




 拓海の慈悲を受けて、軽傷で済んだ男子生徒たちを見て。

 知紘と未希は、そんな話をしていた。



「とりあえず、教師に突き出す、ってことで大丈夫? 斉藤は追々で」

「そうだねー」



 友人を集団リンチにしようとした相手だ。

 手心を加える必要はない。そう思っていた女性陣。

 しかしながら、彼らを見て少しばかり思うところがある人物がいた。それは、



「いいや、待て! 俺に彼らと話をさせてくれ!!」

「は……? 八紘、なに言ってんの」

「うむ! 我儘を言ってすまない!」



 天野八紘だった。

 彼はいつものような大声でそう言うと、了承を得るより先に男子生徒のもとへ向かう。そして、彼らと視線を合わせるようにかがんで言った。



「キミたちの気持ちは、よく分かる……!」



 いつにない、沈んだ声色で。

 男子生徒たちはそれに気付いたのか、各々に顔を見合わせた。いつもの天野キャプテンとは様子が違う。それだけで、彼らにとっては衝撃だったのだ。

 そして、そんな男子生徒たちに八紘はこう告げる。



「失恋とは……! 時に、人を迷わせるのだからな……!!」



 ――大号泣しながら。


 そう言って、八紘は近くにいた二人と肩を組んだ。

 嗚咽を漏らしながら。顔はぐしゃぐしゃで、鼻水も出ていた。



「俺もエヴィさんが好きだった! そんな彼女が本当の気持ちを隠していると聞いて、協力を申し出た! しかし、杉本くんへの気持ちを耳にした瞬間、俺は協力を迷ってしまったのだ!!」



 そして、そう告白する。

 自分も同じだ、と。


 自分もそれだけエヴィのことが好きであり、諦められなかった。

 しかし、彼女が選んだのは自分ではない。



「だが、そこで俺は考えた! 本当の意味でエヴィさんが好きであるならば、彼女の望むことをするべきだ、と!! 祝福し、認めて、前を向くべきだと!!」



 そう言ってから八紘は、後輩たちに問いかけた。



「キミたちはまだ、少し若かっただけだ! 俺は信じているぞ! だから、これからは一緒にエヴィさんと杉本くんのことを応援しようじゃないか!!」――と。




 そこにはきっと、キミたちは一人じゃない、という意味があった。

 一人で抱え込むから苦しいのだ。


 だったら、同じ苦しみを分かち合おうじゃないか。

 八紘は熱くそう語ったのだった。

 すると――。




「あ、天野先輩……!」




 男子生徒の一人が、唐突に泣き始めた。

 そして、それが伝播していく。


 気付けば男子生徒たちは、全員が八紘のように号泣していた。



「うむ! うむ!! いいぞ、これでキミたちも大人になったな!!」




 そんな全員と熱い抱擁を交わす八紘。

 ある意味では、感動的な場面だったのだろう。しかし、




「ねぇ、未希ちゃん。あれは、なに……?」

「……うーん、馬鹿で良いんじゃない?」

「そだね……」




 それを見る女子二人からは、どこか冷めた視線を受けることになるのだった。






 

――――

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「魔法学園の嫌われ者、才能を教員から嫉妬され退学処分となり冒険者に。~でも相手はそれで窮地に追いやられ、こっちは自由になれたので楽しく生きたいと思います~」


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