11.先輩女子――綾部未希。







「まったく。アイツら、ホントに下らないね」

「あの、貴女は……?」



 ボクが訊ねると、その女子生徒は不機嫌な態度のままこっちを見た。

 ヤバい。これはもしかしたら、ボクの一番苦手な手合いかもしれない。そう感じ、思わず一歩後ずさる。すると相手も態度が顔に出ていたことに気付いたらしい。大きなため息をつくと、手をひらひらさせながら言った。



「あー、そんな警戒すんなし。とりま、ケガはない?」

「え、えぇ……とりあえずは」

「そ。良かった」



 そう答えると、彼女は満足げに頷く。

 笑顔はとても明るくて、屈託のない印象だった。

 先ほどまでの鬼気迫る雰囲気とは打って変わって、女の子らしい。失礼な話をしてしまうと、第一印象から真逆になっていた。


 そして、気になっていたことがある。

 ボクは思わず、こう訊ねていた。



「あの、どうして助けてくれたんですか?」

「は……? どうして、って?」

「あぁ、いや――」



 首を傾げる女子生徒。

 ボクは、少し緊張しながら続けた。



「ボクみたいな陰キャをどうして、助けたんですか? ――貴女はどちらかといえば、斉藤みたいな、その……キラキラしてる印象というか……」



 ――そう、それだ。


 彼女は、どう見てもボクとは真逆。

 陽キャグループの中心にいそうな印象を受けたのだ。

 それなのに、何故ボクのような陰キャを助けたのだろうか。



「…………は?」

「あ、いえ。だから――」



 意味が伝わらなかったのだろうか。

 ボクはそう考えて、言い方を変えようとした。だが、それより先に――。



「なに、アンタ。ウチがそんなの気にしてる馬鹿だ、って言いたいわけ?」

「え!? あ、いや違います、けど……」

「いいや、違わないね。どうもアンタは、人を見た目で判断しすぎてる。例えば、さっき言った陰キャだとか、陽キャだとか、そういうの」



 相手から、厳しい指摘が飛んできた。



「つまりアンタの目には、ウチと斉藤とかが『同類』って、見えてるわけでしょ? それってさ、失礼だと思わないの。あんなイジメする奴と、同じに見る、ってさ」

「あ、その……」



 ぐうの音も出ない。

 たしかに、さっきの発言はボクの失言だった。

 しかし謝るよりも先に、彼女は重ねてこちらに指摘する。



「そもそも、陰キャとか陽キャって、なに? ウチはそんなの気にしたことないけど、そっちの話が分からない、って言ったら『これだから陽キャは~』って言われたことあるよ。でも、それ気にしてんのって、そっちだけじゃね?」

「あ、う……?」

「あー……ごめん、言いすぎた。この前、同じようなこと言われたから」

「い、いいえ。こちらこそ、すみません」



 だが、そこでふと我に返ったのか。

 彼女は素直に謝罪を口にした。ボクも、今だとばかりに頭を下げる。そして、



「それに、ありがとうございました。助けてくれて」

「ふーん? ありがとう、ってのは言えるのか。そこだけは、マシだね」



 感謝も伝えると、女子生徒は少し満足そうに笑った。

 ボクはどこか、目から鱗が落ちるような感覚で彼女を見てしまう。――と、その時だった。



「たっくんに未希ちゃん! 大丈夫だった!?」

「え、知紘……?」



 息を切らしながら、知紘がその場に現れたのは。

 ――ん、というか『未希ちゃん』って?



「おー、知紘。大丈夫だよ、ケガもなし!」

「ありがとう、未希ちゃん! お陰で助かったよ!」

「いいっていいって! 妹分のお願いだからね!!」



 やけに親しげに会話をする知紘と、先輩女子――未希さん。

 ボクが首を傾げていると、友人がそれに気付いたらしい。こちらに向かって、恩人である女子生徒を紹介してくれたのだった。



「えっとね、この人はアタシの幼馴染みの未希ちゃん!」



 そして、彼女の紹介を受けて。

 未希さんは晴れやかな笑みを浮かべて、名乗るのだった。




「ウチは2年4組の綾部未希! よろしくね、拓海!」――と。




 






――――

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