第3章
1.秋の大型連休、始まる。
――どうもみなさん、天野知紘です。
本日はアタシが、私立青葉高校の校舎裏からお送りいたします。
何を、と問われればそれは決まっていた。
今日の朝、たっくんこと杉本拓海の下駄箱に一通のラブレターが投函されていたのである。そして時は放課後、人気のない校舎裏。
盛り上がらないはずがない、といった話。
まだ相手の女の子は現れていないけど、たっくんはボンヤリと空を見上げて待っていた。なに考えているのだろう。――いや、たぶんラノベの新刊のことだ。
「あ、あの……!」
「ん?」
さあ、そんなタイミングで。
ラブレターの送り主と思しき女子生徒が、一人で現れた。
容姿は中の上。平凡よりも、やや非凡。このレベルの女子に告白されれば、並の男子なら間違いなくドキマギすること間違いなし。
しかし、たっくんは特に狼狽えた様子もなく言葉を待っていた。
「わ、わたしと付き合ってください……!」
そうして待つこと十数秒。
女の子はついに意を決して、その言葉を口にしたのだった!
――さぁ、どうするのよ。たっくん!!
「あー……ごめんなさい。ボク、好きな人いるから」
――断ったああああああああああああああああああああああああ!!
やはり、ほぼ迷いなく相手を一刀両断。
普通の男子にはできないことを平然とやってのける! ――そこにシビれる、あこがれるゥ!!
「そ、っか。えへへ……ありがとう。きてくれて」
「いや、うん。断るなら、ちゃんと言わないとだし」
「うん……! それじゃ、さよなら!」
さて、そんなこんなで女の子は退場した。
アタシはその場で大欠伸をした彼のことを確認。そして、周囲に誰もいないことも確かめてから、ゆっくりと草葉の陰から出るのであった。
◆
――今月、三回目だ。
いや、正確には髪を切ってメガネを変えてから三回目。
「みんな、急にどうしたんだ?」
ボクは大欠伸をしつつ、そう呟く。
その時だった。
「やあやあ、モテモテですなぁ? たっくん!」
「なんでいるんだ、知紘……」
友人である天野知紘が、後方から抱きついてきたのは。
ボクはそれを軽く振り解いて、大きくため息をつくのだった。もしかして盗み見ていたのか、という質問を飛ばすより先に彼女は言う。
「いやー、みんなそりゃ必死ですよ。今週末は、秋の大型連休だし」
「そういえば、そうだけど。だからって何で……?」
「たっくんがその間に、フリーでなくなる可能性を考えたのでは?」
「はぁ……?」
まるで心を読んだように、ボクの疑問に答える知紘。
しかし、その内容というものがイマイチ腑に落ちはしなかった。大型連休があるのは事実だが、後半の意味が分からない。
ボクに彼女ができる確率とか、とてつもなく低いことを知らない知紘ではないはずだった。それなのに、どうしてそのようなことを言うのか。
「ありゃ~……? これは、相も変わらず重症ですなぁ」
「…………は?」
「いや、みなまで言うな。それこそ、たっくんだ。うん」
「…………」
そう考えて首を傾げていると、彼女はどこか達観したようにそう続けた。
ますます意味不明。ボクはもう一つため息をついて、気持ちを切り替えることにした。そして、知紘にこう訊ねるのだ。
「ところで、今年は四連休だけど。知紘はなにか予定あるのか?」
「ないよー。たっくんは、なにかある?」
「ボクにあるわけないだろ」
「たしかに!」
すると、またも茶化される。
ボクは少しムッとしたが、事実なので言い返せない。
「じゃあ、あとはえっちゃんだね! たぶん、あの子もフリーだよ」
「あぁ、それなら――」
知紘の言葉に、ボクは改めて今後の予定を考える。
そして、欠かせない彼女のことを思いながら、こう言うのだった。
「みんなで、遊び倒すとするか!」――と。
――――
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