第3章

1.秋の大型連休、始まる。








 ――どうもみなさん、天野知紘です。

 本日はアタシが、私立青葉高校の校舎裏からお送りいたします。


 何を、と問われればそれは決まっていた。

 今日の朝、たっくんこと杉本拓海の下駄箱に一通のラブレターが投函されていたのである。そして時は放課後、人気のない校舎裏。


 盛り上がらないはずがない、といった話。

 まだ相手の女の子は現れていないけど、たっくんはボンヤリと空を見上げて待っていた。なに考えているのだろう。――いや、たぶんラノベの新刊のことだ。



「あ、あの……!」

「ん?」



 さあ、そんなタイミングで。

 ラブレターの送り主と思しき女子生徒が、一人で現れた。

 容姿は中の上。平凡よりも、やや非凡。このレベルの女子に告白されれば、並の男子なら間違いなくドキマギすること間違いなし。

 しかし、たっくんは特に狼狽えた様子もなく言葉を待っていた。



「わ、わたしと付き合ってください……!」



 そうして待つこと十数秒。

 女の子はついに意を決して、その言葉を口にしたのだった!


 ――さぁ、どうするのよ。たっくん!!





「あー……ごめんなさい。ボク、好きな人いるから」





 ――断ったああああああああああああああああああああああああ!!


 やはり、ほぼ迷いなく相手を一刀両断。

 普通の男子にはできないことを平然とやってのける! ――そこにシビれる、あこがれるゥ!!



「そ、っか。えへへ……ありがとう。きてくれて」

「いや、うん。断るなら、ちゃんと言わないとだし」

「うん……! それじゃ、さよなら!」



 さて、そんなこんなで女の子は退場した。

 アタシはその場で大欠伸をした彼のことを確認。そして、周囲に誰もいないことも確かめてから、ゆっくりと草葉の陰から出るのであった。









 ――今月、三回目だ。

 いや、正確には髪を切ってメガネを変えてから三回目。



「みんな、急にどうしたんだ?」



 ボクは大欠伸をしつつ、そう呟く。

 その時だった。



「やあやあ、モテモテですなぁ? たっくん!」

「なんでいるんだ、知紘……」



 友人である天野知紘が、後方から抱きついてきたのは。

 ボクはそれを軽く振り解いて、大きくため息をつくのだった。もしかして盗み見ていたのか、という質問を飛ばすより先に彼女は言う。



「いやー、みんなそりゃ必死ですよ。今週末は、秋の大型連休だし」

「そういえば、そうだけど。だからって何で……?」

「たっくんがその間に、フリーでなくなる可能性を考えたのでは?」

「はぁ……?」



 まるで心を読んだように、ボクの疑問に答える知紘。

 しかし、その内容というものがイマイチ腑に落ちはしなかった。大型連休があるのは事実だが、後半の意味が分からない。

 ボクに彼女ができる確率とか、とてつもなく低いことを知らない知紘ではないはずだった。それなのに、どうしてそのようなことを言うのか。



「ありゃ~……? これは、相も変わらず重症ですなぁ」

「…………は?」

「いや、みなまで言うな。それこそ、たっくんだ。うん」

「…………」



 そう考えて首を傾げていると、彼女はどこか達観したようにそう続けた。

 ますます意味不明。ボクはもう一つため息をついて、気持ちを切り替えることにした。そして、知紘にこう訊ねるのだ。



「ところで、今年は四連休だけど。知紘はなにか予定あるのか?」

「ないよー。たっくんは、なにかある?」

「ボクにあるわけないだろ」

「たしかに!」



 すると、またも茶化される。

 ボクは少しムッとしたが、事実なので言い返せない。



「じゃあ、あとはえっちゃんだね! たぶん、あの子もフリーだよ」

「あぁ、それなら――」



 知紘の言葉に、ボクは改めて今後の予定を考える。

 そして、欠かせない彼女のことを思いながら、こう言うのだった。





「みんなで、遊び倒すとするか!」――と。







 

――――


カクヨムコン参戦中!!


面白い!

続きが気になる!


と思っていただけましたら、☆で応援や作品フォローよろしくです!!

励みになります!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る