3.前回重めなので、今回軽めに。







 ――さて、良い話で終わればいいのだけれど。



「雨、止まないね……」

「そうだね……」



 非常事態継続の報告です。

 ボクとエヴィは窓の外が嵐になっているのを確認し、困惑していた。テレビやネットの情報だと、この風雨は明日の明け方まで続く、とのこと。

 しかし、そうなると色々困る。

 明日はもちろん学校が普通にあるし、何よりエヴィを帰さなければ。ここはひとまず、彼女の両親に迎えに来てもらうしかなかった。



「あの、ご両親に頼めないかな……?」

「それが実は、ママが国際免許持ってなくて。パパも今はドイツで仕事してるし、迎えに来てもらうのは無理、かも」

「……マジで?」



 ――どうすんの、これ。

 ひとまずの状況を確認してから、ボクはさらに困惑した。

 だが、まずは落ち着かなければならない。ダメもとでオリビアさんに電話してみて、判断を仰ごう。考えるのは、それからだった。






『あぁ、それなら杉本くんにお願いするわ』

「はい……?」

「ちょっと、ママ……?」



 ――が、しかし。

 スマホ越しの彼女は、ケロッとした感じに言った。



「いやいやいや。男の一人暮らしに、娘さんを預けるのはどうなんですか?」

『大丈夫よ。もしものことがあったら、貴方に責任取ってもらえば良いんだから』

「ママ、それは冗談でも冗談に聞こえないよ?」

『あらあら。私はひとつも冗談言ってないわよ?』

「えぇ……」

『それじゃあね~!』



 軽すぎる。非常に、軽すぎるのだけれど。

 通話を切って、ボクとエヴィは顔を見合わせた。そして、一晩共に過ごすことが確定したと意識して、互いに顔を逸らす。

 顔が熱い。

 意識するなという方が無理だ。

 でも、なにがなんでも間違いがあってはいけないのだ。



「あ、あの……杉本くん?」

「ど、どうしたの?」

「えっと、その――」



 必死に理性を働かせていると、彼女は遠慮がちに。

 ボクの服の袖を摘まんで言った。



「不束者ですけど、よろしくお願いします……」――と。



 潤んだ瞳で、こちらを上目遣いに見ながら。



 思考停止。

 再起動不可能。





「ぶはっ……!?」

「す、杉本くん!?」




 ボクはそこで、鼻血を吹き出して倒れた。

 意識が遠くなっていく。最後に聞こえたのは、エヴィの必死な声だった。





 

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