第49話:ゼニモーケ王国とゲバニーゼ帝国
ジョーイが豚に対して反論したわけだが、結局それは無駄に終わった。
要は報奨金なんて出さないんだとさ。
ボルケーノが四天王の1人だって言っても、
「そんな情報、こちらには入っていないな。勇者はどこからそんな情報を?まさか、倒した魔族本人が言っていた、とでも?
そしてそれを信じたと?」
だとさ。
ジョーイも、「ミーシアもそう言っている」と反論したわけだが、
「魔族の言うことなど信じる価値なし」
と聞く耳も持たねぇ。
このクソ豚。マジでムカつく。
「しかし勇者よ。それほど金が欲しいならばこちらとしても都合が良い。
これから勇者には、別のことをやってもらう。それが成功すれば、報酬は思いのままだぞ?」
ん?今こいつ、思いのままっつったか?
なんだよ豚。お前、良い豚じゃん。
豚の言葉を聞いたジョーイは、俺へと視線を向ける。
肩をすくめる俺を見たジョーイは、頷いて豚に問いかける。
「それで、やることとは?」
「話が早い。なに、勇者にはこれから、ゲバニーゼ帝国に向かってもらう」
ん?ゲバニーゼ帝国?どこそれ?
「ゲバニーゼ帝国は近年、魔族と手を組んでいるという噂がある。それが事実ならば、我がゼニモーケ王国にとっては危険なのだ。
勇者にはその事実を調査し、対処してもらう」
あ、この国、ゼニモーケ王国っていうんだ。
そして帝国。
あれだな。だいたいの物語では、帝国と名の付く国は裏で悪さしてるのが相場だからな。
あー、読めたわ。
この豚、帝国の悪事を
そうすれば自分の懐が暖まるから、ジョーイへの報酬も糸目をつけない、と。
いや、コイツのほうが
でもまぁ、報酬さえ入ればどの国がどうなろうが知ったこっちゃねぇわな。
俺が頷いたのを見たジョーイは、
「承知いたしました」
そう豚へと返事をした。その後俺達は、そのまま城をあとにした。
「いや〜、この国って、ゼニモーケ王国って言うんだね!」
城からの帰り道でのジョーイの感想がこれだ。
相変わらず、俺と被ってやがる。
(自分の国の名前すら知らないジョセフ様も可愛い!)
とか思っていそうなミーシアの表情にも段々と飽きてきた自分がいる。
「ミーシア、ゲバニーゼ帝国ってのは、ここからどのくらいのとこか知ってるか?」
「そうだな、ここから馬車で、2日ほどかかると思う」
俺の問いかけに、真面目な表情に戻ったミーシアが答える。
これはあれだな。
途中で帝国のお姫様とか助けちゃうイベント起きるな、こりゃ。
よし。誰かが襲われてたら、真っ先に俺が助けよう。
俺は心の中でそう誓った。
絶対に、ジョーイの手柄になんかさせない。
もう、俺の気に入った女がジョーイに惚れるのは避けたい。
「じゃぁ、早速向かおうぜ。っとその前にジョーイ、頼みがある」
「なんだい?キンジ?」
「ちょっと背中が痒いんだ。軽くでいい、叩いてくれないか?」
「え?掻くんじゃなくて?」
「あぁ」
「分かった!」
何も疑わず、ジョーイは言われるがままに俺の背中を叩く。
「あれ?もしかしてキンジ、今『貯蓄』を使っ・・・・た?」
どうやらやっと、ジョーイも気がついたらしい。
「さぁてジョーイ。今俺は、お前の言う通りお前からの攻撃を『貯蓄』した。そして他に、何故かボアからの攻撃も1つ、ストックがある。ここで提案だ。ミーシア、俺を殴れ」
「な、なにを・・・まさか、キンジのスキルでジョセフ様を害するつもりか!?」
「あぁ、そのとおりだよ。この馬鹿は、俺を騙した。その報いは、受けるべきだろう?」
「しかし、それはあの王が悪いのでは・・・」
「確証もなく報奨金が出ると言い切ったコイツも悪い」
(まぁ、言い切っていたわけではなかったかもしれないけど)
「それと私がキンジを殴るのとどういう繋がりが・・・」
「俺のスキルには、『一括返済』というものがある。残念ながらジョーイには、普通の攻撃は効かなくなった。だがコイツ自身が言っていたように、自分の攻撃は効くらしい。そこに『一括返済』で別の攻撃を上乗せした場合、どうなるか試したいんだよ。
俺は優しいからな。流石にボアの攻撃を上乗せしたら可哀想だからと、ミーシアの攻撃で我慢しようとしたんだが・・・
仕方ない、ボアの攻撃にしとくか」
「ミ、ミーシア!ボアの攻撃は不味い!どうかキンジを殴ってくださいっ!!」
「ジ、ジョセフ様がそう仰ることならば・・・分かった。キンジ、いくぞ!」
そう言って殴ってきたミーシアの拳を、俺は『貯蓄』する。
まぁ、ボルケーノにほとんど使っちまったストック、残るボアの攻撃は端から使うつもりなんてないんだけどな。
結果として、ジョーイは見事に吹っ飛んだ。
どうやらジョーイへの攻撃、ジョーイ自身の攻撃を介していればそこに別の攻撃を上乗せしても効くことがわかった。
まぁ、ミーシアも職業のお陰で身体能力はそれなりに上がってるんだ。
ジョーイが吹き飛んだのはご愛嬌。
俺は優しいからな。
今回のことはこれで許してやる。
そんなことより、次回、帝国編。
ここから俺の金儲け伝説を始めてやる!
帝国のお姫様助けて、豚の代わりに俺が帝国から良いように金を絞り出してやる!!
吹き飛んだジョーイを甲斐甲斐しく介護するミーシアを見つめながら、俺はそんな事を考えていた。
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