第42話:突然の来襲

「どちらさん?」

ジョーイのさっきの話からするに、某かの災難がやってきた可能性もあり、俺は警戒しながらノックをしたであろう人物へと扉越しに応えた。


「ちょっと話がしたいんだけど」


女の声だな。

しかもこれは、絶対にかわいいぞ。

俺くらいにると声だけでもわかる。


だからといって、簡単に扉を開けたりなんか・・・


あれ、おかしいな。

条件反射で扉開けちまったぞ俺。

でもまぁ、顔見るくらいなら。


絶対にかわいいであろう声の主のご尊顔を見ようと、開けた扉の先程にいるのは・・・


骸骨。

紛うことなき骸骨。


「チェンジで」


そう言って俺は、そのまま扉を閉じた。


いやびっくりしたわ!

かわいい女がいると思ったら骸骨だぞ!?

叫ばなかった俺を褒めたいわっ!!


「いや、デリヘルじゃないんだから」

その時、部屋の隅からそんな声がした。


さっき扉の外から聞こえてきた声だ。

ってことはあの骸骨か!?


そう思って声のする方に目を向けると、そこには一人の女が立っていた。


先程までは確かにそこに居なかったはずの女。

扇動的とも言える程に惜しみなく露出された褐色の肌。


ほとんど大事なところだけを隠すような胸元。

うん。こりゃFはあるな。


そして、俺の予想通りその顔はかなりかわいいときたもんだ。

頭の角も、いい味を出している。


・・・・・・角?


「あ、あなたはもしや・・・」

女に気が付いたミーシアが、そんな言葉を漏らしている。


うん、慌てふためくようなミーシアもまた良き。


「魔王様・・・」


「はぁ!?」

「なっ!?」

俺とジョーイの声が重なった。


俺はお前なんかよりミーシアと体を重ねたい。


いやそれよりも、魔王だって?


「魔王だって!?」

あ、被った。今度は俺の心の声とジョーイの言葉が被った。


いやだから俺はお前なんかよりもミーシア、いや、なんなら目の前の魔王(仮)に被さりたい。


「いや、争う気とかないから」

ミーシアの魔王発言に、珍しく反応して剣に手をかけたジョーイだったが、いつの間にかジョーイの背後に移動していた魔王(仮)はそう言いながら剣にのびたジョーイの手を掴んでいた。


「いや〜、やっぱそこの魔族ちゃんには分かっちゃう?」

魔王(仮)はそう言いながらため息をついている。


こいついつの間に移動しやがった?

いや、それよりも俺には気になることがあった。


「ミーシア。お前、魔王を見たこと無いんじゃなかったか?」

「いや、今そこどうでもよくない!?」


俺の疑問に、魔王(仮)に手を掴まれたままのジョーイがツッコんで来やがった。


お前になんかツッコまれても嬉しくねぇよ!

どうせなら魔王(仮)に別のモン突っ込みたいわっ!

っていうかお前、今の状況で良くツッコめたな!?

そいつがマジモンの魔王なら、それを倒すはずの勇者として圧倒的に絶望的な状況じゃねぇか!


「魔族には本能的に分かっちゃうんだよねぇ〜。はぁ。だから【魔王】って嫌なのよ」

俺のジョーイへの心の中での叫びを他所に、魔王(仮)はさらなるため息とともにそんなことを言いながらジョーイの腕を離した。


「とりあえず落ち着いてよ【勇者】様?こっちに争う気は無いって言ってるのに、女の子に突然襲いかかろうとするのはダメじゃない」

「あ、あぁ、すまない」


魔王(仮)の言葉に、ジョーイは飲まれたように返していた。


いや、そんなんで大丈夫なのかよ勇者様。


っていうか、この女の発言からするにこいつは本当に魔王なのか?

あ、もしかして四天王が倒されたから勇者を狩りに?


いいじゃねぇか。

やれやれ魔王。

勇者ジョーイなんてぶっ殺せ。


そうしたら俺は自由だ!


『お忘れのようですが、主である勇者ジョーイか寿命以外で死んだ場合、あんたも死ぬからね?』


・・・・・・・・そうだったぁーーーっ!


すっかり忘れてたわ!

いや怖いわ俺の記憶力!


こんな大事なことをまさか忘れるとは思わなかったわ!


っていうか少し前まで、同じようなアナウンスがしつこいくらいに流れてなかったか?

それが最近なかったから忘れちまってたんだな、うん。


って仕事しろよ!謎の声!


『あんたがこっちの親切をうるさい、オフりたいって願ったから黙ってやってたのよ。

それなのに何で私が怒られなきゃいけないのよ・・・

全部あんたのせいよ?

さっさと死になさいよ!』


・・・・・・いや、なんかアナウンス謎の声気安すぎないか?

っていうか、今まで事務的なアナウンスばっかだったくせに急に個性出てきたな。

しかも俺に対して棘しかねぇし。


「で、話進めていいかしら?」


脳内アナウンスにツッコみを入れてた俺は、魔王とやらの言葉で現実に引き戻された。

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