第41話:ジョーイの告白

扉を開けると、そこに居たのはミーシア、とお邪魔虫ジョーイ


ミーシアだけなら歓迎するが。

いや、ミーシアだけでもどうせジョーイに対するクソみたいな想いを聞かされるだけか。


「なんだよ」

面倒くさくて適当に出迎えた俺に、


「ジョセフ様が、我々に話があるそうだ」

ミーシアはそう言ってジョーイと2人、部屋へと入ってきた。


俺はこのあと、今回の件でがっぽり稼いだお金ちゃんに物を言わせてあの店に行くつもりなんだ。

勇者様のお陰で上がったこの身体能力、あれに使わずに何に使う。


四天王最弱なんかを殺す昇天させるより、女をイカ昇天させたい。


さっきの問題を棚上げにした俺の、次なる目標だ。


だからこそ、ジョーイの話とやらはさっさと片付けてしまおう。

うん、そうしよう。


俺は心に決めて、ベッドへと腰を下ろしてジョーイに話を促した。


「2人とも。今日は本当にすまなかった!」

開口一番、ジョーイはそう言って頭を下げた。


「ジョ、ジョセフ様。突然どうされたのですか」

ミーシアが慌てている。


慌てすぎて、谷間がこんにちわだ。

よし、今日は巨乳娘に決めた。


「今日あの男に襲われたのは、僕のせいなんだ」


うん、だろうな。大体起きる問題の発端は、お前だからな。


「しかし、あの村を襲ったのがアルケーノ様、じゃなくてたアルケーノだった。であれば、近くに居たのも、我々に襲ってきたのもジョセフ様のせいとは言えないのでは―――」

「違う!そうじゃないんだ!」


いや叫ぶなよ。

ほら見ろ。せっかくフォローしようとしたミーシアがショック受けてんじゃねぇか。


ミーシア、そんな男辞めて、俺のベッドに来いよ。

そしたらお金ちゃん出ていかずにすむんだし。


「キンジ、僕は前に言ったよね?僕は突然、職業が『勇者』になったって」

「へ?あぁ、言ってたな」


なんだよ、突然こっちに話振るなよ。


「『勇者』になる前の僕の職業、『巻き込まれし者』というんだ」


どんな職業だよ!


「『巻き込まれし者』。あの、『あらゆる災難を一手に引き受ける』と言われる職業が、ジョセフ様の前職なのですか!?」


いやミーシア知ってんのか〜い。

しかも前職て。なんか本当に仕事みたいだな、職業。

ってそこじゃねぇ!!


「じゃぁなにか?その職業で、今回の事件に巻き込まれたってのか?でもお前、もう勇者なんだろ?だったらそれは関係ねぇんじゃねぇの?」


お前が普段色々と巻き込まれるのは、お前自身の不注意のせいだろ。


「・・・僕の職業、正確にはただの『勇者』じゃないんだ。正確には『勇者(巻き込まれし者)』。そう、表記されているんだ」


あぁそれな。それ知ってる。俺の職業もそんな表記だから。

括弧書きされてる職業も、生きてるんだよな。


「ってじゃぁ今回の事件、お前のせいで巻き込まれてんじゃねぇか!!」

「だからそう言っているじゃないか!」

「ふたりとも落ち着いて!」


もう、大パニックです。


「ふざけんなっ!巻き込まるんだったら、お前だけにしとけよっ!」

「キンジ!なんてことを言うんだ!」

ミーシアが俺に厳しい口調で詰め寄る。


あぁ、その表情も良いな。

よし、今日は巨乳のS嬢にしよう。

うん、落ち着いた。


「本当は僕だってそうしたいさ!だけど、僕のスキルがそうしてくれないんだ!」


ん?どゆこと?


「スキル、ですか?」

「そう、スキル。僕には、生まれながらに1つのスキルを持っていた。【巻き込みゴメン】というスキルだ」


「【巻き込みゴメン】・・・あの、『自身に降りかかる災難に、仲間を巻き込む』という伝説の・・・」


ミーシア何でも知ってんな。

俺の歩く辞典決定な。っていうか何その伝説。

ってだからそこじゃねぇ!!


「するってぇとなにかい!?お前のクソ職業のせいで引き寄せた災難を、ご丁寧に俺達までそのクソスキルで巻き込んだってのか!?

今までの問題も、全部お前のせいってことなのけい!?」

もう俺もわけわかんなくて口調も混乱してんぞこら!!!


「あぁ、そうだ。だからこそ2人には、申し訳無いと思っている。しかも―――」


まだ続きがあるってかい。


「今日は僕の誕生日。これまで、誕生日には普段よりも酷い災難が降り掛かってきたんだ。だからこそ、四天王なんてとんでもない相手に出会うことになった」

「はぁ!?お前、それが分かってて、なんで今回の依頼を受けやがった!?」


「申し訳ないと思っている。だけど、苦しめられている人達のために、何かしてあげたいと、思うのが普通だろ!!」

「ジョセフ様・・・」


てめぇなに逆ギレしてんだよ!

そしてミーシア、しれっと惚れ惚れしたような目でジョーイ見てんじゃねぇよ!

分かってんのか!?

こいつのせいでこっちは大変な目に合ったんだぞ!?


「悪い。声を荒らげたいのは君達のほうなのに・・・」

「ジョセフ様・・・」


いやなにこの空気。

もう感情が色んな方向に飛び回ってるんすけど。


「2人とも、まだこの話には続きがあるんだ」

いやまだあんのい。


っていうかジョーイも大概感情ブレブレだな。


「まだ日は跨いでいない。つまりまだ、僕の誕生日の最中なんだ。だから、いつどこから災難が降り掛かってくるか分からない」


「それ分かってんだったらこっちに来ずに一人で森の中にでも籠もってろよ!

なんでわざわざこっちを巻き込もうとするんだよ!

スキルなんて関係ねぇよ!

全部お前自身のポンコツさが招いてんじゃねぇか!!」


「僕を、職業やスキルでなく、僕自身として見てくれるのか、キンジ。ありがとう、本当にありがとう・・・」

「キンジ・・・」


ん?

なんかおかしな方向にいってない?

そういう意味で言ったんじゃなくてですね?

いやでも、ミーシアが俺にも熱い眼差しを送ってるからいいか。


「コンコン」

なんかもう全てが面倒になった俺が現実から逃避しようとしていると、ジョーイの言う災難とやらのノックの音が俺の耳に届いた。

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