第9話:文無しの男達
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名前:キンジ
職業:勇者の奴隷
スキル:貯蓄 Lv.2
貯蓄
お金 無制限
物理攻撃 4発
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あと2件、貯蓄を設定できます
派生スキル
返済
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なるほど、そういうことか。
ステータス画面に集中すると、俺の頭の中にこの【貯蓄】スキルについての情報が流れてきた。
どうやらこのスキル、レベル✕2の数だけの種類、貯蓄できるらしい。
そしてそれと同数単位分、貯蓄できるってわけだ。
今はレベル2だから、4種類、そして物理攻撃は4発まで貯蓄が可能ってこったな。
なんで金だけが無制限なのかは、どれだけ念じても答えは出なかった。
まぁあれだ。きっと俺のお金ちゃんに対する愛ゆえに、ってやつだな。
【返済】も、やはり元の持ち主にしか返せないらしい。
今まで貯蓄してた攻撃は、俺が受ける前に【貯蓄】していたから、元の持ち主は相手のままって
まぁ、この辺は使い方次第なんだろうが、複数相手にするときついな。
まぁ、あんなイノシシ連中と戦わなけりゃいいだけの話だ。
俺は安全に金が稼ぎたいんでな。
無理せず、安全安心に金儲け。
これが転生したニュー俺の、ニューモットーだ。
と、それはいい。
とりあえず、今知りたい情報はだいたい分かったな。
【貯蓄】にはまだ2種類空きがあるが、その辺はもう少し考えるとするか。
俺はそう決めて、立ち上がりジョセフたちの元へと歩いて行った。
こいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだよ。
めちゃくちゃ談笑しているジョセフと男を見てそう思いながら、2人に声をかけた。
「おい、そろそろ休憩は終わりにして、王都に案内してくれ」
「いや、僕らはキンジを待っていたんだけどね!」
ジョセフが非難めいた目で俺を見ながら立ち上がった。
なんだよ、まだ助けた男に礼を要求したこと怒ってんのか?
小せえ勇者様だな。
「キンジ、声漏れてるからね!?しっかりと僕に聞こえてるからね!?わざと?わざとなの!?」
「あーうるせぇ。ところであんた。王都はもう近いのか?」
「え、えぇ、まぁ・・・」
男はバツの悪そうな顔でそう答えた。
「キンジ、そのことでちょっと問題が・・・」
男に代わるように進み出たジョセフに、俺は次の言葉を促すように視線を向けた。
「泊まるアテがない、だと?」
ジョセフの話を聞いた俺の口から、そんな言葉が漏れた。
「いや、お前勇者なんだろ?王様ってのが泊めてくれるんじゃねーのかよ?」
「それが、無理みたいなんだ。僕が勇者だってことは、さっきアランさんに言ったんだけど、誰であろうと日が落ちてからは、城に入れてもらえないらしいんだ」
お役所か!
いや、最近は夜でも対応してくれる役所はあるんだ。
お役所よりタチ悪いじゃねーか。
っていうか、このおっさんアランっていうのな。
まぁ、どうせ金もらったら会うこともないだろうし、覚える気はないけどな。
「でも、王都っていうくらいだから、泊まるところくらいどうにでもなるだろ」
「そ、そこが1番の問題でして・・・」
申し訳なさそうに、おっさんが項垂れるのを庇うように、またしてもジョセフが前に出る。
いやお前、前出すぎだからな?
「僕らには、宿に泊まれるだけのお金がない!」
ジョセフは胸を張って、言った。
ムカつく。なんかムショーにムカつく。
「キンジは、お金持ってるかい?」
しかもたかってきやがったよ。
「ねーな」
俺は、ジョセフにそう答えた。
実際、転生してそんなに経っていない俺に、金なんてあるわけねーし。
「はぁ。あのボアさえ持ち帰ることができるなら、どうにかなるのでしょうが・・・・」
おっさんが、そう呟きながらボアの死体に目を向けた。
「どういうことだ?」
俺の視線を受けたおっさんは、乾いた笑いを返してきた。
「ボアは、肉も毛皮もそれなりの額で売ることができるんです。しかし、1体でも我々3人では持ち運ぶのは不可能かと・・・」
なるほど。要はボアの素材を売れば金になるけど、持って行くことができない、と。
まぁ確かにあいつら、1体でもかなりのサイズだからな。
となると方法は・・・
「なぁジョセフ。この世界に、物を無制限に入れることのできる袋とかあるのか?」
「ん、アイテムボックスのことかい?そりゃぁ、あるという噂は聞いたことあるけど・・・あんな高価なもの、僕は持っていないよ?」
そう言ってジョセフは、隣の男に目を向けた。
「わ、私だってもってないですよ!」
あぁ。持ってるなんてはなから期待しちゃいねーよ。
とりあえず、そういうもんがあるならどうにかなるだろ。
俺はそう1人で考えながら、ボアの死体へと近づいた。
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