第10話:転生して初めてのお金ちゃん
「まいど、ありがとうごさいました〜」
店の親父が、そう言いながらジャラジャラ鳴る何かが詰まった小袋を差し出してきた。
礼を言ってそれを受け取った俺に、
「いや〜、キンジのお陰で助かったよ!それにしてもキンジ、アイテムボックスなんて凄いもの、よく持ってたねぇ!僕にも見せてよ!」
隣のジョセフが目を輝かせてそう言ってきた。
「だから言ってんだろうが。見せたくても見せられるもんじゃねえって」
俺はジョセフにそう言いながら、ステータスを開いた。
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名前:キンジ
職業:勇者の奴隷
スキル:貯蓄 Lv.2
貯蓄
お金 無制限
物理攻撃 4発
無生物 4トン
ーーーーーーー ーー
あと1件、貯蓄を設定できます
派生スキル
返済
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俺はスキル【貯蓄】の空き枠の1つを無生物に設定し、ボア3体を貯蓄してなんとか王都に辿り着き、今まさに売って金を手に入れたのだ。
生き物も【貯蓄】できれば更に便利だと言うことは、
どうやらこの【貯蓄】、なにやら制限があるらしい。
『生物を含めた物質』の全てを【貯蓄】に設定しようとすると、単位がkgにしかできないようだった。
お金ちゃんは最初から無制限のくせにな。
対して『無生物』にすると、単位がトンでいけたんだ。
そりゃ、『無生物』にするだろ。
ちなみに重さの単位、この世界では別にあるみたいだが、【貯蓄】に関しては俺の分かる単位で設定が可能らしい。
融通がきくのかきかねーのか、どっちだよ【貯蓄】よ。
あぁ、あとジョセフには、説明が面倒だからステータス画面に『何故か』内蔵されていたアイテムボックスを持っていた、って説明した。
アイテムボックス自体がかなり珍しい物らしく、ジョセフや助けたおっさんも特に気にすることもなく信用していた。
そんなことより今は金だ。転生して初めてのお金ちゃんだ。
この袋には、銀貨30枚が入っている。
王都から換金所までの道すがら店を覗いてみたが、どうやらこっちでの金はだいたい銅貨1枚が1円くらいらしい。
銅貨1000枚で銀貨1枚。
銀貨1000枚で金貨1枚。
金貨1000枚で大金貨1枚なんだとさ。
ってことは、ボア1体あたりだいたい1万円ってことか。
俺は、この世界で初めてのお金ちゃんを、【貯蓄】してみた。
小袋ごと俺の手から消えたお金ちゃんにジョセフ達が驚いて入る中、俺は再びステータスを確認した。
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名前:キンジ
職業:勇者の奴隷
スキル:貯蓄 Lv.2
貯蓄
お金 無制限(銀貨30枚)
物理攻撃 4発
無生物 4トン(小袋 10グラム)
ーーーーーーー ーー
あと1件、貯蓄を設定できます
派生スキル
返済
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なるほどな。どうやら【貯蓄】したものは、ステータスに出すことができるみたいだな。
というか、同じ情報が頭の中に勝手に入ってきやがる。
こりゃ便利なことで。
ってことは、ボア達の攻撃を【貯蓄】した時も、似たような情報が頭には入ってたってわけか。
まぁあんときは、必死だったからあんまり覚えてないけどな。
とりあえず、ステータスに貯蓄したものが出てるのは見にくいから、こっちには表示しなくてもよさそうだな。
いや、そんなことはどうでもいい。
それよりも大事なのは、お金ちゃんだ。
【貯蓄】を使えば、いくら貯めたかすぐ分かるな。
もはや俺は、歩くATMだな。
いや、なんかそれは違うな。まぁいい。
いや〜、異世界でも、お金ちゃんが貯まるのはテンション上がるわぁ〜〜!
「キンジ、どうしたんだい?気持ち悪い顔して」
俺が至福のひとときに酔いしれていると、
「それよりも、宿はどうするんだ?」
俺はバカを無視して、おっさんに目を向けた。
「はい。いつも私が使っている宿がこの近くにあります。あの、そこで相談なのですが・・・・」
「・・・・宿代、だろ?」
「はい。今私には手持ちがなくて、その・・・」
「いいさ。貸してやるよ。ただし、助けた礼と一緒に返せよ?少しは色つけてな」
「はい、それはもちろん!」
「だからそんなに、人にお礼を求めちゃダメだって!」
またしてもバカが、入り込んできた。
「そうか。それだけ言うんだったら、お前の宿代は出さない」
「そんな殺生な!?わ、わかった!今回は見逃してあげるから!」
「隨分偉そうじゃないか?」
「ぐっ・・・・キ、キンジ様、どうか僕の宿代も出してください」
「ふん。いいだろう。後でちゃんと返せよ?」
「っていうか、よく考えたら僕がアランさんを助けなければ、そのお金も手に入らなかったよね!?」
「だが、ボアを倒したのは俺だ。だったら、この金は全て俺のもんだろう?」
「うっ・・・・」
こうして俺は、
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