第54話:都に到着したけれど

ゴブ子との話を一旦終えて馬車を降りると、護衛の2人が俺の方に駆け寄ってくる。

『姫になにかしなかっただろうな!?』とか言われんのかなー。

ダリ〜。

何もしねえっての。


「お、おいキミ!」

ほら来たよ。


「その、なんだ。馬車にいる姫君は、その・・・可愛かったのか?」

「は?」

え、なんて?


「いやだから!キミが今会った人物は、可愛かったのかときいているんだ!」

もう1人の護衛も、全力で聞いてくる。


聞き間違いではなかったのか。


「えっと・・・あんたら、護衛なのに見てねぇのか?」

「いや、その、なんだ。王子様の御縁談のお相手だから、見るのもまずいかと思ってな。

それに姫君も、一度も馬車から出てこなかったし、会話は馬車越しでしてくるからさ」


「いや、それ俺が会ってよかったのかよ」

「あぁ、別に姫君のお顔を見ることを禁じられているわけではない。ただ我々が、気を使っていただけだからな。

それで、どうなんだ?可愛かったのか!?」


「そんなに気になるなら見ればいいじゃねぇかよ」

「「いやいやいやいやいや!とんでもございません!」」


なんで敬語なんだよ。


「んー。まぁ、見てのお楽しみ、じゃね?」

そう言って俺は、ニヤリと笑う。


「「おぉ、それほどなのかっ!!」」

なにやら護衛の2人は勘違いしているようだが。


可哀想にな。

まさかゴブリンだとは思ってないだろうな。

っていうか、魔族っての分かってんだろうな?


「っていうかあんたら、馬車の中の姫君ってのが何者か、知ってんのか?」

「何者って・・・魔族のさる部族の姫君だと聞いている。

魔王殿が、『めっちゃ可愛いから期待しててっ!』と仰っていた、と」


魔王殿って。

魔王相手に敬称て。

これもう、国全体が魔族と繋がってんじゃねぇかよ。


っていうか魔王よ。

あんた変にゴブ子を持ち上げ過ぎだろ。

お陰で確実に大惨事じゃねぇか。


(えぇ〜、なんでよ!?ゴブ子ちゃん、めっちゃ可愛いじゃん!)

いやだから、勝手に入ってくんなよ魔王!

ってか、俺の心の声を普通に聞いてんじゃねぇよ!


(ケチ〜。じゃぁ、仕方ないからしばらくはあんたとのチャンネルは閉じとくわー)


ったく。なんなんだよあの魔王。

っていうかあれだな。

魔王の『可愛い』って、まさに女子のそれとおんなじだな。


前の世界でも、女子の『可愛い』は信用すべからずってのは常識だったからな。

あれで何度痛い目を見たことか。


ってまぁそれはいいか。

どうせお見合いは無しになるんだし。

でもこれ、俺やべぇんじゃねぇのか?


王子の縁談破綻の原因が俺って。

最悪、捕まったりするんじゃね?

まぁ、さすがにゴブ子も余計なことは言わねぇか。


今はそれよりも大事なことがある。


「それよりあんたら、礼がまだだぞ」

そう、礼だ。助けたら礼をくれると、こいつらは言ってたからな。


「おぉ、そうであったな。すまないが、このまま都まで一緒に来てくれないか?

礼は、国からしっかりと出すようにするからさ」

おぉ。まさかの国からの礼だった。


こりゃ、かなりの額が貰えるんじゃね?


「まぁ、俺らも都に行くつもりだったし、別にいいぞ。

俺は一旦連れのところに戻るから、先導してくれ。

いざとなったら、また助けてやるからよ」


「わかった!」


こうして俺達は、ゴブ子&護衛達とともに、都へと向かうことになった。



そして1時間後。

俺達は都に入るための門へと到着した。


「すまないが、我々はこのまま城へ向かわなければならない。

君たちは1度、検問でチェックを受けてから城へ来てくれないか。

城の門番には、伝えておく。

君の名前は?」

「キンジだ。連れはジョーイとミーシア。

ちなみにだが、ミーシアは魔族だ。検問ってのは通れるのか?」


「魔族か。問題はない。というかキンジは、方角的にゼニモーケ王国から来たと思っていたが・・・」

「ん?そうだけど?それがどうしたんだ?」


「あぁ、いや。その・・・お連れさんの魔族は、奴隷かなにかなのか?」

「いや、そんなんじゃねぇよ。普通に、一緒に旅してるだけだ」


「そうか」

護衛はどこかほっとしたように、笑う。


「とにかく、検問を通ったら城に来てくれよな!俺達は先に行くよ!」

護衛達はそう言って、馬車共々検問をスルーして都へと入っていった。



「次っ!」

検問に並んでいた俺たちが呼ばれると、そこにはあの水晶を持つ兵隊らしきやつがいた。


あの水晶でわかんねぇか?

あれだよ。職業調べるやつ。


はぁ。面倒くせぇなぁ。

またあれが始まるのか。


「お前っ!!奴隷なのか!?」

ほらきたよ。

奴隷見下し。


もう、いい加減キレてもいいかな?

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