第28話:新たなる貯蓄

『スキル【貯蓄】に、怪我、単位は1回、で登録しました』


これでいくら怪我しようとも、全部お前らに【返済】できるぞ。


「いやまぁ、出来れば怪我なんてしたくはないんだけどなっ!」


俺は叫びながら、キングレッドベアへと目を向けた。


今【貯蓄】には、ボア2体分の攻撃が入っている。


これをまとめて【返済】すれば!


そしてそのまま、俺はキングレッドベアに向けて、掌を向けた。


【返済】っ!!


俺はボア2体分の攻撃を、そのままキングレッドベアに向けて放った。


あんなでかいクマ、直接殴るの怖いからな。

でもこれならあいつも・・・


「グォッ!!」


【返済】を受けたキングレッドベアは声を漏らし、その場に倒れ込―――


まねぇ!!大して効いてねぇじゃねぇかよ!


ボア!もちっとしっかり攻撃してこんかいっ!!


「がっ」

俺がボアにツッコんでいる隙に、キングレッドベアが俺に向かって突進し、俺はそれをまともに正面から受けて再び吹き飛んだ。


吹き飛ばされながらその怪我を【貯蓄】した俺は、空中でそのままそれをキングレッドベアに【返済】する。


「グモッ」

キングレッドベアはその場で仰け反り、背中から倒れ込んだ。


ちっ。まだ生きていやがるな。


ヨロヨロと起き上がるキングレッドベアに舌打ちをしていると、主が倒れたことにいかりだしたボア達が一斉に襲いかかってきた。


クソ、4体同時はきついぞ。


『勇者ジョセフのレベルが上がりました。

隠し職業【勇者の従者】の効果で、ステータスが向上しました』


突然のその声と同時に、俺の体が少しだけ軽くなった。


俺は襲いかかるボア2体の攻撃を【貯蓄】しながら、残り2体の攻撃を飛び上がって避けた。


「【返済】っ!」


そのまま空中から、2体に向けて攻撃を【返済】した俺は、着地と同時に再び突進してきたボアの攻撃を両手で【貯蓄】し、そのまま【返済】した。


2体のボアは、そのまま吹き飛んでいった。


俺は地面にめり込んだ2体のボアへと着地し、キンジレッドベアに目を向けた。


ちっ。もう回復しやがったか。

まぁ、後はお前だけなんだけどな。


それにしても、今のはなんだ?

ジョーイのレベルが上がったとか聞こえたが。


まぁ今は目の前の事キングレッドベアに集中するか。


一対一タイマンなら、お前の攻撃なんか怖かねぇんだよっ!!


俺は向かってくるキングレッドベアに身構え、【貯蓄】を発動してその攻撃を貯めていった。


4、マックスまで貯めて、一括【返済】してやる、5、から覚悟しろよっと6。


限界までキングレッドベアの攻撃を【貯蓄】した俺がその場を離れようとした瞬間、キングレッドベアの爪が俺の腹を引き裂いた。


ちっ。離れようとした直後だったから大怪我は免れたが、今のはヤバかったぞ。


今後は1つくらい、空きを作っておくか。


俺はキングレッドベアの爪で裂かれた傷を【貯蓄】し、掌を奴に向けた。


今の傷と、これまでの攻撃、一括で【返済】させてもらうぞ!


【返済】っ!!


「っ・・・・・・・」


俺のスキル発動と同時に、キングレッドベアの腹が裂けた。


その傷は俺の受けた物とは違っていた。


10センチ程だったはずのその傷は、3メートルはあるキングレッドベアの胴体を、見事に両断していた。


そのままキングレッドベアは、声も漏らさず沈黙した。


や、やっと終わった・・・・


俺はその場にへたり込み、辺りを見回した。


・・・・・いや、ボアの回収、めちゃくちゃ面倒くさいんですけど。


誰だよ。こんなに四方に吹き飛ばしたの。


俺だよ。

まぁ、お金ちゃんのためだ。

喜んで回収させて頂きますよ!!


それと・・・

おそらくこの死闘のお膳立てをしたであろうクソ勇者ジョーイは、帰ってたっぷり締め上げよう。


俺はそう誓って、キングレッドベア達との死闘で疲れ果てた体に鞭打って立ち上がり、キングレッドベア達の死体の貯蓄回収を始めた。


あー。

怪我は【貯蓄】できても、疲れは取れねぇな。

次は、『疲労』でも設定するか?

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