第29話:依頼達成と卒業

「やぁキンジ!そっちも依頼は済んだのかい?聞いてくれよ!僕もついにレベルが上がっぶるぅあぁっ!!」


ギルドに到着した俺を見かけるやいなやそう言って駆け寄るジョーイを、俺は思いっきり殴り飛ばした。


「痛いっ!痛いよキンジ!」

「キンジ!突然何をする!ジョセフ様、大丈夫ですか!?」

頭を押さえるジョーイと、それに駆け寄ったミーシアが非難の目を俺に向けてきた。


「おいジョーイ!お前、これに見覚えはないか!?」

俺はそう言いながら、ジョーイの剣を突きつけた。


「あっ!それは僕の剣!キンジが見つけてくれたのかい!?」

「おおっ!いくら探しても見つからなかったというのに・・・さすがはキンジだ!」

ジョーイとミーシアは、態度を一変させて尊敬の眼差しを向けてきた。


こいつら・・・

なんていうか、2人とも同じ属性ポンコツか?


いや、ジョーイはわかっていたが。

ミーシア。お前最初会った時はもっとしっかりしてるイメージだったぞ?


いや、それは今はいい。


「こっちはなぁ、お前のせいで死ぬとこだったんだぞ!?」

俺は、ポンコツ2人にこれまでの経緯を手短に話した。



「凄いっ!キンジ、あのキングレッドベアを1人で倒したのかい!?」

「なんと!王都の森の主と言われるあのキングレッドベアを!」

話を聞いたジョーイたミーシアは、興奮したように俺を見つめていた。


が、そこじゃない。


俺はそんなことに食いついてほしくて話したんじゃない。

ジョーイのせいで、俺が死にそうになったと、そうはっきりと説明したはずだ。


こいつらはあれか?

都合の良い事だけ聞く耳でも持ってんのか?


とはいえ、美人ミーシアから尊敬の眼差しを向けられた俺は、


「ま、まぁな」


そう返事をすることしかできなかった。


俺のバカ!


ちなみにキングレッドベアの討伐は、倒したあとでも受注が可能だったからきっちり依頼料はゲットした。


ボアの狩猟と含めるとしめて銀貨400枚。

ボアの狩猟は1回分しか貰えなかったが、残りの5体はそのまま素材を売り捌いた。



「「「カンパーイ!!」」」


その後俺達は宿屋の食堂で、ささやかながら初依頼達成の打ち上げをすることになった。


もちろん、おれのおごり。

などではない。


自分の分は自分で出すシステムだ。


ちなみにジョーイもミーシアも、俺への借金の一部と今日の飯代、そして今日の宿代でスッカラカンになるようだ。


だからといって、借金の返済を待つわけはないけどな。


いくら親しい間柄でも、借金は借金だ。


まぁ、別にあの2人は友達でもなんでもないけどな。


俺は一応打ち上げの参加は了承したが、ぶっちゃけさっさと終わって欲しい。


なんでかって?


やっとお金ちゃんが貯まってきたんだぞ?


そうなったら、別の溜まってるもの発散させなきゃいけないだろ?


宿屋の主人、モージャの話では、アレの代金は最低でも銀貨50枚。


今の俺なら、余裕で払える金額だ。


死ぬ前の俺なら、ここでも敢えて我慢しただろう。

しかし、ニュー俺はそんなことはしない。


じっくりとお金ちゃんを貯めつつ、使うべき時はしっかりと使う。


そして今は、その使うべき時だ。


俺は食うだけ食って、さっさと2人に別れを告げた。


「キンジ、もう行くのかい?」

ジョーイは酒を飲んで赤い顔になりながら、俺に絡んできた。


俺は肩に回された手を振りほどきながら、

「今日は色々と疲れたからな。先に行って休んでるよ」

そうジョーイへと返した。


「私が、マッサージでもしようか?」

「うぐっ・・・」

そう言って俺を見つめるミーシアの瞳に、一瞬決心が揺らぎそうになった。


が。

絶対にマッサージだけなのは明白なので、


「いや、だ、大丈夫だ」

俺はそれをキッパリと断った。


もはやミーシアとのフラグが立つ可能性が少ない以上、わざわざこのイベントをこなす理由がない。


はっきりいって、面倒だ。


俺は2人に別れを告げて、事前にモージャから聞いていた路地裏へと入り、お目当ての店へと入っていった。




いや、細かい描写はしないぞ?


ただ、これだけは言っておく。


今日の猫耳の獣人、中々な仕事ぶりだったぞ?

特にあのザラザラした舌。

あれはなかなか良いもんだ。


こうして俺は、初めての依頼料で異世界童貞から見事に卒業した。

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